堅守ほころび、接戦落とす・大島

完封勝利を収めた橋本拓実(鹿児島実)

 鹿児島実・橋本 拓実(3年)、大島・前山 優樹(3年)、両先発右腕の好投で1点を争う緊迫した投手戦となった。

 ネット裏でチェックしていた他校のスピードガンによれば、両投手の直球は、橋本で最速144キロ、常速130キロ台後半、前山で最速134キロ、常速130キロ台だったという。制球は両者とも今一つだったが、球威があって適度に荒れていた分、狙い球が絞りにくかったように思えた。

 4、5、7、8回と大島が先頭打者を出し、中盤以降は押し気味に試合を進めるも、走塁ミスやバントミスなど拙攻で得点ならず。逆に鹿実は8回、一死一二塁から3番・安藤優幸(3年)がレフト前タイムリーを放ち、レフトが後逸する間に、2者生還。好投の橋本を援護した。

 強豪・鹿児島実を相手に終盤までがっぷり四つに組んでいたが、大島自慢の堅守が8回にほころび、無念の完封負けだった。

 8回裏一死二塁。鹿実の2番・長谷部大器(3年)の打球がレフトに上がった。平凡な飛球だったが、この試合で初めての守備機会だったレフト・磯大雅(2年)は落球してしまう。「緊張して慌てて捕りにいって、落下点にしっかり入れなかった」。1点もやれない緊迫の展開が長く続いた分、動きを硬くしてしまった。

 一つのミスで気落ちしたところに、畳み掛けるように、3番・安藤の打球が磯を襲う。「バックホームで投げることに意識が行き過ぎて、捕ることがおろそかになってしまった」と打球を後逸。この間に2者が生還し、これが決勝点になった。

「ああいうミスがあっても持ちこたえられる粘り強さがあるチームなんだが…」と渡邉恵尋監督。いくら堅守のチームといっても、ミスが出ることはある。この試合でより反省すべきは、中盤以降何度が先頭打者を出しながら、走塁ミス、バントミスがあって先に得点できなかった点だ。堅守が売りなら、少ない好機は着実にものにして自分たちに流れを引き寄せる。鹿実クラスの強豪校に勝つには、なおのことそういった勝負強さが必要不可欠だ。

 エース前山は、調子が良くないなりにも粘り強く投げた。守備は、2回にバント処理で併殺、5回はセンターからのバックホームで本塁アウトをとるなど、鹿実が相手でも持ち味の「守りからリズムを作る野球」で互角以上に渡り合うことはできた。

「渡り合う」だけでなく「勝つ」ために何をすべきか。約1カ月後の夏に結果を出すために、難しくもやりがいのある「宿題」が大高ナインに課せられた。

(文=政 純一郎)