2回戦屈指の好カードは前評判通り手に汗握る展開に!祐誠が二度の逆転で激戦を制する!

 2回戦屈指の好カードにふさわしい、最後まで手に汗握る素晴らしい試合展開だった。 甲子園出場経験があり、今もなお好選手を輩出する筑陽学園と常にベスト8県内に進出し、中日で活躍する若松 駿太投手などこちらも好選手を輩出する祐誠の対決ということで、春日公園野球場は徐々に観客が多くなってきた。試合は初回から動く。

 筑陽学園の先発・山中 優(2年・左投げ左打ち・176センチ75キロ)は中々のレベルが高い左腕であった。左スリークォーターから投げ込む直球は常時130キロ前半(最速133キロ)の直球、スライダー、カーブを投げ分ける投手である。山中は二死三塁のピンチを招いたが、4番松門 琳蔵(2年)を空振り三振に打ち取り、上々の立ち上がり。

 そして1回裏、筑陽学園の1番斉藤 雄亮(3年)が低めの変化球を捉え、右中間スタンドへ飛び込む先頭打者本塁打を放った。斉藤だが、攻守ともにポテンシャルが高い選手だ。シートノックでは、ライトのやや深い位置から思い切りチャージをして投げ込んだ返球はライナー性の軌道で、キャッチャーミットに収まった。まさに強肩と呼ぶべき返球である。

 打撃フォームも独特で、スクエアスタンスで構えたと思ったら、投手の始動に合わせて右足を上げてから背中を丸め、バットを寝かせてヘッドが投手方向へ向いた状態からバットを振りだす。この打法は、左ひじをしっかりと畳んでコンパクトに振りだすことができないと、ヘッドが遠回りするだけだが、本塁打の場面では実にコンパクトにバットを振りだすことができていた。これが常にできるようになると、高打率を残せる選手であることは間違いない。

 しかし2回表、祐誠が一死二、三塁から8番得永 優平(3年)が初球のストレートを捉え、右中間を破る適時二塁打ですかさず逆転に成功する。得永もとても8番打者とは思えないスイングを見せる選手だ。ストレートをドンピシャのタイミングで捉えて鋭い打球を飛ばしていった。そして得永は降板。2番手は右サイドの武石 健(3年)が登板し、後続を凌ぐ。その裏、一死二塁から7番光岡 龍志(3年)が中前適時打を放ち同点に追いつく。

 4回表、二死一、二塁から1番古賀 稔啓(3年)が右中間を破る適時三塁打を放ち、4対2と勝ち越したが、4回裏、筑陽学園打線の勢いが止まらない。4番斎藤のヒットを足掛かりに、無死一、三塁のチャンスを作り、6番磯川の適時二塁打で3対4と1点差に迫ると、7番光岡の犠飛で同点に追いつく。光岡も2.00秒台のスローイングにパワフルな打撃が光る強打の捕手だ。177センチ83キロという頑強な肉体も魅力で、今後も次のステージで活躍できる選手だろう。

そして一死満塁から1番斉藤雄の犠飛で勝ち越しに成功。3番笹原 省吾(3年)の2点適時打で、筑陽学園は7対4と勝ち越す。

注目記事・第97回全国高等学校野球選手権大会特設ページ・あの学校の取り組みは?!福岡県の野球部訪問を一挙紹介!・夏よりも熱い!全国の野球部に迫った人気企画 「僕らの熱い夏2015」・各地区の選手権大会のみどころは?!展望をチェック!

 筑陽学園は3番手としてマウンドに登ったエースの斎藤 銀次郎(3年・右投げ右打ち・176センチ75キロ)が後続を凌ぐ。右上手から常時130キロ前半の速球、スライダー、カーブ、フォークを投げ分けるオーソドックスなスタイル。体全体を使った投球フォームで、躍動感を感じる。さらに体の力がつけば、140キロ台にも到達するだろう。

 評価が高いのは野手としてだ。二打席連続本塁打を放ったインパクト、そして打球の速さを見ると野手としての方が将来性があるだろう。この日はセンターとしてスタメン出場したが、センターからのバックホームもなかなか鋭く、動きも悪くない。ただ初戦で二打席連続本塁打を放った打撃については引っ張り傾向の打撃が強く、打撃の幅を狭めているように感じる。

 スクエアスタンスで構え、投手の始動に合わせて足を上げて、背中を丸めてバックスイングを取っていき、やや弧を描くようなスイング軌道でボールを捉える選手。踏み込んだ足が開き気味で、ボールを巻き込んで打ちに行く。狙い球に対し、しっかりと引っ張れた時は鋭い打球を打てるが、全体的に引っかけた打撃が多く、そこに勿体なさを感じる。

 筑陽学園は祐誠の3番手・橋爪 海人(2年・右投げ右打ち・175センチ67キロ)を打ち崩せない。橋爪はインステップ気味のステップから大きく振り下ろすフォームは常時130キロ前後、スライダー、カーブ、チェンジアップを丹念に投げ分ける投手で、この日に投げた祐誠の投手では最もまとまりがあった。7回を終えて、7対4の筑陽学園のリードのまま8回表を迎える。

注目記事・第97回全国高等学校野球選手権大会特設ページ・あの学校の取り組みは?!福岡県の野球部訪問を一挙紹介!・夏よりも熱い!全国の野球部に迫った人気企画 「僕らの熱い夏2015」・各地区の選手権大会のみどころは?!展望をチェック!

 8回表、祐誠は、二死一、二塁のチャンスで4回に適時三塁打を放っている1番古賀 稔啓が打席に入る。古賀は左前適時打を放ち、1点を返し、5対7に。古賀は4回に右中間を破る三塁打を放ったように、広角に鋭い打球を打てる選手で実に頼もしいトップバッターだ。その後、筑陽学園に失策が飛び出し、6対7の1点差となって、3番吉岡 翼(2年)の右前適時打で7対7の同点に追いつく。そして二死一、二塁から4番松門 琳蔵(2年)がスライダーを捉えて、右中間を破る適時二塁打を放ち、3点差をひっくり返し、逆転に成功。斎藤 銀次郎に襲い掛かった集中打。見事だった。

 8回裏から、祐誠は、183センチ74キロの大型右腕・中村 翔(3年)が登板。いわゆるアーム式のフォームから繰り出す130キロ前後の速球と独特の曲りをするカーブが効果的だった。8回を無失点に抑え、9回裏、二死二塁のピンチで、4回裏に追加となる適時打を放った3番笹原を迎えた。祐誠バッテリーは冷静だった。素早く追い込んで2ストライク1ボール。2ストライク目がやや緩めのカーブで、巧く合わせればヒットにできた球種であった。これで勝負あり。中村は力一杯のストレートを投げ込み、空振り三振に打ち取り、試合終了。祐誠が強豪対決を制し、3回戦進出を決めた。

 お互いが力を出し尽くした試合であった。筑陽学園の打力、総合力の高さは見事で、県内上位に位置付けてもおかしくないぐらいのポテンシャルある選手が揃っていた。だが祐誠のここ一番の粘りは見事であった。まさに夏の試合というべき緊張感を漂わせる好ゲーム。この苦しい試合を乗り越えた祐誠は次戦以降、どんな戦いを見せていくのか注目をしていきたい。

(文=河嶋 宗一)

注目記事・第97回全国高等学校野球選手権大会特設ページ・あの学校の取り組みは?!福岡県の野球部訪問を一挙紹介!・夏よりも熱い!全国の野球部に迫った人気企画 「僕らの熱い夏2015」・各地区の選手権大会のみどころは?!展望をチェック!