【インタビュー】菜々緒「悪女を演じるのは、楽しくてしょうがないです(笑)」
ドラマ「ファースト・クラス」や「サイレーン 刑事×彼女×完全悪女」、映画「グラスホッパー」など、ここ数年ですっかり“悪女”キャラを確立した菜々緒さん。2016年最初の公開映画であり、大人気シリーズの最終章となる「さらば あぶない刑事」では、打って変わって舘ひろしさん演じる“タカ”こと鷹山の恋人・夏海役で、バリバリのキャリアウーマンにして正統派の美女を演じています。伝説のシリーズの完結編に身を投じる重圧、舘さんとの共演、ここ数年の女優としての活躍についてなど、たっぷりと話を伺いました。
――1986年に最初のTVドラマが放送された歴史ある人気シリーズの完結編です。30年にわたるタカ(舘ひろし)とユージ(柴田恭兵)のコンビの最後の5日間の物語に参加することが決まったときの心境は?
菜々緒:率直に言って「なんで私?私でいいのかな?」という思いが浮かんできました。私が生まれる前から存在する大作で、もしかして、今年の運を全部使い果たしてしまうんじゃないか?というくらいのありがたい機会ですし、大御所のみなさんと共演させていただくことは貴重な経験になると思い、すべてを出し切って作品の一部になれたらという気持ちでした。
――プレッシャーも相当あったのでは?
菜々緒:ずっと一緒にやってきて、完璧にチームワークができあがっている空間に踏み込んでいく勇気が必要でした。舘さんと柴田さんがふざけ合っている真ん中に入って会話するシーンは「入れた!」という実感が一番わいて、すごく嬉しかったです。
――基本的に舘さんとの芝居が多かったかと思いますが、共演されて、舘さんと接してみて印象はいかがでしたか?
菜々緒:実は、まだ芸能界でお仕事を始める前の大学生のときに、知り合いに招待されて、すごい大人数で海に遊びに行ったことがあるんですが、その中に偶然、舘さんもいらっしゃったんです。ちゃんとご挨拶はさせていただいていないんですが…。
――今回の共演よりもずっと以前に、偶然お会いしたことがあったんですね。
菜々緒:こちらが委縮していると、気を遣って舘さんの方から「お嬢さん」と話しかけてくださって(笑)。こんなにナチュラルに「お嬢さん」と声を掛けられる人は日本にはほとんどいないなぁって…。すごく紳士的なんですけど、海に入ってはしゃいでいる姿も見かけて(笑)、こういう方が多くの人に愛される俳優さんなんだなと思いました。
――そして今回、共演者、しかも恋人という設定で久々にお会いして…
菜々緒:今回お会いしたときもまったく変わっておらず素敵な方でした。舘さんとご一緒させていただいたレストランでのシーンで、ふと「お嬢さん」という声が聞こえたんです!それは、舘さんがウェイトレス役のエキストラの女性に、録音用のマイクが見えているのを教えてあげるために掛けた声だったんですが、学生時代の思い出が蘇りました。スタッフさんが気づいていないところまで目が届くところもさすがだし、いまでも「お嬢さん」って言うんだなぁって(笑)。
――タカとユージのコンビであったり、激しいアクションなど、男性の支持が高い「あぶない刑事」シリーズですが、女性が楽しめるポイントや魅力はどんなところにあると思いますか?
菜々緒:私自身、夏海を演じていて大人の男性とのラブストーリーにドキドキしました。「若い子が(恋愛映画で)キュンキュンするなら、こっちはドキドキさせてやるぞ!」って感じですね(笑)。男性が仕事に熱中している姿もそうだし、タカとダンスをしながら夏海が「何で私を選んだの?」と聞いたら「ダンスがうまいからさ」って言うところとか!
――“男子”には出せない、大人の男の言葉ですね(笑)。
菜々緒:(ため息まじりに、うっとりと)はぁー…ってなります(笑)。いまの若い子だと、そう尋ねられて「優しい」とか「料理が上手で」とか言いそうだけど。大人の色気というか、年齢を重ねてこそ出てくるものがすごく感じられます。甘酸っぱいキラキラした青春や恋愛もいいけど、男くさいところにグッときちゃいます。アクションでも、いまは(刑事も)シートベルト締めなくちゃっていう時代に、両手を離してバイクに乗って銃をぶっ放して暴れる…そんな映画なかなかない(笑)。
――30年前は激しくやっていたのに、いつのまにかみんな、規制してやらなくなってしまったことをこの映画では変わらずにやっていますね。
菜々緒:好きなだけ暴れ回ってます。縛りや規則が多いこの時代に、そんなものを全て取っ払ってる。もしかしたらそんな映画、これが最後かもしれない。女子の私が見ても、そういうところはすごく楽しく魅力的だと感じます。
――だからこそ、これで終わりというのは寂しいですね。あの2人に定年があるなんて信じられないし、まだまだ暴れてほしい気持ちも…。
菜々緒:私は長いシリーズの中でほんの一瞬しか出てないですが、もちろん寂しいですし、終わってほしくない気持ちもあります。でも、物足りないくらいが一番いい気もするんです。去り際を知っているというところもまた、すごくかっこいいなと感じます。
――作品から少し離れて、菜々緒さんご自身のことも伺います。最近の作品での悪女っぷりが堂に入っており、称賛の声も多くあがっていますが、女優として歩み始めてここまでの約5年のキャリアを振り返っていかがですか?
菜々緒:最初に本格的にお芝居をさせていただいたときは、ずっと泣いている役(『主に泣いてます』)だったんですけど…(笑)。そこから先はずっと悪女をやっていたようなインパクトが残って、この『あぶ刑事』でやっと…という感じはしますね。最初はヘタだったし、イヤな感じの役だったこともあって否定的な声もたくさんありましたね。
――モデル出身というだけの偏見で「演技力がない」というレッテルを貼られやすいところもあると思います。
菜々緒:普通に女優さんがお芝居してますというのと、モデル上がりがお芝居してるという2人がいたら、絶対に後者の方がヘタだろうと思って見るのが人間だし、それもしょうがないと思います。それはそれで試練だと思っていたし、ハードル高いほど伸びしろも大きくなる。なので、モデルから女優というきっかけは、私にとっては良かったんじゃないかと受け止めています。
――批判や逆境をバネにして成長の糧としたんですね。
菜々緒:SNSで届く声もそうで、私のことを好きでフォローしてくださる方が「よかった」「次も頑張って」と言ってくださるのはすごくありがたいんですが、一方で、悪いところを指摘する声もあるし、そういう意見も逆にすごく大事にしています。私のことを嫌いな人こそ、ちゃんと私を見ているところもあって、私を心底嫌いなアンチの方が、細かいところまで逃さずに目をつけて指摘してくる(笑)。そういう声も含め、全てを見るようにしています。
――女優の仕事は楽しいですか?
菜々緒:楽しいですね。悪女を演じるのは、楽しくてしょうがないです(笑)。いまや、自分の名刺代わりのようなもので、大事にしています。まさかこんなに立て続けに悪女が来るとは思ってなかったし、自分で思い描いていた以上に「菜々緒が悪女やるなら最初の1回はまず見てみようかな」と期待して楽しみにしていただけて、予想もしてなかったことだけど嬉しいです。
――20代の後半に差し掛かって、仕事に対する意識、スタンスとして大切にしていることは?
菜々緒:まず自分が楽しんでやっているか? やりたいと思ってやっているかですね。
――それは作品選びとか役柄という意味ではなく…
菜々緒:選ぶというより、全ての仕事に対するスタンスですね。もし仮に、苦手なことやあまりやりたいと思えない仕事だったとしても、どうやったら楽しめるか?どうしたらみなさんに興味を持っていただけるかを考えて、探し出す。それが楽しみでもあったりします。
『大人にならないと分からない、未知のものがある』
――まさに映画の中のタカとユージも仕事を楽しんでますよね。彼らも作品を通じて少しずつ歳月を重ね、ここまで来たわけですが、菜々緒さん自身、年齢を重ねるということにどんなビジョンをお持ちですか?
菜々緒:最近は、誕生日を祝ってもらっても「もうめでたくないよ!」なんて言ってますけど(苦笑)、やっぱり、歳月を重ねて培われていくもの、経験から得られるものって大きいと思うんです。若さは若さで輝かしくてよいものですけど、歳を刻んで大人にならないと分からないこと、未知のものがあると思うと楽しみですね。
――恋に落ちた理由を問われて「ダンスがうまいからさ」と返したり?
菜々緒:そうそう!そういう感覚、豊富な言葉の引き出しが持てる大人の女性になりたいです(笑)。
――最後にPeachyには「ごきげん、ハッピー」といった意味があるのですが、忙しい日々の中で、菜々緒さんのごきげんの源は?
菜々緒:SNSのコメントが多いと「見てくれてるんだ!」と嬉しくなります。ひとつひとつ、じっくりと読んでるし、みなさんの声を聞けるのはすごくありがたいです。
『さらば あぶない刑事』は1月30日(土)全国ロードショー。
公式サイト:http://www.abu-deka.com/
撮影:倉橋マキ
取材・文:黒豆直樹
制作・編集:iD inc.
『「あぶない刑事」の空間に踏み込んでいく勇気が必要でした』
――1986年に最初のTVドラマが放送された歴史ある人気シリーズの完結編です。30年にわたるタカ(舘ひろし)とユージ(柴田恭兵)のコンビの最後の5日間の物語に参加することが決まったときの心境は?
菜々緒:率直に言って「なんで私?私でいいのかな?」という思いが浮かんできました。私が生まれる前から存在する大作で、もしかして、今年の運を全部使い果たしてしまうんじゃないか?というくらいのありがたい機会ですし、大御所のみなさんと共演させていただくことは貴重な経験になると思い、すべてを出し切って作品の一部になれたらという気持ちでした。
――プレッシャーも相当あったのでは?
菜々緒:ずっと一緒にやってきて、完璧にチームワークができあがっている空間に踏み込んでいく勇気が必要でした。舘さんと柴田さんがふざけ合っている真ん中に入って会話するシーンは「入れた!」という実感が一番わいて、すごく嬉しかったです。
『舘さんの方から「お嬢さん」と話しかけてくださって(笑)』
――基本的に舘さんとの芝居が多かったかと思いますが、共演されて、舘さんと接してみて印象はいかがでしたか?
菜々緒:実は、まだ芸能界でお仕事を始める前の大学生のときに、知り合いに招待されて、すごい大人数で海に遊びに行ったことがあるんですが、その中に偶然、舘さんもいらっしゃったんです。ちゃんとご挨拶はさせていただいていないんですが…。
――今回の共演よりもずっと以前に、偶然お会いしたことがあったんですね。
菜々緒:こちらが委縮していると、気を遣って舘さんの方から「お嬢さん」と話しかけてくださって(笑)。こんなにナチュラルに「お嬢さん」と声を掛けられる人は日本にはほとんどいないなぁって…。すごく紳士的なんですけど、海に入ってはしゃいでいる姿も見かけて(笑)、こういう方が多くの人に愛される俳優さんなんだなと思いました。
――そして今回、共演者、しかも恋人という設定で久々にお会いして…
菜々緒:今回お会いしたときもまったく変わっておらず素敵な方でした。舘さんとご一緒させていただいたレストランでのシーンで、ふと「お嬢さん」という声が聞こえたんです!それは、舘さんがウェイトレス役のエキストラの女性に、録音用のマイクが見えているのを教えてあげるために掛けた声だったんですが、学生時代の思い出が蘇りました。スタッフさんが気づいていないところまで目が届くところもさすがだし、いまでも「お嬢さん」って言うんだなぁって(笑)。
『大人の男性とのラブストーリーにドキドキしました』
――タカとユージのコンビであったり、激しいアクションなど、男性の支持が高い「あぶない刑事」シリーズですが、女性が楽しめるポイントや魅力はどんなところにあると思いますか?
菜々緒:私自身、夏海を演じていて大人の男性とのラブストーリーにドキドキしました。「若い子が(恋愛映画で)キュンキュンするなら、こっちはドキドキさせてやるぞ!」って感じですね(笑)。男性が仕事に熱中している姿もそうだし、タカとダンスをしながら夏海が「何で私を選んだの?」と聞いたら「ダンスがうまいからさ」って言うところとか!
――“男子”には出せない、大人の男の言葉ですね(笑)。
菜々緒:(ため息まじりに、うっとりと)はぁー…ってなります(笑)。いまの若い子だと、そう尋ねられて「優しい」とか「料理が上手で」とか言いそうだけど。大人の色気というか、年齢を重ねてこそ出てくるものがすごく感じられます。甘酸っぱいキラキラした青春や恋愛もいいけど、男くさいところにグッときちゃいます。アクションでも、いまは(刑事も)シートベルト締めなくちゃっていう時代に、両手を離してバイクに乗って銃をぶっ放して暴れる…そんな映画なかなかない(笑)。
――30年前は激しくやっていたのに、いつのまにかみんな、規制してやらなくなってしまったことをこの映画では変わらずにやっていますね。
菜々緒:好きなだけ暴れ回ってます。縛りや規則が多いこの時代に、そんなものを全て取っ払ってる。もしかしたらそんな映画、これが最後かもしれない。女子の私が見ても、そういうところはすごく楽しく魅力的だと感じます。
――だからこそ、これで終わりというのは寂しいですね。あの2人に定年があるなんて信じられないし、まだまだ暴れてほしい気持ちも…。
菜々緒:私は長いシリーズの中でほんの一瞬しか出てないですが、もちろん寂しいですし、終わってほしくない気持ちもあります。でも、物足りないくらいが一番いい気もするんです。去り際を知っているというところもまた、すごくかっこいいなと感じます。
『私のことを嫌いな人こそ、ちゃんと私を見ているところもある』
――作品から少し離れて、菜々緒さんご自身のことも伺います。最近の作品での悪女っぷりが堂に入っており、称賛の声も多くあがっていますが、女優として歩み始めてここまでの約5年のキャリアを振り返っていかがですか?
菜々緒:最初に本格的にお芝居をさせていただいたときは、ずっと泣いている役(『主に泣いてます』)だったんですけど…(笑)。そこから先はずっと悪女をやっていたようなインパクトが残って、この『あぶ刑事』でやっと…という感じはしますね。最初はヘタだったし、イヤな感じの役だったこともあって否定的な声もたくさんありましたね。
――モデル出身というだけの偏見で「演技力がない」というレッテルを貼られやすいところもあると思います。
菜々緒:普通に女優さんがお芝居してますというのと、モデル上がりがお芝居してるという2人がいたら、絶対に後者の方がヘタだろうと思って見るのが人間だし、それもしょうがないと思います。それはそれで試練だと思っていたし、ハードル高いほど伸びしろも大きくなる。なので、モデルから女優というきっかけは、私にとっては良かったんじゃないかと受け止めています。
――批判や逆境をバネにして成長の糧としたんですね。
菜々緒:SNSで届く声もそうで、私のことを好きでフォローしてくださる方が「よかった」「次も頑張って」と言ってくださるのはすごくありがたいんですが、一方で、悪いところを指摘する声もあるし、そういう意見も逆にすごく大事にしています。私のことを嫌いな人こそ、ちゃんと私を見ているところもあって、私を心底嫌いなアンチの方が、細かいところまで逃さずに目をつけて指摘してくる(笑)。そういう声も含め、全てを見るようにしています。
『悪女を演じるのは、楽しくてしょうがないです(笑)』
――女優の仕事は楽しいですか?
菜々緒:楽しいですね。悪女を演じるのは、楽しくてしょうがないです(笑)。いまや、自分の名刺代わりのようなもので、大事にしています。まさかこんなに立て続けに悪女が来るとは思ってなかったし、自分で思い描いていた以上に「菜々緒が悪女やるなら最初の1回はまず見てみようかな」と期待して楽しみにしていただけて、予想もしてなかったことだけど嬉しいです。
――20代の後半に差し掛かって、仕事に対する意識、スタンスとして大切にしていることは?
菜々緒:まず自分が楽しんでやっているか? やりたいと思ってやっているかですね。
――それは作品選びとか役柄という意味ではなく…
菜々緒:選ぶというより、全ての仕事に対するスタンスですね。もし仮に、苦手なことやあまりやりたいと思えない仕事だったとしても、どうやったら楽しめるか?どうしたらみなさんに興味を持っていただけるかを考えて、探し出す。それが楽しみでもあったりします。
『大人にならないと分からない、未知のものがある』
――まさに映画の中のタカとユージも仕事を楽しんでますよね。彼らも作品を通じて少しずつ歳月を重ね、ここまで来たわけですが、菜々緒さん自身、年齢を重ねるということにどんなビジョンをお持ちですか?
菜々緒:最近は、誕生日を祝ってもらっても「もうめでたくないよ!」なんて言ってますけど(苦笑)、やっぱり、歳月を重ねて培われていくもの、経験から得られるものって大きいと思うんです。若さは若さで輝かしくてよいものですけど、歳を刻んで大人にならないと分からないこと、未知のものがあると思うと楽しみですね。
――恋に落ちた理由を問われて「ダンスがうまいからさ」と返したり?
菜々緒:そうそう!そういう感覚、豊富な言葉の引き出しが持てる大人の女性になりたいです(笑)。
――最後にPeachyには「ごきげん、ハッピー」といった意味があるのですが、忙しい日々の中で、菜々緒さんのごきげんの源は?
菜々緒:SNSのコメントが多いと「見てくれてるんだ!」と嬉しくなります。ひとつひとつ、じっくりと読んでるし、みなさんの声を聞けるのはすごくありがたいです。
『さらば あぶない刑事』は1月30日(土)全国ロードショー。
公式サイト:http://www.abu-deka.com/
撮影:倉橋マキ
取材・文:黒豆直樹
制作・編集:iD inc.