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「車内での携帯電話での通話は他のお客様のご迷惑になるのでご遠慮ください」。こうしたアナウンスや注意喚起は、電車に乗っていれば当たり前のように耳にする。電車の中で通話が始まると、「おいおい」「降りてから電話し直して」という声が周りから漏れることも。

ただ、車内で大きな声で話されるのと、携帯電話の通話では、実は前者の方が迷惑だと感じる人は少なくないのではないか。日本民営鉄道協会のアンケート結果によれば、迷惑行為項目の総合1位は「騒々しい会話・はしゃぎまわり等」で33.2%だった一方、「携帯電話・スマホの着信音や通話」は18.5%の総合7位だった。(2017年10月1日〜11月30日、2419人が回答)

携帯電話での通話がマナー違反だという認識はそれなりに広く共有されているにしても、あくまでもマナー違反にとどまり、「強制的にやめさせることはできない」(ある大手私鉄)のが実態だ。法律上、携帯電話での通話をやめてもらう措置を講じる余地はないのか。前島憲司弁護士に聞いた。

●強制的にやめさせることはできない

ーー電車内での携帯電話の通話をやめさせることはできないのでしょうか

「鉄道会社は、乗客に対して携帯電話で通話をしないよう呼び掛けておりますが、あくまでも『通話をご遠慮ください』とのお願いのレベルであり、原則として強制的に通話をやめさせるところまではできません」

ーーやめることを義務づけることもできませんか

「法的義務と言えるまで高めるには、国土交通省が告示する『標準鉄道利用運送約款』の改定が必要となり、鉄道会社が独断で義務化することはできません。現行の約款や法律のレベルでは、通話をしただけで、通話を強制的にやめさせる規定はありません」

●反抗の仕方により罪になったり、退去させられたりすることも

ーー注意した車掌に反抗した場合はいかがですか

「車掌が通話をやめるようにお願いしたことに対して車掌に暴力をふるうことは威力業務妨害罪になります。また、暴力までいかなくとも大きな声で悪態をついたり暴れたりした場合は鉄道営業法42条により車内から退去させることができますし、駅やその他鉄道敷地内から退去させることもできます。

さらに、列車の運行をとめたりして損害が発生した場合は損害賠償請求が発生します。いずれにしても現行の制度では通話をやめさせる措置を講じるのは難しく、それぞれのマナー意識に頼らざるを得ないのが実態と言えるでしょう」

(弁護士ドットコムニュース)



【取材協力弁護士】
前島 憲司(まえじま・けんじ)弁護士
神奈川県弁護士会所属・横浜家庭裁判所・家事調停委員。弁護士になる前に裁判所書記官として10年以上勤務した経験がある。商工会議所の役員やロータリークラブに所属するなどして地域経済に貢献する活動も行っている。鉄道模型や鉄道に乗る「乗り鉄」など鉄道趣味のほか、日本史や神社の歴史をたどるのも好き。
事務所名:弁護士法人前島綜合法律事務所
事務所URL:http://www.law-maeken.jp