スマホが大活躍です。まず、手帳代わりにメモを残したりする。仕事柄、ICレコーダーの代わりにインタビューを録音することもあります。「電車の中でみんなスマホばかり見てる」とその光景を揶揄する声も聞きますが、それって電車内でサラリーマンが新聞を読んでた姿の現代版という気がしないでもない。要するに、スマホは新聞代わりにもなります。
そして、スマホは時計&カレンダーとしての用途も大きい。「今、何時だっけ?」「今日は何日だっけ?」とスマホを取り出して確認。今や、当たり前のように誰もがとる行動でしょう。

だからこそ、2017年の今もこのような商品が販売されているとは衝撃でした。

取り扱いは今や国内で一社のみ!? 『ウォッチバンドカレンダー』


株式会社大成(千葉県松戸市)は、その名も『ウォッチバンドカレンダー』のなんと2017年版を発売中です。
っていうか、『ウォッチバンドカレンダー』ってわかりますかね? これです。


腕時計のバンドに月ごとのカレンダーを挟み込み、時刻だけじゃなく日付も確認してしまえる古き良き昭和のアイテム。

記者からすると「あーっ、昔こんなのあった!」ってなリアクションになるのですが、20代の方からすると果たして存在を知っているのかどうか……。まあ、今回は構わず話を進めます。

同社が運営する商品サイト「よろず屋タイセイ本舗」 に立ち寄ると「今、買えるのは株式会社大成だけ!」と勇ましく謳われているのを発見。やっぱり平成の世に取り扱うメーカーは少なく、いまやここだけっぽいです。同店の責任者である根本さんに話を伺いました。
「調べてはいないんですが、お客さんが『他には売ってない』とおっしゃるので、ウチのみではないかと……」(根本さん)

同社は前身であった会社から業務を引き継ぎ、『ウォッチバンドカレンダー』の製造・販売を昔からずっと続けているそう。どうやら70年代辺りから『ウォッチバンドカレンダー』を取り扱っていたようですが、もちろん当時は競合他社も存在したはず。そして、次第に廃れていき、ここだけが残って今に至る……という流れのようです。

儲け度外視だったはずが、いつしか注文が殺到する状態に


というか、素朴な疑問が私にはあります。そもそもこのカレンダーって、今も使ってる人はいるんですか?
「2010年頃、当社でこの商品を卸している取引先は1〜2社程度しかなかったんです。そして3〜4年前に最後の一社との取引も終わり、『潮時かな』と思いました。すると2〜3年前から『そちらで作っているんですか?』と、週に多くて10本くらいの個人様からの問い合わせが寄せられるようになったんです。どうやら、Q&Aサイトで『この会社で作っている』と書き込みがあったようで、それをきっかけに問い合わせが舞い込むようになりました」(根本さん)

ただし、この反響は痛し痒し。というのも、『ウォッチバンドカレンダー』は何千個単位で作らないと採算がとれない商品なのです。最低でも数百個売りきらないと、赤字になってしまう。
「でも、サービス精神じゃないですけど個人向けに製造・販売を続けてもいいかな? と思うようになったんです。製造をお任せしているのは昔からお付き合いのある工場ですし、『ウチの販促品でもあるなぁ』と考え方を変えました」(根本さん)

「サービス精神」とは言い得て妙、当初は「月10個出ればいいかな」くらいに考えていたそうです。はっきり言って、儲け度外視ですな。
「それが2013年5月にテレビ番組で取り上げられて、月100個に届きそうな勢いで注文が増えたんです。その後もテレビでご紹介していただくことが数回あり、2年前に紹介された時は放送30分後で一年で売ろうとしていた数に達してしまいました」(根本さん)

使ってみるとスマホのカレンダーを開くのが面倒になる


昭和臭漂う珍商品だと思ってましたが、今でも意外な人気を誇っていた『ウォッチバンドカレンダー』。でも、一体どんな人たちがこのアイテムを買い求めているのでしょうか?
「僕が思うに“ノスタルジー”に喚起されて購入する方が主な気がします。手頃な値段なので『懐かしいから使ってみよう!』となり、実際に使ってみると便利さに気付いてリピートされる方が多いみたいです」(根本さん)

そう、実は“ノスタルジー”のみじゃないらしい。スマホで日付をチェックする場合、カレンダーを起動しなければならないですよね? でも、時計のバンドに装着してればチラ見するだけで確認できてしまう。
「その程度の便利さなんですが、これに慣れてしまうと『●月▲日って何曜日だっけ?』とスマホを開くのが面倒になってくるんです。自社で取り扱っている商品なので私も試しに使ってみたら、意外と重宝するんですよね(笑)。例えば、携帯で電話中に『何日のご予定はいかがですか?』と確認された時、カレンダーを起動するよりも先にウォッチの方を見てました。今では、このカレンダーを家に忘れてしまうと『しまった!』と思うようになりました(笑)」(根本さん)

たしかに、今日の日付はスマホですぐに判明するけど、2週間後の日付はバンドを見た方が圧倒的に早いです。


慣れちゃったら最後、無いと困るアイテムになるのかもしれません。

ネットショップも1人で運営


そんなウォッチバンドカレンダーは、ネットショップ「よろず屋タイセイ本舗」にて小分けにしながらの限定販売を現在も受付中です。価格は税込432円。
「数年前、テレビで紹介された直後のタイミングで一度に1000人ほどのお客さまからご注文が殺到したことがあり、対応しきれなかったことがあったんです。実はウェブショップは1人で運営しているので、ご注文していただいたお客様をヤキモキさせないよう、現在の再販を繰り返す形にさせていただいております」(根本さん)

ちなみに、一回の注文での購入数は1〜10個までと設定されています。
「仲間内で配るためにお年寄りがご購入されているケースも多いみたいです」(根本さん)
いや、決して高齢者のみじゃない。「お父さんが使っていたので、自分も試しに使ってみよう」と若者が購入するパターンも少なくないようです。

購入に至るきっかけは、人それぞれ。そして、買ったら買ったたで虜となり「来年もお願いします!」「なくて困ってたんです……」といった反響が寄せられているという『ウォッチバンドカレンダー』。昔ながらの型をそのまま用い、腕のある工場で丁寧に製造され続けているとのこと。昭和の時代から今に残る便利アイテムです。
(寺西ジャジューカ)