安倍晋三公式サイトより

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 今国会最大の山場とされた安全保障関連法案が7月16日に衆議院で可決された。安保法制が衆議院で可決したことを受け、審議の場は参議院へと移ることになる。仮に参議院で否決されても、衆議院は与党が3分の2の議席を占めている。戻ってきた法案は再可決される可能性が高い。そうしたことから、安保関連法案の成立は確実視されている。

 そうした観測が流れる中、自民党内からも解釈改憲という禁じ手を使ってまで法案を強引に成立させたという批判はくすぶっている。そうした批判は、今年9月に実施される自民党総裁選にも少なからず影響を与えるのでは? ともいわれる。

 自民党総裁の任期は3年。安倍晋三総裁は2012年に選出されているので、今年9月で任期を終える。GW前までは、安倍内閣が絶大な支持率だったことから対抗馬が現れることなく、安倍総裁の無投票再選もゆるぎないと目されていた。

 ところが、一連の安保関連法案で状況は一変。石破茂地方創生担当大臣や小泉進次郎議員などからも安保関連法案に対してネガティブな意見が出てくるようになった。声にこそ出さないが、内心で安倍総裁に不満を抱いている議員はもっと多いだろう。自民党内部では、安保関連法案をやり遂げた安倍総裁を勇退させるといったプランも一部からは出ているようだ。

 仮に安倍総裁が勇退した場合、現在の顔ぶれから“次”の有力議員は先に挙げた石破茂地方創生担当大臣のほか、谷垣禎一幹事長、麻生太郎財務大臣の3人。このあたりから、順当に決まるとの見方が強い。

「次の次」の総裁に高い関心

 次の総裁が誰になるかよりも、永田町では次の次の総裁に誰がなるのかに高い関心が集まっている。現在、次の次候補で有力とされている一人は、政務会長を務める稲田朋美衆議院議員だ。稲田政務会長は原発政策でも安全保障政策でも安倍総裁と考え方が近く、第二次安倍内閣では、クールジャパン担当大臣に抜擢されてもいる。しかし──

「なんだかんだ言っても自民党は男社会です。第二次安倍内閣でも“女性の活用”を謳って4人の女性閣僚を起用しましたが、松島みどり法務大臣も小渕優子経済産業大臣もすぐに失脚して、党内からは『やっぱり女に大役は任せられない』なんて囁かれたぐらいです。閣僚で、そうした声が出るのです。女性を総裁に就けようとしたら、自民党が崩壊してしまうかもしれませんよ」と言うのは、永田町関係者だ。

 変わり始めているとはいえ、自民党はいまだ古い体質のまま。となると、次の次候補として有力な議員はいったい誰なのだろうか?

「人気の面では小泉進次郎議員になるかと思いますが、期数を考えると、まだちょっと早い。ほかに、根強い声があるのは、西村康稔議員です。西村議員は自民党に逆風だった2009年衆院選でも楽々と小選挙区で当選しています。選挙区は農業が盛んですが、西村議員はTPP推進論者。それでも、選挙では絶大な支持を得ているのです」(前出・永田町関係者)

 西村議員は2012年の自民党総裁選で安倍候補を支持した安倍再登板を実現した立役者でもある。そのため、安倍総裁からの信頼も厚い。敵方の民主党関係者も「政策知識も豊富で、議員間の信頼も厚い。必要なのは、大臣経験だけ」と西村議員を評価する。

 とはいえ、安倍政権の支持率と安倍総裁の動向次第で、誰が次の総裁に選出されるのかは変わる。次の総裁選びで波乱が起きれば、当然ながら次の次の総裁レースも影響を受ける。

 気の早い話と感じるかもしれないが、長らく総理大臣は1年単位で交代してきた。次の次と目された議員が、2年後には総理大臣になっている可能性だってゼロではない。

(取材・文/小川裕夫)