2015年11月30日
TEXT:小川 浩(シリアルアントレプレナー)

iOS上でコンピューターウィルスが検出され、Apple製品に対する従来の安全神話が揺らいでいるという。

Windowsユーザーと比べて、Macユーザーはコンピューターウィルスへの備えが甘いと言われるが、それは実際MacやiOSデバイスでウィルスソフトが問題視されることが滅多になかったからだ。僕は15年以上前からのMacユーザーであり、スマホは当然iPhoneだし、タブレットもあまり使ってはいないとはいえiPadを所有している。しかし、これまで一度もウィルス検出系ソフトをそれらの機器にダウンロードしたことがない。

今回話題になっているウィルスは、iOS上のアプリの中に潜む形で発見されている。iOSアプリはAppleの管理下にあるAppStore経由でダウンロードする以外に入手できず、インストールすることはできないから、安全だと思われてきた。

だが、今回実際にウィルスに感染した事例が発見された。その経路は、おそらくはまずウィルスに感染したMac(デスクトップないしノートブック)に有線、つまりケーブルで接続することで、iPhoneやiPadにもウィルスが感染する、というものだ。

また、iOSアプリの開発環境であるXCodeの偽物が中国で開発され、それが出回ったおかげで、その偽XCodeで開発されたアプリにウィルスが混入する、という身も蓋もない状況も確認されている。さすがにiOSそのものを開発できる環境はApple以外にはないから、アプリをダウンロードしなければ、この経路での侵入はないが、中国最大のメッセージングアプリであるWeChatがこの経路でウィルスに侵されていたという話もあって、話はそう簡単なことではなくなっている。

これらを防ぐためには、iPhoneやiPadのデータやアプリの同期を、ワイヤレスで行うことと、出元の怪しいアプリ、特に中国製のアプリをダウンロードしないことくらいしか、今のところ有効な手はない。あとはAppleによるセキュリテイ監視のさらなる徹底と、中国で出回っている偽XCodeの摘発に勤しんでもらうことを期待するだけだ。

とはいえ、ならばAndroidデバイスに乗り換えるか? と言われれば、それは僕にはありえない。というよりも、より監視体制が緩く、新旧のOSのバージョンが入り乱れているAndroidの環境の方がはるかにウィルス感染のリスクが高い。

つまり、こうしてiOSへのウィルス問題が話題になるというほうが、かえってiOSデバイスの安全性が比較論として証明されているようなものである。逆に慌てていたずらに対策を講じようとしても、ウィルス検知ソフト開発業者を潤わせるだけだ。

iOSのウィルス感染問題は、新型インフルエンザ発生のニュースのようなものであり、手洗いやうがいを徹底するように、余計なアプリはダウンロードしない、出どころのわからないメールは開かない、などの古典的な対処法を淡々とルーティンにしていくことを考えるべきである。


iOS 9

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[筆者プロフィール]
おがわ・ひろ●シリアルアントレプレナー。著書に『ビジネスブログブック』シリーズ(毎日コミュニケーションズ)、『Web2.0BOOK』(インプレス)、『仕事で使える!「Twitter」超入門』(青春出版社)、『ソーシャルメディアマーケティング』(ソフトバンククリエイティブ/共著)などがある。
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