斐太vs中津商
毎年3月、卒業生たちが帽子の白線と女子生徒は制服のスカーフを結んで、学校前を流れる大八賀川に流して、「巴城ケ丘別離の歌」を歌う、“白線流し”という儀式が旧制中学時代から70年以上も続いているという斐太は、県北部の今年創立1２9年を迎えるという伝統校である。その白線流しは、その後テレビドラマにもなったことで知られることになった。ちなみに、テレビドラマの時は松本が舞台となって、ロケ地では松商学園の校舎も用いられていた。
閑話休題、その斐太は第1回大会からの出場校でもあり、背負う伝統の重さは相当なものである。巴城ケ丘とは、その選手たちが日々の練習を積んでいる学校のある土地のことである。今大会、斐太は丁寧な投球をする根尾君がよく投げてここまで勝ち上がってきていた。身体はそれほど大きくはないし、決してスビードのある投手でもない。フォームも、何となくぎくしゃくした感じに見えるのだが、チェンジアップのような大きなカーブが有効で、これでカウントを整えて巧みに打たせて取っている。
そんな投球で、6回まで中津商打線を無安打に抑えていた。「もしかして、ノーヒットノーランになるのか…」と思われたが、7回に平岡君が二塁へボテボテの当たりを放ち、これが安打と記録された。スコアボードの「Ｈ」のところに「1」が入った。これで、スタンドも奇妙な緊張感がとけたような感じとなる。
試合としては、斐太は初回に先頭の白川君がいきなり中前打して勢いづいた。2番・布俣君はしっかり送って、四球後に重盗で二、三塁となる。そこから岩田君、新井君、江間君と斐太は3連打で得点を重ね、さらに根尾君のスクイズは野選を誘い、3点入ってなおも一死満塁。8番・稲葉君もスクイズを決めてこの回4得点。
そのまま、やや膠着状態が続いたが、7回にも斐太は二死一、二塁から稲葉君、矢島君と8番9番の連打で追加点を挙げた。そして、9回は背番号10の田口 雄基君がリリーフのマウンドに立ったが、3人できっちり抑えて槇本 寛監督の起用にも応えた。
斐太はこれで15年ぶりのベスト8進出となった。県内では、どちらかというと岐阜市内や大垣勢などに押され気味の傾向がある地区なのだが、そんな中で北部の伝統校の活躍は、各校にとっても励みになるのではないだろうか。
中津商は、初回の失点があまりにも大きすぎたのだが、初回に10人目の打者を迎えた時にリリーフした�睨楫�は以降丁寧な投球で6イニングを0に抑えて健闘した。
（文＝手束 仁）
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