ご機嫌ななめさんの新次郎カワイイ「あさが来た」127話

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朝ドラ「あさが来た」(NHK 月〜土 朝8時〜)2月29日(月)放送。第21週「自慢の娘」第127話より。原案:古川智映子 脚本:大森美香 演出:鈴木航


127話はこんな話


千代(小芝風花)の縁談問題が白岡家の俎上に上がり、新次郎(玉木宏)が「ご機嫌ななめさん」になってしまう。

ちっちゃいことはいいことだ


6人目の演出家登板。鈴木航は、朝ドラ「梅ちゃん先生」、大河ドラマ「軍師勘兵衛」なども演出している人物だ。

「自慢の娘」というサブタイトルで、千代をフィーチャーしつつ、和歌山では菊(萬田久子)の加齢による衰えを描く。さらに、東京にいる今井家の父の調子が悪い話も、再度、語られて、世代交替という言葉が通奏低音のように静かに流れているようだった。

亀助の愉快なターンのモチーフ「椅子」も、「椅子取りゲーム」という言葉や「座につく」「座を退く」なんて言葉もあるだけに、登場人物の役割が徐々に移り変わっていくことの喩えのようにも思えるし、新次郎の加野屋でのポジション(まだ意外といろいろな役職についている)の説明にも使われていて、マルチタスク機能のようだった(タスクと打ったら佑と出てきた)。
さらに、あさや新次郎には、椅子の大小、多い少ない、善し悪しなんて関係ないという、彼らの人間としての器の大きさを描くことにまで力を発揮した。

人間的ちっちゃさを露呈してしまったのは、亀助(三宅弘城)だ。
「椅子の大きさが人の器の大きさに関わりあるわけやあらへんのやから」と言いつつあからさまに気にする。その気になる相手・平十郎(辻本茂雄)が給料日前になると藍之助(森下大地)を食事に誘う気遣いをしているというのに、亀助は自分のことしか考えていなくて、人間としての差が開くいっぽうではないか。
でもどんなにみみっちくても憎めないのが亀助。

ちっちゃいことは魅力的だ。
新次郎も、これまでずっとポーカーフェイスでスマートな粋人だったのに、娘のことに関してだけ素直に、ちっちゃさを剥き出す。逆に、いろいろなところを見せるようになって、実にいいキャラクターに熟成した感じがする。
千代がすっかり恋しちゃっているとは思いもよらず、まだ娘の縁談は先と、ほっとしているなんて、微笑ましいったらない。こんな時でも、雨が降るとは、意外と新次郎のジンクスもやっすいのだなあと思ったら、さらに笑えた。
(木俣冬)

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