専大松戸vs習志野

辛抱して、我慢して、7回に大爆発！専大松戸が初の甲子園出場を決める！

　千葉大会決勝は、試合前からかなり込み合い、なんと試合開始前は内野席どころか、外野席も満員。しばらくして、チケットは完売したアナウンスが聞こえ、この試合の注目度が伺えた。それはいつもの千葉大会とは違う緊張感があり、お互いミスが目立つ立ち上がりとなった。

　専大松戸はエース原 嵩がマウンドに登ったが、どうも、ストレートのコントロールが良くない。1回表、二死一、二塁から5番八木の中前適時打で1点を先制する。先手をかけたい習志野にとっては絶好の展開だが、習志野もいきなり二者連続四球を出して、先発の土井 大輝（3年）が降板。2番手の深田慶太郎（3年）も四球を出して、一死満塁のピンチ。が、5番河村が初球を打って併殺でチェンジで無得点になると、2回表には習志野がバントフライで併殺になるなど、お互い今までの戦いぶりから考えられないほど緊張した様子が見られた。

　これほどの大観衆の中でプレーするのは初めてな選手たち。どちらが普段着の野球ができるかが、キーポイントとなったが、習志野の深田が捕手からボールを受け取ってからテンポの良い投球で、リズムを作ると、4回表、習志野は二死二塁から幸坂の適時打で2点目を入れると、7回表、一死から内澤 優介（3年）の安打、内山 京祐（2年）の一塁強襲安打で一死一、二塁のチャンス。そして4番吉野 海都（1年）が左翼線二塁打を放ち、1点を追加。ここまで3対0。さらにホームから三塁側までのスタンドは習志野推しのファンの方たち。習志野のブラスバンドの応援に乗って、うちわで叩く音がこだまして、雰囲気を完全に占拠。習志野が完全に試合の主導権を握ったかに思えた。

　しかし専大松戸はこのままで終わらない。7回裏、先頭の河村の安打、猪爪大地（3年）の四球で無死一、二塁で角谷 幸輝（3年）の絶妙な犠打で一死二、三塁のチャンスを作る。

　そして8番寺元啓介（2年）が必死に粘りながら、中前適時打で2点を返し、3対2の1点差に。逆にホームから一塁側の専大松戸の応援スタンドが大盛り上がり。そして習志野は投手交代。3番手は140キロ右腕・尾形 康平（3年）が登板。9番伊藤がきっちりと犠打を決め、1番渡辺 大樹（3年）。尾形は140キロ近い速球で押すが、渡辺は高めのストレートを捉え、ライトの頭を超える適時三塁打で同点！専大松戸側のスタンドは大熱狂。その声援の大きさは習志野スタンド以上で、逆に習志野が追い込まれてしまった。

　尾形も降板し、4番手の阿部正平（3年）が登板したが、阿部も止められず、二死満塁から4番原が打席に立った。原が振り抜いたライナー性で、センターへ。センターの加藤の前に落ちた。加藤はダイビングキャッチをしようとしていたが、前に出れず、人工芝によって大きく跳ねた打球は加藤の頭を超えて、外野を転々。原は全力で走り抜き、三塁も蹴ってランニングホームラン！スタンドの熱気は最高潮に達した。原はナインと抱き合った後、ベンチの選手たち、女子マネージャーと満面の笑みで、ハイタッチ。実に良い光景である。三塁打を打った渡邊とランニングホームランを打った原だが、180センチを超える大型選手だが、俊足で、動く姿に躍動感を感じさせる。実に良い選手である。

　ここまでの試合を自分の投球、打撃で試合を決めてきた原だが、決勝の舞台でも、見事な一打で試合を決めた。決めてほしい場面で決める。まさにスター性を持った選手である。これで試合は完全に決した。専大松戸は4回途中から登板した角谷が120キロ後半の速球、スライダー、カーブをコントロール良く投げ分けながら投球を展開。9回も危なげない投球で、最後の打者を二ゴロに打ち取り、初優勝を決めた。

　専大松戸は持丸修一監督によって急激に強くなったチーム。2011年から5年連続Aシードの座を獲得。去年も決勝進出するが、なかなか甲子園にはたどり着けなかった。この試合も非常に苦しい試合展開だったが、持丸監督の場内インタビューで、4点まで取り返せると語ったように、一気に畳みかけた攻撃は見事であった。そして2番手の角谷も1失点にとどめた。角谷は春季大会で大活躍し、優勝に貢献したが、決勝でも堂々とした投球ができていた。普通ならばエース・原を頼るところを、角谷を一本立ちさせたことで、原が打たれても、まだ角谷がいるという試合運びが逆転を生んだ。まさに辛抱と我慢の中で、掴んだ優勝である。

　今年のレギュラーは昨年から多くの経験を積んできた。ポテンシャルの高さは全国クラスのモノを持っている。苦しい、苦しい千葉を戦い抜いた自信を持って、全国で投打で大暴れを見せることを期待したい。

（文＝河嶋 宗一）