「お坊さんも困ってる」Amazonお坊さん便の仕掛人が語る″ネットで僧侶″の必要性 - 土屋礼央の「じっくり聞くと」(第1回)
土屋:こんにちは、土屋礼央です。「ざっくり聞くと」というタイトルでやってきたこの連載。18回やっていくうちに「ざっくりもいいけど、馬鹿らしいぐらいにじっくりちゃんと文字にした記事があってもいいんじゃないか」と思うようになりました。そこで今回からは「じっくり聞くと」というタイトルに変えてお送りしていきます。

今日はそのリニューアル第1回として、昨年末、Amazon.co.jpで僧侶手配サービス『お坊さん便』の出品を開始し、大きな話題を呼んだ株式会社みんれびの取締役副社長・秋田将志さんにじっくりお話をうかがいます。よろしくお願いします。

秋田:よろしくお願いします。

◇賛否両論を巻き起こした「お坊さん便」


土屋:『お坊さん便』というのは、法事や法要などでお経を読んでもらいたい人のために、定額・追加料金なしで、好きな宗派のお坊さんを手配してくれるサービスだそうですが、どういうきっかけで始まったのですか。

秋田:当社は2009年からお葬式の見積もりをいくつか紹介し、その中から葬儀社を選んでいただくというサービスを行っているのですが、その際に「お坊さんを紹介してほしい」という要望が非常に多くありました。

その背景としてはお客様がお坊さんとのお付き合いがなくなってきているということもあって、「どこにどう頼んでいいかわからない」「お葬式は突然のことなので自分で手配するのが大変」という声が多くあったんです。

またお坊さん側からすると、宗教観が薄れてきたり、檀家さんがだんだん少なくなっていることを心配しているという声を耳にしました。我々はそういうところをどうにかしたい、インターネットを使ってなんとかできるんじゃないかと考え、そこからお客様とお坊さんをつなぐ役割を担いたいということで、2013年からこのサービスを開始しました。

土屋:『お坊さん便』をAmazonさんで販売するということを、僕もネットのニュースなどで見ました。賛否両論大きな話題を呼びましたが、こんなに注目されると思っていましたか。

秋田:予想以上ですね。ある程度は予想していましたし、少しでも認知が上がればと思っていたんですが、それをはるかに超える反響です。

土屋:申し込みの状況はどうですか?

秋田:『お坊さん便』に関しては、Amazonさんへの出品以降、非常に伸びています。また、150人以上のお坊さんから問い合わせをいただきました。

土屋:お坊さんからの問い合わせが多いのですね。

秋田:多いですね。

土屋:それはどうしてなのですか。

秋田:やはり、日本の「都市化・核家族化」と「宗教観」が薄れてきていることがあると思います。これまではたいてい、檀家制度でどこかのお寺と付き合いがあるという状況だったんですけど、それが薄れているというのが一番ですね。

土屋:僕もお寺とのお付き合いがないですし、いくら払うのかとか、いつ渡せばいいのかとかわからない。だからこのサービスに関して、うちの奥さんも周りも「よくぞやってくれた」という意見ばかりなんです。”こりゃすげえな”と思っている中、仏教界の方からはいろいろクレームがあるというのもニュースになっていますが、それは想定していたことですか。

秋田:もともと取り組まれてきた背景がありますから、新しいことをやろうとする時には必ず賛否両論出るものだとは思っています。

その中で大事なのは、時代が変わっていって、いまお客様が困っている状況が一番の問題だということ。お坊さんとのお付き合いがないけれど、なんとか故人を供養したいと思っているということです。なおかつお坊さん側も新しいお客様との接点が持てなくて困っているという状況があるので、まずは、そこを解決していきたい。

人の価値観や時代の状況は変わってきていますから、そのニーズに合わせて順応していくというのは必要なことですし、我々としては時代に求められるようなサービスを提供することを目的としてやっています。

土屋:批判される方は、「読経に値段をつけるんじゃねえ」みたいなことを言うじゃないですか。それはどうなんでしょう。

秋田:お客様からの声としてもっとも多いのが「いくら払っていいかわからない」「お坊さんには聞けなくて困っている」という悩みです。そういったお客様の悩みを解決するために、全国のお坊さんにヒアリングをした上で、価格を設定しました。

◇お坊さんとの接点を作る「お坊さん便」


土屋:サービス自体は、2013年からやっているということですが、みんれびさんというのは、お葬式の会社なんですか。

秋田:会社名は「みんなのレビュー」から「みんれび」になりました。設立時はレビューサイトでして、口コミや評判を集めてそのリアルな情報をインターネット上のポータルサイトとして運用し、それを見たお客様が各取引先に依頼するというものを作りたかったんです。現在は、葬儀プランの比較サービスや定額のお葬式プラン「シンプルなお葬式」を運営しています。

土屋:元からこういう「お坊さん」という発想はあったんですか。

秋田:最初はお坊さんを手配するという発想はなかったですね。ただ、お葬式に関しては当初から事業を拡大していくイメージはありました。自分が喪主として経験することになるのは一般的に人生のうちで2回くらいだと言われていて(両親)、そのときに適切な方法や決め方ができるかというと、なかなか冷静な判断が難しいんですね。

そこを、我々がヘルプすることができるんじゃないかということでスタートしました。我々は事業開始当初、葬儀業界の経験は全くなかったので、あくまでそういうところにニーズがあるんじゃないかという仮説でした。でも、実際に進めてお客様の声を聞いていくうちにやはりニーズがあるとわかり、葬儀事業の展開を拡大していきました。

土屋:『お坊さん便』の立ち上げは?

秋田:各宗派のお坊さんに、「すごく困ってらっしゃる方がいるので対応していただけませんか」というような相談をすることから始めました。