今季のスローガンとなっている「繋がりタオす」。チームが一貫して取り組むパススタイルをさらに追求していく決意だ。(C) J.LEAGUE PHOTOS

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 J3リーグが3月11日に開幕し、第3節までを消化した。ここまで3連勝を挙げたのはカターレ富山と、田坂和昭新監督が就任した福島ユナイテッドFC(以下福島)だ。福島は昨シーズン16チーム中14位と振るわず、田坂監督に建て直しが期待されていたが、予想以上の躍進ぶりだ。一体何が変わったのか? スタートダッシュ成功の理由として挙げられる4つのポイントについて見ていきたい。
 
 
1.指揮官が標榜する「密集スタイル」が即座に浸透
 
 田坂監督が就任会見で、攻撃でも守備でも選手の距離を近くする「密集スタイル」を、チームコンセプトとして発表。これが驚くほど早くチームに浸透した。
 
 攻撃面では、選手間の距離を縮めての細かいパスワークを主体としたスタイルがハマり、FW田村翔太が3ゴール、MF星広太が2ゴールの活躍を見せている。守備でも相手のペースになった時は、ゴール前で選手間の距離を近くし、3試合で1失点と安定した守備が築かれている。
 
 第3節の琉球戦で田村のゴールをアシストしたトップ下の橋本拓門は「みんなとつながれている感覚が楽しい」と語る。結果が出ていることもあり、密集スタイルは選手たちにも好意的に受け入れられている。
 
 田坂監督はあまりボールを保持できなかった第2節・沼津戦に関しては「密集の時間帯が少なかった」、比較的ボールを保持できた第3節・琉球戦では「前節よりは密集の時間帯ができた」と語っている。密集がチームの調子を測る「ものさし」になり、よりどころがはっきりしたのも大きい。分かりやすいキーワードをよりどころとしたのは、成功体験の少ないクラブにとって非常に効果的だった。
 
 
2.数々のポジション転向が大成功
 
 田坂監督は何人かの選手のポジションを変えた。最も顕著な例はベテランDF茂木弘人だ。広島、神戸のサポーターはFWもしくはサイドバックというイメージが強いだろう。福島でもその両方のポジションを務めていたが、田坂監督はフィジカルの強さとスピードがあるので、センターバックで起用することを決断した。
 
 密集スタイルは、ラインを高く設定するため、背後のスペースを突かれるリスクがあるが、茂木のスピードによってこの危険なエリアをケアできるのだ。理にかなった起用で、茂木自身も新しいポジションで輝きを放っている。
 
 その他、かつてはサイドハーフやトップ下だったMF鴨志田誉、サイドハーフもしくは最前線で起用されていたMF平秀斗はハードワークが利くためサイドバックへ転向。昨シーズンまでボランチの橋本もトップ下へ転向し、前節は田村のゴールをアシストするなど、ゴールに絡む活躍も見せている。
3.研究されるのは織り込み済み
 
 Jリーグ開幕から3試合目ともなると、戦術を研究されるのが常。J1・J2クラブで百戦錬磨の田坂監督はそれも織り込み済みであった。第3節の対戦相手である琉球は、密集で空いたスペースを突こうと、サイドチェンジを増やしてきたが、「サイドチェンジをしてくるだろうとは分析していました。(星)広太と(田村)翔太が相手のサイドバックが高い位置を取ってくるのを見て、よく中へ絞って準備をしてくれて、パーフェクトな守備をしてくれました」と両サイドハーフ星と田村の守備を誉め称えた。
 
 琉球戦後の質問で「密集を作った後、空いたスペースへ展開する攻撃があっても良いのでは」との問いにも「それはトレーニングでもやっていて、それで点が取れればもっと幅のある攻撃ができます」と既に密集スタイルの応用と言える形も練習しているとのこと。「相手が研究してきても二の矢、三の矢を放ちたい」と田坂監督に様々な引き出しがあるのは心強い。