ビートたけしは先のことを想定し、軍団の面々に「俺が死んだ時は、(お葬式を)ムッチャクチャにやれ」と伝えてあると聞いたことがあります。あの人らしく、ドンチャン騒ぎで終わりを迎えようということでしょうか?

「すごい芸人魂だな」と思ったものの、自分に当てはめてみると決して理解できなくありませんでした。さすがに「ムッチャクチャに……」とまではいかないですが、別れの時は笑顔であってほしい。みんなが笑い合い、実はその中に涙があるような。そうであってくれたら幸せだし、素敵だと思っています。

明るく笑顔でおくりだす「お別れ会」のこと


今年の1月より、「涙活」プロデューサーである寺井広樹氏が新しいサービスを立ち上げています。名付けて「笑顔葬」


端的に言うと、明るく笑顔でおくりだす「お別れ会」をこのサービスでは行ってくれるようです。
「『お別れ会』はたくさんの人が参列するような有名人に限ったものと思われる方もいますが、徐々に一般の方の間にも広まりつつあります。天寿を全うされた方、納得のいく最期を迎えられた方であれば笑顔でお見送りしたいものです」(寺井さん)

というか、そもそも「お別れ会」というものについて筆者はよく知りません。これって、どんなことが行われる場なんでしょうか?
「お別れ会とは、家族を中心に葬儀・告別式を行い、火葬を済ませた後、改めて職場関係者や友人・知人らを招いて行うお別れのスタイルを言います。時間が限られている葬儀とは異なり、少し時間をかけてプランニングできるのもお別れの会の特徴と言えるでしょう」(寺井さん)

故人の人生を漫才で振り返ってくれる


今回立ち上がった「笑顔葬」は、通常の「お別れ会」と異なるポイントがいくつかある模様。以下の3つのプランのどれかを選び、会を取り仕切ってもらうみたいです。
●音楽葬


故人が生前好きだった曲を生演奏して送り出す。
「生前好きだった曲、ポップス、ロック、演歌、クラシックなどを生演奏やゴスペル、ピアノ、ヴァイオリンなどご要望に応じた演奏を行います。これまで涙活イベントで歌っていただいたアーティストの方にご出演いただく場合もあります」(寺井さん)
●漫才葬


芸人による故人の略歴紹介から始まり、これまでの人生を漫才や紙芝居で振り返る。
「お笑いのヴェートーベンさんや紙芝居を使った人情噺を得意とする芸人さんなどに出演していただきます」(寺井さん)
●イケメン葬


韓国、中国各地では「泣き女」と呼ばれる、葬式で泣くことを職業としている女性がいるが、「イケメン葬」では故人を偲んでイケメソ男子 (イケメンでメソメソ泣く男性)が一緒に涙する。また、イケメンが優しく参列者様の涙を拭うことで、自然に笑顔がこぼれる。

ちなみに、「笑顔葬」の基本的な流れは以下です。
1. 開式の辞
2. 故人の略歴紹介
3. スライドショーで人生を振り返る
4. お別れの言葉
5. 会食
6. 閉式の辞
「会場は、ホテル、レストラン、葬儀式場、故人のゆかりの地など自由です」(寺井さん)

“新しい人生の入り口”だからこそ、笑顔でおくり出す


でも、「お別れ会」ってやる必要あるんでしょうか。お葬式と何が違うのかしら? 元も子もない話ですが……。そこで、寺井さんに「笑顔葬」を行う意義、メリットを教えてもらいました。
1. 葬儀をせずに火葬する「直葬」も増えており、区切りを付けられなかった人にしっかりとしたけじめになる。
2. 宗教的な儀式から離れて自由に行える。
3. 葬儀とは違って、亡くなってから数年経ってから行うことも可能。

ところで通常のお別れ会だと、やっぱり笑顔を見ることは少ないんでしょうか?
「お別れ会は葬儀や通夜に比べてフランクな雰囲気になりますが、厳粛な雰囲気の下で多くの人たちに報告し悼むケースも多く、笑顔を見せてはいけないものか場の空気を読む方も少なくないです。しかし、『笑顔葬』と銘打つことで笑顔で送り出していいのだとリラックスした空気の中、より素直に故人と向き合えると考えています」(寺井さん)

この「笑顔葬」なるサービスを立ち上げたきっかけとして、亡くなった人に思いを届ける「天国ポスト」があったと寺井さんは語ります。
「天国ポストの活動を、グリーフケア(身近な人を失った悲しみをケア)の一環で作家の志茂田景樹先生と行っております。活動を通して、亡くなった人にしっかりお別れをできてない人がたくさんいらっしゃることを知り、笑顔のお別れ会を行うことの重要性に気付きました」(寺井さん)

「死はまた新しい人生の入り口です」と寺井さんは定義していますが、たしかに、そんな風に考えれば気がふっと楽になるかもしれない。「新しい人生の入り口」には、きっと笑顔もふさわしいです。
(寺西ジャジューカ)