高級スーパーとして人気の「成城石井」。近年は駅ナカへの出店も加速し、売り上げは順調に推移しているようです。今回の無料メルマガ『店舗経営者の繁盛店講座|小売業・飲食店・サービス業』では著者で店舗経営コンサルタントの佐藤昌司さんが、同社が業績好調な理由について探るとともに、親会社であるローソンとの今後考えられるコラボレーション法などについても考察しています。

成城石井の業績が好調な理由

高級スーパーで知られる成城石井の業績が好調です。

成城石井の2018年2月期第1四半期決算は、売上高は前年同期比8.6%増の196億円、営業利益は同7%増の17億円でした。4月に新たな旗艦店となる大型店の池尻大橋店(東京都目黒区)をオープンするなど出店が加速したこともあり、売り上げは堅調に推移しました。

 

成城石井ローソンの完全子会社です。投資会社の丸の内キャピタルが管理・運営する丸の内キャピタル第一号投資事業有限責任組合より成城石井の全株式をローソンが譲り受け、14年10月31日に連結子会社化しました。株式取得は363億円、有利子負債を含めた総額は550億円と見られています。

成城石井ローソンの傘下に入った後も順調に業績を伸ばしています。成城石井の2017年2月期の売上高は前年比24.4%増の858億円、営業利益は同37.2%増の69億円です(決算日を12月末日から2月末日に変更したため、会計期間は14カ月)。直営店舗数は17年2月末時点で132店です。17年7月10日時点のフランチャイズ店を含めた店舗数は155店にもなります。

スーパーマーケットは市場が成熟し伸び悩んでいる業界です。経済産業省の調査によると、スーパーの16年度の販売額は前年比1.7%減の13兆2億円です。90年代後半から16年度まで12兆円台後半から13兆円の間で概ね推移し、伸び悩みを見せている状況です。そうしたなか、成城石井は大きく成長しているのですが、その理由はどこにあるのでしょうか。

1927年2月、東京・成城学園前駅の近くに、成城石井の前身である石井食料品店が創業しました。今年に創業90周年を迎えています。1976年に株式会社成城石井を設立し、1号店となる成城店をオープンしました。スーパーとして営業を開始したのです。

ちなみに、2号店を開店するのに12年を要しています。一気に店舗網を拡大するのではなく、基礎固めを行ってから慎重に出店を進めていきました。このことから、成城石井は基礎や基本を重視する経営スタイルの企業であることがわかります。

転機となるのが、1997年に初の駅ナカ店舗「アトレ恵比寿店」(東京都渋谷区)をオープンしたことです。当時は駅や駅に直結した場所ではスーパーは売れないと言われていましたが、蓋を開けてみれば想定を上回る売り上げをあげたといいます。駅が、ただ通過する場所ではなく商売が成り立つ場所であることを示した形になりました。アトレ恵比寿店が成功したことにより出店の幅が広がったため、その後は出店を加速させていきます。

成城石井のコンセプトやレイアウトは店舗によって大きく異なります。決まったフォーマットがなく、地域や立地に合わせた店づくりを行なっていることが特徴的です。その理由は、成城石井は基本的に小型店で出店し、地域の他のスーパーにはない商品を取り揃えることで差別化を図る戦略を採用しているため、地域のニーズに合った厳選された品揃えを行う必要があるからです。そのため、店舗によって趣が大きく異なるのです。

成城石井はユニークで高品質な商品をリーズナブルな価格で販売することで消費者の支持を獲得してきました。バイヤーが世界中で良い商品を探し、産地や市場で直接買い付けることで実現しています。このように手間をかけることで、成城石井でしか手に入らない商品を取り揃えることに成功しているのです。

例えば、土地柄なのか、京都の名産品で良いものは東京には一般的に出回らないといいます。そこで、成城石井のバイヤーは現地に直接出向いて交渉することで、一般的には販売されない商品を買い付けることに成功しています。物産展などでは行われていたことですが、これをスーパーで行ったことが革新的だったのです。

成城石井といえばワインが有名です。ワインは関連会社の東京ヨーロッパ貿易を通じて直接買い付けることで、稀少性が高いワインを取り揃えることができています。輸入の際の品質管理も徹底し、ワインに適した温度15℃前後、湿度60〜70%を保ち、最適なコンディションで運ぶことで品質を保った状態で消費者に販売することができています。

総菜が充実しているのも特徴的です。高まる中食需要に対応するために、1980年頃から総菜を取り入れました。さらに、1996年にスーパーでは当時まだ珍しかったセントラルキッチンを稼働させました。総菜、パン、デザート、加工肉などをプロの料理人がセントラルキッチンで製造しているのです。中食需要は現在も増加しています。日本惣菜協会によると、2016年の中食市場は9.8兆円で前年比2.7%増加しています。先見の明があったといえるでしょう。

成城石井はこだわりの高品質商品を世界中から買い付けています。一方、こだわりの商品が世界中を探しても見つからない場合は自社で商品を開発し、プライベート(PB)商品として販売しています。既製品と同じようなものを単に価格を下げて販売するだけの一般的なPB商品とは一線を画しています。

こうしたことにより成城石井はユニークで高品質な商品をリーズナブルな価格で販売することができています。リーズナブルと言っても安売りはしていないので、利益率は高く保つことができています。成城石井の売上高営業利益率は業界の中でも高く、2017年2月期は8.1%、2015年12月期は7.3%にもなります。これは非常に高い数値です。

成城石井の業績は好調ですが懸念もあります。成城石井の商品はリーズナブルな価格ではあるものの、他の一般的なスーパーと比べると価格は高く、庶民が日常的に利用できるとは言い難い面があります。そのため、出店できる地域は限られてしまいます。現状はまだまだ出店余地があるとはいえ、いずれ店舗数が頭打ちになり、成長が止まってしまう可能性があります。

そこで期待されるのが、成城石井ローソンのコラボです。全てを成城石井で買ってもらうのではなく、一部は成城石井の商品を、一部はローソンの商品を買ってもらうといったことが求められていくことになるでしょう。今はその機能を他社のスーパーなどが担っていますが、それをローソンで代替すればグループで囲い込むことができるようになります。それを可能にするのがコラボなのです。

現在、ローソンでは成城石井のワインを販売しています。今年3月からは、成城石井ローソンが共同開発したワインも販売しています。菓子の共同輸入やナッツ、カップスープなどの共同開発も行なっています。ローソンセレクトとしてワインに合うチーズやウインナー、生ハムといったおつまみを取り揃え、ワインと組み合わせで購入してもらえるよう訴求を強化しています。

成城石井ローソンが隣接して出店するケースも増えるでしょう。例えば、高層ビルの「シーバンス ア・モール」(東京都港区)の1階には通路を挟んで成城石井ローソンが隣接して出店しています。こうすることで、例えばワインを成城石井で買ってもらい、つまみをローソンで買ってもらうといったようなことが可能になります。

ローソンがスーパーに併設する形での出店は今後増えていくことが予想されます。今年6月、スーパー「コープたけふ 平出店」(福井県越前市)に併設する形でローソンが出店しています。一部の商品では競合しますが、すみ分けは可能で相乗効果が見込めます。こうしたスーパーとローソンの併設出店で相乗効果が見込めると判断できれば、成城石井ローソンの併設出店も増えていくことでしょう。

これらが示すように、成城石井ローソンによるコラボ商品の開発や商品の共同展開、両者による併設出店が今後進むと考えられます。成城石井ローソンをセットにした新業態店の展開も考えられます。両者がコラボすることで相乗効果を見込むことができます。そして、成城石井のターゲット層は広がることになるでしょう。

成城石井の成長は今後しばらく続くのではないでしょうか。今後の動向に注目が集まります。

image by:【公式】成城石井 - Home | Facebook

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東京MXテレビ『バラいろダンディ』に出演、東洋経済オンライン『マクドナルドができていない「基本中の基本」』を寄稿、テレビ東京『たけしのニッポンのミカタ!スペシャル「並ぶ場所にはワケがある!行列からニッポンが見えるSP」』を監修した、店舗経営コンサルタント・佐藤昌司が発行するメルマガです。店舗経営や商売、ビジネスなどに役立つ情報を配信しています。

出典元:まぐまぐニュース!