終盤の猛攻実らずボスニアに逆転負け……。ブルガリア戦で2ゴールの吉田は、2失点に絡むなど安定感を欠いた。写真:滝川敏之(サッカーダイジェスト写真部)

写真拡大 (全2枚)

 第1戦目のブルガリアとは違い、ボスニア・ヘルツェゴビナはエースのエディン・ジェコ、ミラレム・ピアニッチら欧州主要リーグで活躍する主力数人を欠きながらも、組織力があり、個の能力もある程度高く非常にポテンシャルのあるチームだった。とはいえ、負けたことは看過できない。

【日本1-2ボスニアHG│PHOTO】 迫力満点の吹田スタ! 「技」と「力」、カメラが捉えたインパクトの瞬間
 
 なにより気になったのは守備の出来だ。宇佐美貴史の突破から清武弘嗣が先制点を決めたにもかかわらず、その直後に失点を喰らってしまったのは頂けない。特に、この試合で2失点に絡んでしまった吉田麻也の対応には、誰もが不安を覚えてしまったのではないか。
 
 吉田は、オフサイドトラップを仕掛けつつ、人に付いていくプレーもしていたけれど、正直どちらも中途半端だった。そうではなく、まずはしっかり敵のマークを逃さないことを第一に心掛けるべきだ。
 
 そのうえで、森重真人や長友佑都、酒井高徳と連係しながらセカンドボールへの対応をしっかり留意してプレーしていれば、一本の縦パスからあんなに簡単にやられずに済んだに違いない。
 
 個人的には、オフサイドを取るために必要以上にラインコントロールを気に掛けるべきではないと思うが、そのあたりをどうするのか。今後に向け、守備面での決め事をしっかり整理しておかないと、アジア最終予選でも同じ轍を踏んでしまいかねない。
 
 そうした守備面のパフォーマンスに加え、もうひとつ気掛かりなのは、球際の局面で簡単に競り負けていたシーンがあまりにも多かったこと。
 
 フィジカルについては、ハリルホジッチ監督も試合後会見で苦言を呈していたようだが、局面でのプレーはまだまだ軽い。相手の圧力に屈して簡単にゴール前に侵入を許していた場面を見る限り、ワールドカップでベスト8を狙うのもこのままでは厳しい。
 
 普段から厳しい環境に身を置ける欧州組はまだしも、国内組が逞しく成長できるのか不安になる。もちろん、個々が意識を高めないといけないが、本気で世界との差を縮めたいと思っているのなら、Jリーグの強化を真剣に検討すべきだと改めて感じさせられた。
 
 攻撃に関しては、1点を追う状況のなか、残り10分で攻撃的な選手を入れて圧力が増したのは良かったとは思う。しかし、いくらチャンスを作っても勝利に結びつけられなければ話にならない。
 
 日本は攻め崩すスタンスを貫いていたが、相手が自陣を固めてきた時に、果たしてそれだけで打開できるかは疑問。同じような攻撃パターンでこじ開けるのは、もはや厳しいように思う。だからこそ、FWにターゲットマンを置いておくのもひとつの手だろう。
 
 ハリルホジッチ監督は、3月のアジア二次予選で初招集したハーフナー・マイクを、今回のキリンカップでは呼んでいない。その事実からも、あまり高さに固執していないのかもしれないが、例えば、途中から高さのある選手を投入すれば、相手DFの注意を引きつけられ、ゴール前での隙が生じる可能性も考えられる。
 
 また、仮に相手に撥ね返されたとしても、セカンドボールを高い位置で拾って2次、3次攻撃へつなげる意味でも効果的だろう。今回の結果を受けて、最終予選でハリルホジッチ監督がどのようなFWを選ぶかは非常に興味深い。
 
 それから、終盤にビッグチャンスを迎えながらパスを選択してしまった浅野拓磨のプレーは、たしかにネガティブなものだ。その消極性が、もしかしたら広島でもレギュラーに定着していないことへつながっているのかもしれない。
 
 ただ、チャンスを逃した悔しさのあまり、試合後に人目をはばからず涙を流していたシーンを見て、相当な覚悟でプレーしていたんだというのは垣間見られた。試合後のインタビューでやはり悔しさを噛みしめていた清武しかり、彼らがこの悔しさを糧に成長してくれることを期待している。