2016年2月中に開通する見通しの新東名・浜松いなさJCT〜豊田東JCT間(画像出典:NEXCO中日本)。

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新東名高速道路が2016年2月、愛知県内へ延伸。利便性が増しますが、問題は東京側です。未開通の御殿場JCTから東には、「むしろ開通しないほうが……」とすら思える懸念があります。

新東名は戦艦「大和」並みのムダ?

 先日伝えられたように、新東名高速道路の浜松いなさJCT〜豊田東JCT間およそ55kmが、2016年2月中に開通する見通しとなりました。

 これによって、東名高速の岡崎IC付近を先頭に上下線で恒常的に発生している自然渋滞は、ほぼ解消されるはずです。

 今回の開通見通しについて、マスコミ各社の報道は歓迎一色ですが、それについては実に隔世の感があります。10年あまり前に道路公団民営化が議論されていた当時、新東名は“戦艦「大和」並みのムダ”と総攻撃を食らっていたのですから。

 私(清水草一)は当時、建設予定路線沿いを走って自ら確かめたうえで、「東名・名神はパンク状態であり、ここまで造ったからには建設続行が合理的」と主張しましたが、そんな声に耳を傾ける人はおらず、「高速道路建設は悪」の大合唱でした。

 確かに10年前までは、談合事件も起きるなど道路公団は非効率的な建設手法を採っていました。その債務は年々膨らんで40兆円近くに達しており、いずれ“第二の国鉄”になるのは確実といわれていました。

 しかし現在は、道路公団の民営化によって劇的なコストダウンが図られ、NEXCO各社は毎年順調に債務を返済しつつ(合計債務残高は29兆円に減少)黒字経営を達成しています。当時、道路公団民営化に対して「骨抜き」「大失敗」との烙印を押し、新東名・新名神の建設続行を「裏切り」「ムダ」と一刀両断していた大新聞は、自らの見識のなさを真摯に反省していただきたいものです。

御殿場JCTから東京側はどうなる?

 浜松いなさJCT〜豊田東JCT間の開通により、新東名の御殿場JCTから西はすべて完成。東京〜名古屋間は、心理的に非常に近くなります。建設費は6190億円(予算額)となっています。

 では、御殿場JCTから東側はどうなっているのでしょう。高速道路保有機構とNEXCOとの協定によると、次のように予定されています。

・2017年3月31日まで 海老名南JCT-厚木南IC(約2km) 建設予算:1212億円
・2019年3月31日まで 厚木南IC-伊勢原北IC(約6km) 建設予算:2747億円
・2021年3月31日まで 伊勢原北IC-御殿場JCT(約46km) 建設予算:8497億円

 圏央道に接続する海老名南JCTから御殿場JCTまで全線が開通するのは、現在から約5年後の予定です。

 ただ、海老名南JCTから東京寄りについては、依然として構想段階で、具体的なルートも何も決まっていません。もはや「建設は不可能」と考えるべきでしょう。

御殿場JCTから東京側は開通しないほうが良い?

 となると、新東名が海老名南JCTから御殿場JCTまで開通する2021年以降に心配されるのは、伊勢原JCTおよび海老名南JCT、そして海老名JCTでの交通の交錯です。

 新東名は伊勢原JCTで東名と交差し、海老名南JCTで終点となるわけですが、大和トンネル付近を先頭にした東名の上り渋滞が海老名JCT以西に伸びると、それを回避しようとするクルマがまちまちなルートを取り、JCTの合流でさらに渋滞を悪化させる懸念があるのです。

 恒常的に渋滞している東名・大和トンネル付近は、遠くない将来付加車線が設置されて渋滞は緩和されると思われますが、マシになる程度であり、完全に解消されることはないでしょう。

 東名上り線の渋滞ピーク時には、まず伊勢原JCTの合流で混乱が発生し、それを避けるクルマが新東名で海老名南JCTまで抜ける結果、海老名JCTでもう一度合流による大混乱が起きる……。そんな悪夢も頭をよぎります。

 新東名の名古屋側には、伊勢湾岸道という巨大な受け皿がありますが、東京側は結局、東名に合流するしかありません。新東名の海老名南JCT〜御殿場JCT間は「ひょっとして開通しないほうがスムーズなのではないか?」、そんな懸念さえ抱いています。

 海老名南JCT〜御殿場JCT間の建設費1兆2456億円をより意味ある投資とするために、どんな手が打てるのか。いまこそ国交省を始めとする関係諸機関は、真剣に再考する必要があると思います。