秘密結社ヤクザVS透明人間!山本英夫×池上遼一の怪作『アダムとイブ』の衝撃

写真拡大

凄いの出たなー。『アダムとイブ』1巻。
『殺し屋1』『ホムンクルス』の山本英夫の作に、『男組』『クライングフリーマン』の池上遼一が画だから、凄いものになるのは当然といえば当然だろうが、鬼才×鬼才の組み合わせは、沸点超えのバイオレンス×セクシー×奇想なマンガを産み出した。


ゴージャスなキャバレーで、目隠しをした女をはべらせる男たち。
舞台は、ほぼこの密室空間のみである。
中心人物はスメルという男。
「「暴力」というのは、対極にある「頭」を使うからこそエッジが立ってくるっていうかさ…
頭を使うからこそ暴力が冴えてくるし、なにより華やかさが出てくるでしょ。
華やかさってのは「美」だからね!」
暴力団の秘密結社というかヤクザ業界の裏コンサルティング集団なのだ。
これだけで、トンデモない状況設定だが、そこに襲撃をかけるのが「透明人間」なのである。

いきなり不可思議すぎる異常な状況にぶち込まれるのは読者だけじゃない。
秘密結社暴力団メンバーたちも、である。
泣き叫ぶ女の口をナイフで切り裂き、血をパンに塗って食べる男。
「うん! こうでもしないと、また泣き叫ぶあさはかな女……そんな味だ。血はウソはつかない」
人の血を飲むことですべてを悟る味覚異能者だ。
すごいヤツ出てきたなと期待していると、あっという間に、何が起こってるのか判らないまま殺されてしまう。
なにしろ相手は透明人間のカップル、姿が見えない。
その状況下で、スメル男は、こう言い放つ。
「何が起きても不思議じゃない。ファンタジーの領域だ」
冷静だな、おまえ!
ファンタジーの領域だと言われても不思議なリアリティを保つ池上遼一の画力。
「「味」は失ってしまいましたが、みなさんは“五感”に特化したスペシャリスト。まだ「視」「聴」「触」「嗅」が活きている。“透明”を捉えるには十分です」
なんと、凶暴な男たちは、五感のうちひとつが突出している異能者なのだ。
視・聴・嗅・味・触の5人。6人目もいる。そいつは第六感担当のようだ。

第1巻しょっぱなから、フルスロットル、渦中に放り込まれ、あれよあれよと翻弄される。
『アダムとイブ』、大怪作の傑作である。続刊をハヤク!
(米光一成)