『ユアタイム』のモーリー・ロバートソン 凄まじい神童伝説を紹介
フジテレビの深夜の報道番組『ユアタイム』が、今秋で終了することが明らかになった。当初、「ショーンK」こと、ショーン・マクアードル川上がキャスターを務めるはずだったが、経歴詐称騒動により、ショーンKは降板。代わりにキャスターに抜擢されたのが、ミュージシャン兼ジャーナリストのモーリー・ロバートソンだ。手続き上はショーンKの“代役”だったロバートソンだが、その経歴は「素晴らしい」の一語に尽きる。『神童は大人になってどうなったのか』(小林哲夫・著 太田出版)では、ロバートソンの神童ぶりを紹介している。
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ロバートソンの学歴というか、大学合格歴はかなりすごい。1981年、東京大学理科I類、ハーバード大、マサチューセッツ工科大、スタンフォード大、イェール大、カリフォルニア州バークレー校、プリンストン大に合格している。受験秀才である。東大に入学後、ハーバード大に入り直している。
東大合格は帰国生枠ではない。日本人受験生と同じ条件で受けている。出身校は富山県立高岡高校である。生まれはアメリカ、その後、高校卒業までアメリカ、日本を行き来している。アメリカでは図画の授業中、黒人に自分の絵を引き裂かれ、華僑の生徒から「南京大虐殺の血を引く日本人」と蔑まれる経験を持っている。広島の修道中学、修道高校、そして高岡高校に通っているが、この間、アメリカの学校に通っているので、中高6年間を日本で過ごしていたわけではない。
1984年、ロバートソンは自伝『よくひとりぼっちだった』(文藝春秋)をまとめている。わずか21歳で自伝のオファーが来るほど、彼の人生はユニークで波乱に満ちていたといえる。ロバートソンは修道中学にトップの成績で合格した。アメリカでは飛び級で学年を越えている。学業成績はかなり優秀で、どんな環境でも適応している。神童に国境はない。
彼は1991年からラジオ番組のパーソナリティをつとめている。四半世紀の政治、経済、社会の動きをマクロでもミクロでも語れる貴重なバイリンガルである。もっとも、しゃべり方は日本人そのものだ。早口だが論理的に話す。とてもわかりやすい。
2016年、オバマ大統領が広島訪問した際、オバマの一言一句をていねいに翻訳し説明するなかで、広島で幼少時代を過ごしたこともあって、ときには涙声になったのが印象的だった。また、トランプが大統領に就任したときも、冷静に日米関係をわかりやすく解きほぐしていた。
日米バイリンガル神童として、もっとも能力が高く、成功したケースである。多くの視聴者が、日米が抱えるさまざまな問題をすこしでも理解できるようになったという意味で、ロバートソンの功績は大きい。日米のバックボーンを持つ神童が、社会に役立つ仕事を続けてきた。これは高く評価すべきであろう。
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スタート時(スタート前?)のつまづきが影響したのか、鳴り物入りで始まった『ユアタイム』は1年半で幕を閉じる予定だが、これはロバートソンの経歴に傷をつけるものではない。2つのバックボーンを持つ貴重な人材の活躍を、今後も期待したいものだ。(文中敬称略)
◆『神童は大人になってどうなったのか』(小林哲夫・著 太田出版)