オフィシャル誌編集長のミラン便り2015〜2016(33)

 今シーズンも残すところあと90分となった。だがミランのシーズン最低限の目標であるヨーロッパリーグ出場権奪取は、非常に難しい状況にある。

 第37節の試合が終わったあとも、サッスオーロはミランを1ポイントリードしたままだ。ミランはボローニャに勝利したが、サッスオーロもフロジノーネに勝利した。ちなみにそのフロジノーネに、ミランは7日前にサン・シーロで敗れている。それもフロジノーネのセリエB降格の決定試合で......。ミラニスタがこれまでにない非難をミランに浴びせたのはまだ記憶に新しい。

 ボローニャ戦で本田圭佑は4試合連続でスタメンに入った。ポジションはいつもと同じ2トップの後ろ、トレクアルティスタの位置。マリオ・バロテッリがいるときは多少自由に動いていた本田だが、この日はバロテッリがベンチに残ったため、これまで以上にセンター寄りでプレーすることが多かった。しかし本田が今シーズンのほとんどを過ごした右サイドでは、彼の不在が大きく感じられる。

 本田はこの日も、自分を犠牲にして守備に貢献したが、前線にボールを供給することは少なかった。試合終盤、交代する少し前に、ルイス・アドリアーノにいいアシストのパスを1本送っただけだ。

 しかし本田の問題は、ミランの11人全ての問題だ。前半14分にボローニャのアマドゥ・ディアワラが退場となり、ミランは試合の大部分を1人多い人数でプレーしたのだが、選手たちはその数的優位を有効に利用することができなかった。

 攻撃は常に鈍く単調で、ミランのFWがボローニャのDFを困らせることもなく、FW以外の選手もそれを助けようとはしなかった。フロジノーネ戦の結果は引き分けだったが、それでも2度リードされたあとに激しい反撃が見られた。しかしボローニャ戦ではそんな気概さえも見られなかった。

 コッパ・イタリア決勝のユベントス戦は5月21日に行なわれる。もしリーグ戦で6位になることができなければ、ここでの勝利がヨーロッパでプレーする最後のチャンスとなる。しかしボローニャ戦の様子を見る限り、ミラニスタにしても選手たち本人にしても、その日まで枕を高くして眠れないだろう。ボローニャ戦でゴールを決めたカルロス・バッカも試合後こう述べていた。

「今晩のようなミランでは、ユベントスにはとうてい太刀打ちできない。チーム全員が持てる実力を120%フル稼働させることが必要だ」

 目標奪取をかけた今季最後の重要な2試合で、ミランはローマとユベントスという強敵に立ち向かわなければならない。そのためには皆がもっとやる気を出さなければと、仲間にハッパをかけた形だ。

 こんな状況であるから、ミランの周囲には常にピリピリとした空気が漂っている。それが少しでも落ち着くように配慮してか、金曜日の午後、シルビオ・ベルルスコーニ会長は自身のFacebookに約3分にわたるビデオメッセージをアップした。

 その中で会長は、最近話題になっている中国人コンソーシアムへの株売買についても触れている。ミランの重要な株の一部を1年以上前から売ろうとしていること、しかしできればミランをイタリア人の手に委ねたいと思っていること......。最近イタリアのマスコミががなりたてている内容とはかなり違うものである。これに対するサポーターの反応は2つに分かれたが、おおむね良好なものが多かった。

 とにかく今はミランがヨーロッパの舞台に返り咲くことを、切に、切に願う。だから今回のコラムは久々にこの言葉で締めよう。Forza Milan!

ステーファノ・メレガリ(『Forza Milan!』編集長)●文 text by Stefano Melegari
利根川 晶子●翻訳 translation by Tonegawa Akiko