西武にはこの上なく大きな「補強」 兼任コーチで古巣復帰、松井稼の挑戦
日本球界を代表するスーパースターが15年ぶりに帰還
かつて日本球界を代表するスーパースターとして所沢を沸かせた男が、15年ぶりに帰ってくる。今季限りで楽天を退団した松井稼頭央外野手が、埼玉西武に復帰した。1994年から2003年まで10年間にわたって在籍し、走・攻・守の全てが揃った名遊撃手として圧倒的な活躍を見せた松井稼の帰還は、若い選手が多い現在の埼玉西武にとって、この上なく大きな「補強」となるかもしれない。
名門・PL学園で投手として活躍した松井稼は、野手として1993年のドラフト3位で西武に入団する。類い稀な野球センスに加え、プロ入り後にそれまで未経験だった遊撃守備と両打ちをものにする不断の努力が実り、2年目には早くも1軍に定着。田辺徳雄氏や奈良原浩氏といった名手たちとのポジション争いを制して正遊撃手の座をつかむと、そのまま球界を代表するプレーヤーへの階段を一気に駆け上がっていった。
1996年から8年連続で全試合に出場し、1997年から3年連続で盗塁王に輝く。同年からは7年連続でシーズン150安打以上を記録、最多安打も2度獲得。1998年にはリーグMVPを受賞し、2002年には36本塁打、33盗塁、打率.332で、スイッチヒッターとしては史上初となるトリプルスリーを達成する。ベストナイン7回、ゴールデングラブ賞4回。走攻守における輝かしい記録は枚挙に暇がなく、人目を惹く容貌と華のあるプレーでもファンを魅了しつつ、球団の枠を越えたスーパースターとして長く活躍を続けた。
2004年に渡米してからは相次ぐ怪我に悩まされ、二塁手への転向も余儀なくされる。だが、2007年には104試合で118安打、32盗塁、打率.288という好成績を残し、ロッキーズのワールドシリーズ進出に大きく貢献した。MLBでの7年間で通算615安打、32本塁打、102盗塁をマークし、世界最高峰の舞台でも確かな足跡を残している。
上昇気流に乗る西武にとって大きな力に
2011年から日本に復帰し、楽天に入団。レギュラーの座をつかむと、年齢を感じさせない質の高いプレーを随所で披露した。豊富な経験をチームに還元して若手の手本となり、2013年にはキャプテンとしてチームを創設以来初となる日本一に導く。2014年の終盤に外野手へ転向してからも、精神的支柱としてチームを支えてきた。
ただ、ここ2年は若手の台頭によって出場機会が減少し、今季は44試合の出場にとどまる。そしてこのオフ、楽天は年齢のこともあってコーチ就任を打診。だが松井稼は現役続行を希望して退団を決断するに至り、そこに埼玉西武が名乗りを上げる。こうして選手兼テクニカルコーチという肩書きで、15年ぶりとなる古巣復帰が決まった。
卓越した身体能力と技術を武器に一時代を築き上げ、ベテランとなってからも国内外で様々な経験を積んできた松井稼。伸び盛りの若手たちの奮闘もあって4年ぶりとなるAクラス入りを果たし、今まさに上昇気流に乗りつつある埼玉西武にとっては、その経験とーダーシップが大きな力となるはずだ。
これまで4度の日本シリーズを経験している松井稼だが、楽天時代の優勝が自身唯一の「日本一」。西武時代に進出した3度の大舞台ではいずれも苦杯を嘗めており、皮肉にも松井稼が埼玉の地を離れてから、チームは2度の日本一に輝いている。自身初となる「埼玉西武での優勝」に向けて。42歳となった松井稼の、新たな挑戦が始まる。(「パ・リーグ インサイト」望月遼太)
(記事提供:パ・リーグ インサイト)