「おんな城主 直虎」NHK公式ホームページより

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 柴咲コウ(35)主演のNHK大河ドラマ「おんな城主 直虎」の第5回が5日に放送され、平均視聴率は前回と同じ16.0%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)となりました。前回で子役パートが終わったことで、おとわ・亀之丞・鶴丸の幼なじみ3人組を演じる柴咲コウ・三浦春馬・高橋一生もこの第5回からそろい踏み。これまでは子供の視点を中心に話が展開していましたが、今後は井伊家の戦国サバイバルがよりリアルな視点で描かれていくことに期待したいものです。

 今回は、次郎法師(柴咲コウ)が夢に見た想像上の亀之丞が彼の父親(宇梶剛士)そっくりの顔だったり、帰参した亀之丞(三浦春馬)と次郎が2人きりで会っているかと思いきや、ツルツル頭もりりしいお坊さん・傑山(市原隼人)が「間違いがあってはならんからのう」と陰から見守っていたり、ちょっとした笑いどころが散りばめられていました。

 今川氏真(尾上松也)と結婚できなかった瀬名(菜々緒)の悔しさと恨みを隠せない手紙が次郎法師(柴咲コウ)に届いた場面では、般若の面を付けた瀬名が妄念たっぷりに舞う映像が。ハマりすぎてて、笑わせにかかっているとしか思えません。

 今回の注目人物は、井伊家筆頭家老・小野政直(吹越満)。今川家との交渉事を一手に引き受けているせいで、常に井伊家の人々から「お前はどっちの味方なんだ」と非難され、うとんじられている人物です。

 第5話では、次郎の質問に答える形で「誰も信じてくださるまいが、それがしは井伊のことを思って」と自らの行動を説明。大半の視聴者が予想していた通り、ただの悪者や裏切者ではありませんでした。次郎も「物事は見る者の心によって変わるもの」と答え、政直を慰めます。「息子をよろしくと皆に伝えてくれ」と次郎に伝言する病床の政直。なんだかんだ言ってやっぱりいい奴でした。めでたしめでたし。

 で終わらないのが政直。しらっと「今の嘘だから(意訳)」と息子の政次(高橋一生)に種明かし。「お前は必ず、わしと同じ道をたどるぞ」とも。当然政次はそんな父親に反発。井伊家の縁戚となるからには井伊のお家を第一に考えていきたい、小野はさすがに頼りになると言われることこそ誠の勝利だと決意を述べます。そんな純真な若者に政直は「お前は、めでたいやつじゃのう」と一言。その表情を読み取ることはできませんでした。

 政直はなぜこんなにも、息子の前でも悪人を装う必要があったのでしょう。お家のために汚いことに手を染める描写といえば、昨年の大河ドラマ「真田丸」でも、真田昌幸の弟・真田信尹が謀略で人の命を奪い、信繁(真田幸村)に「わしのようにはなるな」と諭すシーンがありました。つまり、嫡流は汚れ仕事に手を染めず、そういう役目の人に任せておけという意味。

 井伊家における小野家は、あくまでも家臣の立場。井伊家を存続させるためには、誰かが汚いこともやらなければならない。でも、謀略も何もなくただ「いくさじゃー」と叫んでいるような井伊家の人々にはそんなことは無理。であれば、小野の家が汚れ役を買って出なければならない。自らの死を目前にして政直が息子に教えたかったことはがこれだったとしたら、なかなかつらすぎます。

 史実によれば小野政次は、父親が言い残した教えに従い、父親の足跡をたどっていくことになります。第5回で「亀之丞帰ってきたから小野の縁談もなしね」と殿(杉本哲太)に告げられた時、政次の心に何か闇の種がまかれたような気がします。

文・中島千代