スクイズで流れ、引き寄せる・鹿児島実

 第1シードの神村学園と第5シード鹿児島実の激突は、「事実上の決勝戦」とも目されるほどの好カードであり、平日にもかかわらず、大勢の観客が訪れた。

 鹿児島実にとっては、昨夏の準々決勝のコールド負け、3年前の決勝戦の大敗などに象徴されるように、神村学園が大きな壁となって立ちはだかってきた。今年が学校創立100周年の節目の年を甲子園で飾りたい意気込みの表れだろうか。約1300人の全校生徒が応援に駆けつけ、球場で終業式を済ませるなど学園の後押しも熱が入っているのが感じられる。筆者が球場入りした頃から、三塁側のアルプス席下から吹奏楽部の練習演奏が本番さながらの熱気で聞こえてきた。

 試合は、両者シード校の名に違わぬ実力をいかんなく発揮し、序盤から1点を争う緊迫した好ゲームになった。鹿児島実の橋本 拓実(3年)、神村学園・北庄司 恭兵(3年)、両右腕エースが130キロ台後半の直球とキレのある変化球を武器に、相手打線を翻ろうし、互いにがっぷり四つに組んだ。

先手を取ったのは鹿児島実。4回に二死となってから、4番・綿屋 樹(2年)がライトオーバーの三塁打を放ち、5番・築地瑠偉(3年)のボテボテのゴロが内野安打となり、先制した。

 神村学園はグラウンド整備直後の6回表、先頭の3番・豊田 翔吾(3年)がレフトオーバー二塁打を放ち、4番・山本卓弥(3年)もセンター前ヒット続いて、無死一三塁と畳み掛ける絶好のチャンスを作る。5番・田中 梅里(2年)がショートゴロ併殺となる間に三走・豊田が生還し、同点には追いついたが、後続を絶たれ同点止まりだった。

 勝負の行方は終盤勝負となった中、鹿児島実は7回、エラー、送りバント、ヒットで一死一三塁とすると、9番・長谷部大器(3年)がスクイズを決めて勝ち越し。更に2番・安藤優幸(3年)にもタイムリーが出て3対1と2点リードした。

神村学園は8回、3番・豊田のライト前タイムリーで1点差とした。ここで鹿児島実は橋本から有村 健太(3年)にスイッチ。4番・山本を四球で歩かせるも、後続をセンターフライ、三ゴロに打ち取って追加点を許さなかった。

 9回、神村学園は再びマウンドに戻った橋本から3年生の代打攻勢で二死二三塁と一打逆転のチャンスを作る。代打・井原 誠(3年)はしっかりとボールをとらえて右方向に流すも、二塁手・板越夕桂(2年)がイレギュラーバウンドをそつなくさばき、鹿児島実が2年ぶりの決勝進出を果たした。

(文=政 純一郎)

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