「ごきげんよう」最終回。独りのサイコロトークと明かされたCOROZOの正体

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小堺「昨日は特番(ごきげんようゴールデンSP)もやっていただいて。特番で予算を使いましたので、今日はゲストを呼べないというわけで……えー……私が1人でやると(笑)」

生放送。ゲスト無し。台本無し。『ごきげんよう』の最終回は、小堺一機、たった1人のサイコロトークで始まった。


小堺さん1人だけのサイコロトーク


用意されたサイコロの目は「情けない話」「恥ずかしい話」「初めて○○した話」「忘れられない話」「危機一髪」「恋の話」。定番の6つのお題で、当たり目が無いのはサイコロトーク開始当初を思い出させる。

ちなみに、『ごきげんよう』開始当初はサイコロも客席も無く、『徹子の部屋』のようにゲストと1対1で話すトーク番組だった。スペシャル企画で実験的に行われた「サイコロトーク」が好評になり、以後25年以上の長きに渡りサイコロが振られ続けることになったのだ。その回数はこれまで19459回!

小堺「投げるってね、ドキドキするよね……はいお願いしまーす!(サイコロ投げる)♪何が出るかな?何が出るかな?」

自分で投げて、自分で歌う。いつもの「何が出るかな」が聞けるのも今日が最後。この日で出た目は「忘れられない話」「初めて○○した話」、最後は「恋の話」の3つ。

小堺さんはサイコロを投げ終わってもソファに座らない。お客さんの前に立ったまま1人で喋り続ける。31年前『いただきます』司会のオファーを「ドッキリ」だと思った話、最初の師匠である勝新太郎に初めて会った時の話、奥さんとの出会いの話……。身振り手振り、顔の表情、リアクション、モノマネも交え、軽妙な話術で笑いを取っていく。

そんな中、ちょっとお客さんの様子が気になった小堺さんは、客席に向けて話しかけた。

小堺「あとね、皆さんその笑いを待ってる顔やめて下さい」
(観客笑)
小堺「あの、フジテレビが良くないんだけど、『レッドカーペット』とか瞬間芸ってのをずっとやってたんですよ。ね?で、みんなア〜って笑うと次が欲しいんですよ。ね?……ほらもう待ってるでしょ!?」
(観客笑)
小堺「そんなに無いですからネタは!ね?新しい笑いとかいいますけど、新人が出てきてやるから新しい笑いに聞こえるんですから。32年やってるんだから勘弁して下さい、ね?ほらまた待ってるでしょ!」

ショートネタ中心のネタ番組や、持ち時間にボケを詰め込む賞レース、チャンネルを変えられまいと余白を埋め続けるバラエティ番組。近年の「短時間で笑いを取る」バラエティの作りと、『ごきげんよう』の尺を取って楽しませるトークには距離がある。31年半の間にその距離はどんどん大きくなってしまった。

今日の小堺さんは今のテレビの中で、たっぷり楽しませるトークを繰り広げていた。これぞ大ベテランのピンの話芸。モノマネも絶好調で、横澤彪、堺正章、萩本欽一、勝新太郎、田中邦衛、古畑任三郎、近藤正臣、COROZOにブラッド・ピットのモノマネを無茶振りされて「って、できないよ!」と落とす流れまで、鉄板のレパートリーを惜しみなく披露。最後だからって湿っぽい展開はこれっぽっちも無い、極上のショータイムだった。

COROZOの正体は……


COROZO「今日が最後って聞いたから来てやったゾ〜〜」

CM開け、アシスタントの田淵裕章アナがCOROZOを連れて登場。サイコロ型ロボットのCOROZOは聞きにくい質問をゲストに聞く役割を担っていた。この日も番組宛てに届いた視聴者からのメッセージを読む田淵アナに「絡みづらいんだヨ〜」「興味ねェ〜〜」など噛みつく。COROZOの出番が最近減ったことについては……

小堺「COROZOが人気出てきたんで僕が圧力をかけたんですね(笑)あのー、昔『いただきます』で数字が上がった時に、うちの社長がやってきて、僕の楽屋開けて、「独立したら潰すからね」って言われたんです(笑)」(カメラ、客席に座っている浅井企画の社長を映す)

最後の視聴者メッセージは「質問です。COROZOの声は誰がやっているのですか?」

COROZO「『ごきげんよう』のトップシークレットだけど、最後だからいいかなって〜。田淵、アレを見せてくれヨ〜」

「発表します。COROZOの声の方、こちらです」と田淵アナがフリップを取り出すと、そこには声を録音している男性の写真が。目鼻口が「COROZOの声」という文字で隠されて表情はわからないが、頭頂部まで禿げ上がった額とその周りの金髪がハッキリわかる。この人物は……!

小堺「これ分からせてるじゃない!ま、僕としては発表してないってことにしますから」

COROZOは「ちょっと質問いいですか〜」と場の空気を読まずに発言し、ゲストとの話が噛み合わないキャラクターだった。誰かがCOROZOの動きにリアルタイムに声を合わせていたのではなく、音響さんが状況に応じてあらかじめ録音した音声を出していたとすれば、小堺=COROZO説も成立する。

『ごきげんよう』の白と黒の部分をそれぞれ担当していた小堺一機とCOROZOが実は同一人物……なのかは、本人が「発表してない」のでここまでにしておきますね。

「今日でいちおう、長〜いドッキリが終わります」


番組もエンディングに。スタジオの照明が落とされ、スポットライトに照らされながら「省エネでいま照明が落ちております」とひとボケ入れて、小堺さんの最後の挨拶がはじまる。

小堺「会場に来ているみなさんや、スタッフの皆さんに支えていただきまして、やってまいりました。ホントですね。息子がね、自分が『いただきます』を始めた歳より一つ、歳を取りました。はい。えー、かなり息子のほうが忙しくなっておりまして、早く潰さないとと思っております(笑)」

息子の小堺翔太は現在フリーアナウンサーとして活躍中。先日の『ごきげんようゴールデン』ではナレーションも務めていた。

小堺「今日はね、ここで何を言おうかと思っておりましたが、先程も言いましたように最初ドッキリだと思って始めたこの番組が31年も続きました。えー、今日でいちおう、長〜いドッキリが終わります。ドッキリが終わったあとはどうするかっていうと、怒るか、訴えるかになります(笑)」

31年半続いた番組の最終回。感動させよう・泣かせようという場面は無く、笑いと幸福に満ちた放送だった。締めの挨拶もいい話になりかけたところで笑いを乗せていくる小堺さん。「いい話でもちゃんとオチをつけろ」というのは大将の教えでもあり、小堺さん自身の照れ隠しでもあるように見えた。

小堺「あの、何が一番凄かったかというと、10年くらい過ぎてからは、いろんなところに行って「初めまして」って言わなくなりました。どの方にもお会いしてるんです。たまに「初めまして」って言ってお会いしてることがあって、怒られたこともあります」

これまでの放送回数は7847回。延べ出演者数は1万9千人以上だそう。

小堺「とにかくホントに充実した31年と半年、時間をいただきまして、ありがとうございました。今日はホントにみなさんありがとうございました!これからも頑張ります。よろしくお願いします」

照明が戻り、左右からキャノンで打ち出される金色のテープと紙吹雪。小堺さんは「ライオンちゃんありがとう〜!」と着ぐるみのライオンちゃんに駆け寄って両手でがっちりと握手。そうだった。小堺さんは1人じゃなかった……!ライオンちゃんもお疲れさま。

小堺さんの最後の言葉は「みなさんまた、ごきげんよう!」

画面右下には「ライオンのごきげんよう 完」のテロップ。小堺さん、31年半お疲れさまでした!
(井上マサキ イラスト/小西りえこ)

◆『ごきげんよう』を振り返る
「ごきげんようゴールデン」明石家さんまがサイコロに仕込んだ小堺一機の「弟子入り」
「ごきげんよう」ラスト3回。小堺一機が大将に「お前にピンの仕事来ない」と言われた理由