写真提供:マイナビニュース

写真拡大

●「ヘルシオ」に"煮込み"のジャンル
シャープは9月17日、水を使わず煮込みを行う"無水調理"が可能な調理器具「ヘルシオ ホットクック KN-HT99A」(以下、ホットクック)を発表した。発売は11月5日。価格はオープンで、推定市場価格は税別60,000円前後だ。

ホットクックは、内ブタに円錐形の突起「旨みドリップ加工」を施し、食材から発生した蒸気を水滴にして鍋の中に循環させ、無水調理を行う。本体内側上部に備える「蒸気センサー」と底面の「温度センサー」により、鍋の中身の状態を検知。最適な火加減に調節し、焦げ付きやすく火力調整が難しい無水調理を自動で行うことを実現している。

本体内側には、具材をかき混ぜるための「まぜ技ユニット」を搭載。「負荷センサー」で得た情報も加味して、メニューや食材の量・加熱状態に応じて最適なタイミングと回転速度でかく拌する。

たとえば肉じゃがの場合、表面には火が入っているものの、まだ食材が硬いという時点では、回転速度を上げてしっかり混ぜる。これにより、食材に味がなじむのを促進。全体的に火が通って煮崩れしやすくなってくると、回転速度を落としてゆっくりと優しく混ぜる。これにより、煮崩れさせずにじっくりと味をしみ込ませることが可能だ。

メニューは、自動調理で85種類、手動で15種類の計100種類を用意。自動調理メニューでは、食材をセットしてメニューを設定しておけば、あとはホットクックが食材の分量や加熱状態を見きわめ、自動で料理を仕上げてくれる。

食材をセットしておけば、設定した時間に料理を仕上げてくれる「食べごろ予約調理」を搭載。設定した時間に仕上がるよう調理をスタートするが、食材の腐敗を防ぐ温度帯を保つのが特徴だ。食品が最も傷みやすい温度帯が40℃であることから、食材をセットしたらいったん100℃まで加熱して火を通す。火を通した後は、腐敗しやすい温度帯を避けながら温度を下げて味を浸み込ませ、70℃前後をキープ。予約設定した時間に合わせて再び仕上げの加熱を行う。最大12時間後までの予約に対応する。

本体の外形寸法はW364×D280×H224mmで、質量は約5.2kg。定格容量は1.6L。定格消費電力は600W。

●無水調理のメリットとは
○「ヘルシオ」第5のカテゴリー

新製品発表と同日に、シャープは製品発表会を開催。シャープ 執行役員 健康・環境システム事業本部長の沖津雅浩氏は、前回の東京オリンピックが開催された1964年から次回の2020年までの間に、日本人の平均寿命が男女ともに13歳以上伸びたことを挙げ、「日本は、健康寿命(※)でも男女ともに世界1位だが、平均寿命との差を考えると、10年以上"不健康"な状態で生活をしていることになる。健康寿命を延ばすためにはQOL(生活の質)の向上が不可欠であり、特に食は重要な位置を占める」と指摘した。※ 健康寿命:健康上の問題がなく、自立した生活ができる期間のこと。

ホットクックは、「健康な食生活のサポート」を掲げる、シャープの「ヘルシオ」シリーズ5番目のカテゴリーにあたる製品だ。沖津氏によると、日本人に不足気味な野菜の摂取量を増やすことも、ホットクック開発の意図に含まれる。

シャープ 健康・環境システム事業本部 調理システム事業部 副事業部長の田村友樹氏によると、電気無水鍋の場合、水を加えずに調理するため、ビタミンCなど水に溶け出しやすい栄養素の流出を抑えられるという。たとえば、大根1本あたりに含まれるビタミンCは通常の鍋に比べて約1.5倍、ホウレンソウに含まれる葉酸は約1.8倍多く残存することが、日本食品分析センターの調査で明らかになっている。

また、野菜を効率よく摂取できるのも無水調理の特徴だ。発表会で試食として提供された無水カレーの場合、1人分の材料としてトマト1個と玉ねぎ1/2個、セロリ1/4本を使用。1皿で摂取できる野菜の分量は約220gと通常のレシピで作ったカレーよりも約100g多くなる。

○Made in Japanにこだわり

クックホットの内鍋にはステンレス素材を採用しており、鍋外側には熱伝導効率を上げるためにアルミ加工が施されている。内鍋は金属加工で有名な新潟県で生産されているほか、そのほかもすべて日本で生産。日本製にこだわっているとのことだ。

内鍋には専用のフタが付属し、冷蔵庫でそのまま保存できる。また、まぜ技ユニットや内ブタなど本体内側のパーツは取り外して水洗いでき、簡単に手入れできる。

なお、製品名の「ホットクック」は、英語の"HOT"と"COOK"を掛け合わせた用語に思われそうだが、「関西弁の"ほっとく(放っておく)"という言葉をもじっている」と田村氏は説明。もちろん、型番の「HT99」も「ホットクック」に由来するそうだ。

今後、ホットクックをインバウンド需要やASEAN諸国向けにも展開していく方針だ。国内においては、シャープの調理事業全体に占めるヘルシオシリーズの比率を、現在の48%から5年後に70%まで拡大することを目指すとしている。

(神野恵美)