3校連合、大きなミスもなくコールド負けも大健闘

 東京の都立校にはエンカレッジスクールとチャレンジスクールというのがある。エンエンカレッジ(encourage)とは「勇気づけ」という意味。これまで力を発揮できなかった生徒のやる気を育てて、社会生活を送っていくために必要な基礎的・基本的学力を身に付けることを目的として、基本的には入学試験なしで就学できるという高校で、現在都内には5校ある。都立足立東はその一つでもある。

 また、チャレンジスクールというのは、主に不登校などで中退したり、登校拒否で進学をあきらめていた生徒に再び勉学へ向かう意欲を育てて挑戦させることを目的としている単位制の高校のこと。都立桐ヶ丘もその一つだ。この両校に、都立農産が加わった3校の連合チーム。

 都立足立東と都立桐ヶ丘がそれぞれ3人、都立農産が4人で総勢10人という布陣の都立足立東・都立桐ヶ丘・都立農産連合チームが、専用球場を有し、甲子園出場経験もあり、84年春にはセンバツで優勝も果たしているという岩倉に挑むという形になった。スタンドで見ていたニュートラルな人は、「5回以上戦えて、まともな試合になればいいなぁ」という思いだったのではないだろうか。それくらいに、シートノックの段階から、力の差は歴然としていた。

 案の定、岩倉は初回の守りで巽 大介君が簡単に三者凡退で抑えたその裏、宮原 陸君の死球に始まって、バントなどで二死二塁から4番・和田 浩樹君の左越二塁打と市川 純輝君、中村 鳳生君の連打で3点を奪った。

 この初回の攻防を見る限りでは、正直なところ、試合はワンサイドになり5回で決着がついてしまうだろうという感じだった。しかし、ここから4回まで、お互いに得点が入らなかった。岩倉は走者を出すものの、都立足立東・都立桐ヶ丘・都立農産連合チームも杉村 雄太郎君が何とか踏ん張り、守りも大きなミスがなく、恰好はよくなくても、しっかりとアウトが取れていた。杉村君の制球が悪くなかったことも、0に抑えられた要素といってもいいだろう。

 結局、岩倉は5回に和田君の右線二塁打や中村君の左前打にミスも重なり走者が進み、2点を追加。そして、6回にも和田君の二塁打、中村君の三塁打などで4点。外野手のポジション取りや球の追い方がよくなく、そのことで抜かれていったということもあろうが、記録として失策ならなかったことはよかった。

 岩倉の投手陣は、先発のエース左腕・巽君が6回を投げて無安打無失点、7回は坂本 匠君がしっかりと投げて、3人で終わらせた。継投の7回参考ながらノーヒットノーランに抑えたということである。

 とはいえ、岩倉としては2度のバント失敗や、走者が走り切れなかった無駄なバントも2本と、決していい内容ではなかった。豊田 浩之監督としては、勝ったとはいえ反省材料の多い試合だったということであろう。

 むしろ、都立足立東・都立桐ヶ丘・都立農産連合チームは大きなミスもなく、試合を壊していったという印象もなかった。コールド負けとはいえ、健闘したといっていいのではないだろうか。

(文=手束 仁)

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