笑われることが何より屈辱だった江戸時代の武士。では泣くことはというと、「武士が泣くのは親と主君が死んだときだけ」とも言われていたそうです。やはり男性が小さなことで大っぴらに泣くのは、昔からあまりよろしくないと考えられていたようです。でも、人間だから泣きたいときだってありますよね。そんな、幕末の偉人の涙についてのエピソードです。

泣き方にも人柄があらわれます



「やせ我慢」が美徳とされていた江戸時代。
特に男性、武士などは、泣きたいときもぐっと涙をこらえている……。
そんな印象がありますよね。
でも、誰だって涙をこらえられないときがあります。

幕末の志士のなかで、涙を流したエピソードが多く残されている人がいます。
それは、西郷隆盛。
明治維新の立役者の西郷どん、その外見からも豪傑なイメージがありますが、意外にたくさんの涙を流しているのです。

西郷どんといえば、銅像でも一緒に連れている薩摩犬の「ツン」が有名ですよね。
彼は無類の愛犬家で、生涯に20頭もの犬を飼っています。
親しかった大久保利通に、君は太り過ぎだから妾(めかけ)でも持てば痩せるのでは、と提案され、それはいい案だと屋敷に迎えたのが、2匹の犬だった……という微笑ましいエピソードも残されています。

ですが、ずっと連れ添った犬も、西南戦争の際に別れの選択を迫られます。
2匹の犬を解き放ったとき、西郷は涙をこらえられず別れを惜しんで泣いたとか。
まさに彼らしい涙の流し方です。

もうひとつ、西郷が涙を流した有名な場面があります。
薩摩の志士である有馬新七が、「寺田屋事件」で命を散らしたとき。
薩摩の仲間割れで起こったこの事件ですが、有馬は仲間の志士に、敵とともに串刺しにすることを命じ、そのとおりに死んでいきます。
血気盛んな藩士をなだめ、軽率な行動を慎むよう説得してまわっていた西郷ですが、その壮絶な最期を聞き、有馬のお墓の前で、男泣きに泣いたといいます。

朗らかで愛嬌たっぷり、その人柄は敵側からも愛されたという西郷隆盛。
「自分以外のために涙を流す」そんな彼だからこそ、多くの人に慕われたのかもしれませんね。

文/岡本清香

TOKYO FM「シンクロのシティ」にて毎日お送りしているコーナー「トウキョウハナコマチ」。江戸から現代まで、東京の土地の歴史にまつわる数々のエピソードをご紹介しています。今回の読み物は、「西郷どんの、男泣きエピソード」として、2016年9月28日に放送しました。

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