上宮太子vs近大泉州
3ランを放った金井亮輔（上宮太子）
秋と春では一冬で一気に力関係が変わってしまうもの。 上宮太子は近大泉州と練習試合した時、「大敗でしたね。4番の渡辺 巧君にはピンポン玉のように飛ばされましたから」と上宮太子の日野利久監督が振り返るように、力の差を見せつけられたという。また歴代のチームと比べても、「先輩たちは能力がある子でしたけど、この子たちはへたくそなところからスタートしたんです。とにかく練習をやる子たちばかりでしたね」と猛練習の中で、力をつけていった選手たち。
ここまで2戦連続でコールドで勝ち上がり、3回戦では東に3対2、4回戦では阪南大高は、6対5と競り合いを制し、勝ち進んできた。 1回裏、無死一、三塁から3番金井 亮輔（3年）がレフトスタンドへ飛び込む3ランホームランで3点を先制する。さらに2回裏には一死二塁から3番金井が左前安打を放ち、一死一、三塁とチャンスを広げる。
「2年春から出てきて、急激に伸びてきた選手」と日野監督が評する金井。170センチ80キロと恵まれた体格を誇る遊撃手。入学当時は60キロほどだったようだが、2年間で20キロも増量した。 1日にご飯を2合食べたり、また徹底としたトレーニングで、パワーアップしてきた。分厚い胸板に、またズボンのピチピチ具合からわかる下半身の分厚さ。土台的なものは素晴らしいのが分かる。今日の本塁打で、高校通算28本塁打に達した。小柄ながらも素晴らしいパワーを持った選手であることが伺える。
スイング的なものを見ると、トップを深く取りながら、ギリギリまで引き付けて、水平な軌道をしながら、ボールを運ぶ感覚で、捉えている。 そのため遠くへ飛ばすことができる選手だ。そして遊撃の守備を見ると、肩の強さにも自信を持っている。前向きにどんどん振っていく積極性を持った選手で、なかなかすぐれた素質がある。
4番田中聖也の右前適時打で4対0とする。3回裏には6番木戸幸大が二塁打を放ち、無死二塁から7番村上翔太のバント処理を近大泉州の野手陣が処理を誤る間に、木戸だけではなく、村上も生還し、6対0とする。リードを作る。
渡辺巧（近大泉州）
6回表、近大泉州は6番中山竜我が2ランホームランを放ち、7回裏、敵失で1点を追加するが、8回表、近大泉州が5番大木の三塁打で無死三塁のチャンスを作ると、6番中山の犠飛で7対3の4点差に迫った。
9回表、近大泉州は2番尾尻の適時打で1点を返したが、反撃はここまで。上宮太子がベスト8進出を決めた。 試合後、日野監督は、「去年、練習試合で対戦して、うちがボロボロに負けているので、半年経って、よう成長したなと感じる試合でした。8，9回と追い上げれましたが、投げた村上が良く粘り強く投げました。まあいつも毎試合危ない試合ばかりなのですが、よくやっていると思います」と選手たちの戦いぶりを評価していた。
近大泉州の4番渡辺は無安打に終わった。骨格が太く、下半身の太い体型、体つきの良さからパワーが優れた選手であることが分かる。ちょっと気になったのは、ドラフト候補に挙がる選手と比べると動作にキレが欠けることである。
プロへ行く選手というのは、見た目のパワー、体格で評価されがちだが、そのパワーを生かすスピード、体の使い方も重要だ。体のキレを生み出すのは、どうすれば効率良く使うことができるのか、それを考える習性、またそこへ向けての準備する姿勢が大事になる。
今日の渡辺のプレーを見ると体が重いように感じたのだ。スイング1つ、スローイング1つ、打席前の準備にしても、自分のイメージ通りのプレーができていない。おそらく本人としては、長打を打つイメージがあると思うが、結果として無安打であった。
三塁の守備を見ると、うまく打球に追いつき、肩の強さを見せていたが、普段の所作からややゆっくり。プロへ行く野手というのは、打撃にしろ、守備にしろ、レベルの違いを見せることが大事になるが、レベルの違いというのは、プレーの一つ一つのスピードである。打球の速さ、足の速さ、身のこなしの良さなど、体を素早く使うことができる意識である。レベルが高いステージを見れば、一見、大柄でパワー重視の選手に見えても、瞬発力が高く、切り替えしが鋭い。そういう世界で生き残る選手は、ただ重い物を持ち上げる力だけではなく、回転動作で、しっかりとパワーを伝える動作を習得しているのだ。
昨秋までの公式戦で5本のホームランも打っている渡辺だが、持ち味のパワーを発揮できる体のキレが足りなかった。夏へ向けての課題は自分のパフォーマンスを最大限に発揮できるための準備に尽きるだろう。夏では攻守で躍動感のあるプレーを見せてほしい。
（文＝河嶋 宗一）
