クローザーでは思うような投球ができなかったレッドソックスの田沢純一[Getty Images]

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◆ 故障の上原浩治に代わりクローザーの代役に指名される

 リードしている試合の最後を締めるクローザー。投手の分業化が確立されたこの時代において、日米問わずチーム編成の上で重要な存在となっている。一説には、2点以上リードして9回を迎えた場合、そのチームが勝利する確率は約97%とも言われている。この数字だけを見れば、多少力が劣る投手がクローザーとして投げてもいいように思えるが、一度の失敗でどん底まで突き落とされるのもクローザーの宿命である。最後の3つのアウトをとることは、簡単なことではない。

 8月、クローザーの過酷さを痛感したのがレッドソックスの田澤純一だ。今季も開幕からセットアッパーとしてチームを支えてきた田澤だが、上原浩治が故障で離脱したことで代役のクローザーに指名された。

 2009年にメジャーデビューして以降、田澤は2012年に一度だけセーブを記録したことがある。ただ、その時は大量リードの7回から登板し、最後まで投げ切ったために記録されたセーブで、一般的なセーブとは少し異なるシチュエーションだった。

 言うならば、田澤はメジャー生活で初めてクローザーとなったわけだが、その役目が回ってきたのは8月11日(現地時間)のマーリンズ戦だった。1点リードの9回に登板したが、犠牲フライで同点にされ、いきなりセーブに失敗。その後は、16日のマリナーズ戦でセーブを記録するなど3試合連続で無失点に抑えた。

 ところが、23日のカンザスシティ・ロイヤルズ戦で2点リードの9回に登板するも6安打4失点で負け投手に。26日のホワイトソックス戦ではセーブを記録したが、28日のメッツ戦で3点リードの10回裏に登板し、2アウト無走者から4者連続で四球を与え1失点で降板。この試合のあと、再びセットアッパーに戻ることになった。ちなみに、田澤の1登板における4与四球はメジャーデビュー以降では最多だった。

◆ 苦い経験を糧にリリーバーとして更なる進化を

 クローザーの期間、田澤は6回3分の2を投げ、被安打11、与四球6、失点6、三振は1つしか奪えず、防御率は8.10。

 昨季も田澤は7月に11試合の登板で防御率7.56と調子を落としたがことがあり、調子の悪い時期と重なったことや腰痛の影響もあっただろうが、メジャーで初めてのクローザーは散々な結果となった。

 セットアッパーに戻ることが決まり、田澤は「(セットアッパーが主に投げる)8回に戻るのは正直ほっとする」とコメントしたことからも、クローザーの厳しさを改めて感じさせる。

 リードした展開で登板するという部分ではセットアッパーもクローザーも大きな差はないように見えるが、セットアッパーが打たれても、うしろにはクローザーが控えている。だが、クローザーのうしろには誰もいない。自分のピッチングにすべてがかかっているという重圧は想像を絶するものなのだろう。

 クローザーでは思ったようなピッチングができなかった田澤。しかし、先々のことを考えればクローザーの気持ちを実感できたのは大きいはずだ。この経験を糧に、メジャーでも屈指のリリーバーとしての地位を確立していってほしい。

文=京都純典(みやこ・すみのり)