村田充が明かす役作りへのこだわり「ギリギリまでいろんな可能性をつぶしたくない」
日本文学を朗読と演劇で魅せる新感覚朗読演劇『極上文學』シリーズも、いよいよ第9弾。『高瀬舟・山椒大夫』の公演が10月9日からスタートします。9月某日、都内で行われたパンフレットの撮影現場に潜入。いま大注目の役者・村田充へのインタビューを、貴重な撮り下ろし&メイキングカットとともにお届けします!

撮影/すずき大すけ 取材・文/渡邉千智(スタジオ・ハードデラックス)


台本から感じ取るイメージを大切に



――『極上文學』シリーズへのご出演は、2014年12月公演の『走れメロス』以来2回目ですね。ご出演が決まったときのお気持ちは?

前回参加したときのいい印象が強くて、出演のオファーが来たとき、すぐに「やります!」と返事をした記憶があります。

――今回は森鴎外の『高瀬舟』と『山椒大夫』ですが、お読みになったことはありますか?

昔読んだ気がするんですけど、ふんわりと覚えている程度で…。

――あまり文学作品はお読みにならない?

台本より小さい文字を追うのがちょっと…苦手なんです(笑)。文学に限らず、小説を読むのがあまり得意じゃないので、映画を観て育ってきました。

――前回の『走れメロス』のときは、どうされました?

中学生くらいに読んだことがあるな…くらいの印象のまま、稽古に入りました。読み直さずに芝居をしてみたら、それが意外と自分の中でフィットしたというか。先入観なく入ることができてよかったのかなと。

――台本のイメージを優先して、というような。

僕が演じたセリヌンティウスは、台本と原作のイメージとが少し違うところがあって。先入観を持たずにやれたので、そこを恐れずに変えることができたと思います。

――では、今回も原作を読まずにフラットな姿勢で稽古にも臨もうと。

でも、読んできてねって言われたら「はい、読んでいきます!」って、謙虚な心は忘れずにいます(笑)。

――『高瀬舟』では喜助役をどのように演じようと思っていますか?

朗読であり演劇でもあるんですが、実際に本を持って立ち回りますし、やっぱり聴かせることが重要だと思っています。見に来てくださるみなさんに、僕から発する言葉で、京都から大阪に向かう川や舟の上の様子、夜空などの情景を共有してもらえたらいいなと。

――では『山椒大夫』のほうはいかがでしょう? タイトルになっていますが、山椒大夫はあまり登場しないですよね。

そうなんです。でも、山椒大夫の役は難しいなと思っていて。「ふはははははは!」って悪役特有の笑い方があって、今のところできる気がしない…(笑)。

――多くの悪役をこなしてきた村田さんでも難しいと。

『走れメロス』のときに同じセリヌンティウス役を演じた萩野崇先輩…僕は兄さんと呼んでいるのですが、兄さんに相談しています。今は兄さんとデーモン小暮閣下を研究しているところです(笑)。




本を持つ指先まで意識して



――『極上文學』シリーズは、演劇と朗読の両面を持っていて、とても特殊な舞台ですよね。

朗読劇にしてはすごく動くし、段取りも多くて難しいです。声芝居だけでいろんなものを伝える技術はまだまだ足りないと思っているので、前回参加したときは、普段あまり感じない緊張感を覚えました。

――『極上文學』だから意識するポイントというのはありますか?

表情も大事ですし、本を持っていないほうの手でどう演技するかも重要かなと思っています。エアーの動きでお客さんに想像してもらえることもあるので、その辺りは上手く計算したいですね。

――本を持っていない側の手はもちろん、本を持っている手も上手く使っているなと思いました。

でも、シーンによって何か所か「本、邪魔だっ!」って思うときがありますよ(笑)。

――そうなんですか?(笑)

『走れメロス』の稽古中に兄さんとも話していたんですが、本を持っている手もお芝居に使いたいなと思うシーンがいくつかあって(笑)。でも『極上文學』ならではのその縛りが、逆に心地よかった部分でもあります。

――ちなみに、本を持ってのお芝居ではありますが、セリフはすべて覚えられているのでしょうか?

朗読劇と謳っているのでちゃんと朗読したいなと思って、演出上、本を持てないシーンは覚えましたが、それ以外は覚えなかったです。

――本を持ちながらお芝居する難しさはどんなところでしょうか?

伏し目がちになるので、視線を上げたときのキメどころをどう見せるかは考えます。あとは本を持つ指先の見え方を意識したり、照明の関係で、顔が暗くならないような位置で持つようにしたり、とか。

――なるほど、細部まで神経を張り巡らせているんですね。では、舞台を楽しみにしているファンの方へメッセージをお願いします。

前回から1年経ってまたキャスティングしてもらえたということは、前回がダメじゃなかったんだなということなので(笑)、そのあたりは自信を持って、自分なりのキャラクターを作りたいと思います。観に来てくださるみなさんを失望させないように頑張ります。

▼メイキングカット