関東一vs帝京
東東京を代表する強豪校同士の一戦は、中盤までは予断を許さぬ熱戦になったが、継投が明暗を分けた。
むっとする暑さの中で行われたこの試合には、朝から大勢の観客が詰めかけた。帝京の先発は背番号16の2年生・安村 陸人、関東一は背番号18の3年生・金子 尚生。最初から継投になることを想定した投球起用だ。
準々決勝で帝京が、1年生の大胡 優太を先発させつつ、エースの稲毛田 渉がスタンバイしていたように、帝京のブルペンでは、試合開始当初から稲毛田が投球練習をしている。しかし関東一は、そうした想定を打ち砕く猛打を初回から発揮する。
1回表関東一は、2番井橋 俊貴が死球で出塁すると、続く3番、主将の伊藤 雅人が、レフトスタンドに突き刺さる2ラン本塁打を放つ。さらに4番森山 将に四球を出したところで、帝京は安村から稲毛田に投手を代える。帝京としては、早い回での継投は、ある程度想定されたことだろうが、2点を先取されてのエース投入は、やや痛手であった。
もちろん試合はまだ序盤、帝京も反撃に出る。2回裏、この回先頭の5番、主将の中道 大波がレフト線を破る二塁打を放つ。ここから犠打二つで帝京は1点を返す。
関東一は4回からは背番号10ながら、もともとエースであった阿部 武士を投入。関東一としては、先発の金子が3回1失点に抑えたのは、及第点であるはずだ。
それでも、5回裏帝京が3番小峰 聰志の左前安打で同点に追いつくと、4番打者・岡�� 心に3ボール1ストライクとなったところで、3番手として、左サイドハンドの小松原 健吾をマウンドに送った。小松原はストライクを続けて、岡崎を三振に仕留めた。ここでの投手リレーで、関東一が帝京に流れを渡さなかったことが、後半の攻撃につながる。
この勝敗を分けたのは、6回裏と7回表の攻防である。6回裏帝京は、この回先頭の中道が中前安打で出塁するが、二盗は失敗。続く笠井 拓弥は左前安打で出塁し、酒井 雷太の犠打で二塁に進む。続く8番栗田 真の右前安打で笠井は本塁を狙うが関東一の右翼手・長嶋 亮磨の本塁への好送球で、笠井はアウト。この回帝京は3安打を記録しながら、無得点に終わった。
そして7回表は、五十嵐 滉希の中前安打、オコエ 瑠偉の敬遠の四球、井橋の左前安打と、疲れのみえるエース・稲毛田に襲いかかる。そして迎えたのが、第1打席で本塁打を放っている伊藤。伊藤は右中間を破る三塁打を放ち、満塁の走者が生還。一挙3点をリードした。
伊藤はこの日5打点。オコエらに比べ目立たないものの、1年の夏からレギュラーで、野球センスは抜群。人一倍努力をしており、米澤 貴光監督からの信頼も厚い。
関東一は9回表も長嶋の三塁打などで3点を入れて、勝負を決した。9回裏は関東一の一塁手の失策などで1点を返したものの、8対3で関東一が勝ち、決勝進出を決めた。帝京の稲毛田は、猛暑の中事実上の完投をし、156球を投げた。ただその力投ゆえに後半疲れがみえ、そこを関東一が逃がさなかった。しかし帝京は4番の岡崎をはじめ、1、2年生が多い。秋にどのようなチームを作ってくるか、楽しみにしたい。
関東一は甲子園出場まであと1勝。打線は好調だが、投手陣がどこまで踏ん張れるかが、カギとなる。
（文＝大島 裕史）
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