文字通り上からふりかけるだけでご飯に味を追加する「ふりかけ」は、今や日本食、特に弁当やおにぎりを作る際には欠かせないアイテムになっている。魚系、のりたま、しそなどの定番ものに加え、餃子味、カレー味、タコライスにやきそば味も登場するなど、味の種類も極めて豊富だ。

そんな和洋を飛び越えたバリエーションを獲得しているふりかけだが、その元祖は熊本県、それも薬剤師が考案したものだという。そんなふりかけのルーツである「御飯の友」を製造するフタバ(熊本市)に話を聞いてみた。


ふりかけのルーツ「御飯の友」(以下、画像はすべてフタバ提供)

八角瓶にも一工夫あり

フタバの担当者によると、熊本で薬剤師をしていた吉丸末吉さんが、いりこを丸ごと粉末にして味付けをした品を大正初期に考案したことが、ふりかけの元祖「御飯の友」の誕生だという。

当時は食糧不足でカルシウムが不足していたため、薬剤師という立場と知識からそれを解消すべく、栄養補助食品として考案された。魚嫌いの人にも受け入れられるよう、魚の臭いを消すための工夫がなされている。


薬剤師の吉丸末吉氏

吉丸氏が考案したこの「御飯の友」の配合は現在まで受け継がれているため、現在も味わいのベースは変わらないという。


戦時には兵士の健康を支えた

そんな「御飯の友」がふりかけのルーツと正式に認定されたのは1994年のこと。業界団体の全国ふりかけ協会がふりかけのルーツを調査した結果、大正初期に発売されたフタバの「御飯の友」が認定されたという。また、ルーツが定まったことで、吉丸氏の誕生日である5月6日がふりかけの日として制定された。

フタバの担当者は、ルーツ認定に関して

「それ以前にも、ごま塩のようにご飯にふりかける食べ方はありましたが、製品としてのルーツとして認定されました」

と語った。

「御飯の友」は現在パック入りで販売されているが、発売開始後に使われていた特徴的な八角瓶詰めも、現在でも手に入れられる。


八角瓶入りの「御飯の友」

この八角瓶は、入口が小さいことで乾燥を防ぐという機能に加え、考案者の吉丸氏の職業にちなんだ意味も込められているという。

「考案者が薬剤師だったことから、仕事道具であるフラスコをイメージして、という意味もあるようです」