お約束感の巧さ「とと姉ちゃん」46話

写真拡大

連続テレビ小説「とと姉ちゃん」(NHK 総合 月〜土 朝8時〜、BSプレミアム 月〜土 あさ7時30分〜)第8週「常子、職業婦人になる」第46話 5月26日(木)放送より。 
脚本:西田征史 演出:岡田健


西田征史のうまさをまたまた痛感した回だった。
常子(高畑充希)がついに就職試験を受ける回で、面接官が絵に描いたような冷たさで、実技で挽回しようとしたらそれすらなくなっていて、すべてにおいて常子、可哀想・・・と思わされる。だが、結果的には、常子、良かったね、というふうになる。こうして視聴者の感情をアップダウンさせて楽しませてくれているのだ。
それはともかく、常子が「お役に立つ」という言葉を何度も使うのが印象的だ。なんでこんなに献身的なんだろう。
お役に立つってなんだろう。
その回答例がふたつも提示される。
ひとつは、滝子(大地真央)が美子(根岸姫奈)のために、おさがりの筆入れに端切れを使って、特別感を出したこと。
ひとつは、東堂先生(片桐はいり)が、雑誌青鞜にオリジナルカバーをかけていた。それは帝国百貨店の包装紙で、彼女がきれいな包装紙をもらった時はカバーにすることにしていると言う。
前者は、美子お役に立ち、後者は、捨てられてしまう包装紙のお役に立っている。大切な本を汚さないことで本に対してもお役に立っている。
「ささやかですがこうした心がけが小さな幸せを生むと私は思っています」と東堂先生。これが常子の琴線に強く触れる。「ささやかな心がけ」は、ととやかかの思いと共通していたからだろう。
東堂先生は、平塚らいてうの思想も常子に紹介し、さらに、生活に関することにも影響を及ぼした。なんていい先生なんだろう。
さて、常子はいろいろあったけど無事に卒業。中田綾(阿部純子)ともこれでお別れだろうか。綾、もうちょっと絡んでほしかった気もしないでない。

青柳VS森田屋、確執がなくなったかと思いきや、結局また張り合っていた。そういうものかも世の中って。
お約束感を出すのもうまい、西田征史。
(木俣冬)