明治大正の美人は、心もすごく清らかで謙虚で、実直な人が多い気がします。美人で性格も素晴らしかったら、もう敵うところがない!と思ってしまいますが、実際そういう人は多いわけで……。今回は見た目も心も美しい、明治時代の美女のお話です。


伝説の美少女「末弘ヒロ子」の映画のようなシンデレラ・ストーリー



「ミス・ユニバース」など、世界的な美女を決めるコンテスト。
今では当たり前に行われていますが、実は明治時代にも同じようなものがありました。
各国がナンバーワンの美人を一人選び、国の代表として海外で再び評価される「ミスコン」。
日本で初めて日本代表になったのは、「末弘ヒロ子」という女性でした。

大きな瞳に長いまつげの奥二重、透き通るような白肌。
良家のお嬢様として生まれたヒロ子は、近所でも評判の美少女でした。
そして、本人が知らない間にミスコンのグランプリを手に入れてしまったのです。
アメリカの新聞社が主催する「ミスワールドコンテスト」の日本代表の選考に応募した人数はなんと7000人。
当時の人口からするととんでもない数字ですが、そんななか、カメラマンだった兄がこっそり応募したヒロ子が、グランプリとなってしまいます。

受賞が決まった後、兄は妹に優勝を告げました。
するとヒロ子は「そんなのは嫌です」と泣き出します。
人前に写真をさらされるなど、控えめなヒロ子には耐え難い苦痛だったのでしょう。
しかし、もう後戻りすることはできず、その後、ヒロ子は一躍有名に。
数百もの縁談の申し込みが届き、学校にまで人が押しかけ大変な騒ぎになってしまうのです。

彼女の名誉と美貌を妬み辛くあたる人も出てくるなど、平穏な生活を壊されてしまったヒロ子。
ついには学校も退学になってしまいます。
あのコンテストさえなければ、幸せな日々が続いていたのに……。
それでもヒロ子は最後まで兄に勝手に応募されたことを言わず、誰も責めずにすべてを受け入れました。

そんなヒロ子のいじらしい性格に、まわりもだんだんと気づきはじめました。
なんとかして、あの少女に幸せになってもらいたい。
そしてめぐってきたのは「貴族である侯爵との縁談」でした。
いくら良家といえども、侯爵夫人になるなど、夢のまた夢。
ですが、その美貌とそれに負けない内面の美しさで、縁談はトントン拍子に進みます。
そしてその後、侯爵夫人として幸せに暮らしたのです。

美しさによって翻弄されたものの、実直な生き方で幸せを手に入れた末弘ヒロ子。
まるで映画のような、明治のシンデレラ・ストーリーです。

文/岡本清香

TOKYO FM「シンクロのシティ」にて毎日お送りしているコーナー「トウキョウハナコマチ」。江戸から現代まで、東京の土地の歴史にまつわる数々のエピソードをご紹介しています。今回の読み物は「明治のシンデレラ・ストーリー」として、5月9日に放送しました。

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