妻の知らない夫の顔「あさが来た」134話

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朝ドラ「あさが来た」(NHK 月〜土 朝8時〜)3月8日(火)放送。第23週「大番頭のてのひら」第134話より。原案:古川智映子 脚本:大森美香 演出:新田真三


【134話はこんな話】
頭を打った雁助(山内圭哉)は病院のベッドで目を固くつむったまま起きる気配がない。懐かしい顔を見つめながら、うめ(友近)はそっと話しかける。

向田邦子ドラマのオマージュか?


最近ベッド(布団も含む)の場面が多い、「あさが来た」。
ドラマの中でも戦争景気が終わり、経済状況に不穏な気配を匂わせている。リアルな世界でも、最終回が近づいて、いろんな意味で余裕がなくなってきて、小さな部屋のセットを寝室や病室に飾りかえて撮影しちゃえ! という状況なのかと勝手な想像をしてみる(あくまで勝手な想像)。

ただ、感動したのは、ベッドの上で、目をつむったまま微動だにしない雁助こと山内圭哉。よくぞこんなに固まっていられるなあ。「石仏横たえたみたいな」と亀助(三宅弘城)の例えが言い得て妙。ぷぷぷ。
たぶん、こんなふうに固まったまま逝ってしまうのでは、山内が撮影に参加して寝ている意味がないだろうから、復活するのだろうと予測する。例え、このまま何もなく亡くなったとしても、なんて参加意識があるのだろうと好感度があがる。

息もしてないかのようにぴたりと止まったままの雁助の顔がちょっと険しくなった時、「怒って」見えるツネ(松永玲子)と「心配で動き出したい」ように見えるうめ。
「かいらしいとこひとつもなかった」と思い返すツネの話を、うんうんと聞いているうめは、内心、私は、猫ちゃんをかわいがるような大番頭はんのかいらしいとこ知っているという優越感を抱いているのだろうか。
いや、いくら大森美香が向田邦子賞をとっているからといって、向田ドラマの愛人と正妻が病床の男を見舞う「胡桃の部屋」のオマージュでもあるまい。なによりうめは心に毒なんかこれっぽっちも持ってない、とっても純粋な人間だと信じたい。
ただ、ドラマを見ている人たちにしかわからない事情をもった女ふたりの、言葉にならない奇妙な空気感は、ドキドキしていい。

今日の役立つ


寝たきりの人に、話しかけたり、手や足を揉んだりするのは効果的なようだ。何かのおりにはやってみたい。

今日の猫


榮三郎(桐山照史)が、亡き父・正吉(近藤正臣)を思い出している時、後ろに、お父さん代わりだったはずの招き猫が映っていて、その後も加野銀行の面々を見守っているかのように、ちらちらと映っていることに和んだ。
(木俣冬)

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