10日の国際親善試合でブラジルと対戦するサッカー日本代表。「王国」との一戦は、来年夏のワールドカップ(W杯)に向けた試金石となる。

そのW杯への出場権を手に入れた8月31日の最終予選オーストラリア戦で、勝利を決定付ける追加点を挙げて一躍ヒーローとなったのが、ガンバ大阪に所属する井手口陽介だ。

9日放送、テレビ朝日「報道ステーション」では、少年のころから才能を評価されながら、一時はくさっていた井手口が、再び心を入れ替えたあるエピソードを伝えた。

息子のサッカーの才能を信じていた母・亜紀子さんは、井手口の中学進学と同時に福岡から大阪に移り住むことを決断。「挑戦してもらいたかった」という思いから、インターネットで調べたガンバのユース入団テストを受けさせた。合格通知は今でも大事に取ってあるという。

大阪で新たな挑戦に向かった井手口は、遠征費などを工面するために週に6日働く母の想いに応えようと努力。クラブユースのオールスターでMVPに選ばれるなど、将来を嘱望される選手へと成長していく。

だが、思春期を迎えると、練習をサボり、学校にも遅刻。家でもドアを叩いて穴をあけるなど、周囲の期待とは裏腹な態度を取るようになった。本人は当時を「何を言われるにしてもうざかった」「言うことを聞きたくなかった」と振り返る。

ついには、高校時代にサッカーをやめることも考えるようになったという井手口。ところがそのころ、亜紀子さんから生死にかかわる病気が見つかり、手術を受けると打ち明けられたのだ。

「お母さんがいなくなるんじゃないか」と不安を覚える井手口。「心配をかけたから病気になった」と思っている息子に、亜紀子さんは「私も病気に向かって頑張って治療していくから、陽介も自分がやらないといけないこととか必死で前向きにやりなさい」と言葉をかけた。

その𠮟咤激励に、井手口は「心を入れ替えて頑張ろうという気持ちになった」。「ブレずにサッカーを頑張ろうと思えたので今がある」と、母の病気は自分が変わるきっかけになったと明かした。

エピソードを受け、解説者の中山雅史氏は「今の井手口選手からは想像できない過去」とコメント。井手口が代表最年少ながら落ち着いているのは、そういった経験によるのではないかと推測した。