2015年 春季東京都高等学校野球大会 本大会総括 「打撃型チームが目立った今大会」
今年の春季東京都大会は日大三の優勝で幕が閉じた。今年は全体的に強打の日大三、関東一。大型スラッガー・清宮 幸太郎（早稲田実業）（関連コラム 第1回/第2回）の登場により、全体的に強打者、打力の高さが目立った大会となった。今大会を振り返っていきたい。
6試合で13本塁打と打力で圧倒した日大三！田村孝之介（日大三）
優勝した日大三。去年は早稲田実業にコールド負けと厳しいスタートになったが、冬の期間が長かった分、じっくりとチーム強化することができたのだろう。また日大三は冬練が厳しいチームで有名だ。その間にじっくりと伸ばしてきた。そして今大会は強打の捕手・小藤 翼が大会5本塁打を放ち、投打の柱・田村 孝之介も一発を打つなど、日大三らしい一発攻勢を見せ、6試合で13本塁打。本塁打を打った打者が7人もいるという恐ろしい様相となっている。山梨開催となる関東大会の球場は広さのある山日YBS球場、富士山が見える山梨県富士北麓公園野球場で行われるが、ここでも自慢の長打力を発揮することができるか。
準優勝の佼成学園も昨秋のコールド負けから一気に勝ち上がったチームだ。何よりもエース・小玉 和樹の成長が大きい。都立篠崎戦（試合レポート）では乱調な投球で、撃ち込まれ、コールド負けを喫した。そこから一冬で大きく伸び、強打の帝京を1失点完投勝利を挙げると、準決勝では選抜帰りの東海大菅生に5失点完投勝利。また小玉をカバーする打線のレベルアップも大きかった。あとは小玉に続く控え投手たちが、強豪校相手に試合を作れる投手になるか。
またベスト4の関東一は1番オコエ 瑠偉、4番森山 将、5番五十嵐 滉希を中心とした打線の破壊力は都内でもトップクラス。夏へ向けて投手陣の強化が課題になりそうだ。東海大菅生は選抜以降、勝俣 翔貴に頼らないチーム作りを行ってきた。まだ満足いく試合はできていないように感じた。ここぞという場面で粘り強い野球がウリの東海大菅生。夏へ向けて、投打を整備し、年ぶりの出場を目指す。
ベスト8では、パワフルな打撃に稲毛田 渉、伊藤 靖晃の2枚看板に安定した野球を展開する帝京、大江 竜聖-今村 大輝のバッテリーを中心に、破壊力ある打線を発揮した二松学舎大附。この東東京二校はやはり甲子園が狙える位置にある学校だろう。また粘り強い野球で、都立唯一のベスト8入りした都立江戸川が、夏へ向けて投打のレベルアップを期待したい。
そして関東一に打撃戦の末、コールド負けをした早稲田実業。このチームの最大の長所は一発ある長打力。今大会3本塁打と加藤 雅樹（3年）とフィーバーを起こした大型スラッガー・清宮 幸太郎（1年）を中心とした打線の破壊力は日大三に匹敵するだろう。5年ぶりの甲子園へ課題は投手陣の整備となりそうだ。
今回のコラムに登場した学校の野球部訪問は以下から！東海大学菅生高等学校【前編】（2015年02月24日公開）東海大学菅生高等学校【後編】（2015年02月25日公開）帝京高等学校（2012年12月21日公開）二松学舎大学附属高等学校（2011年09月12日公開）関東第一高等学校（2014年03月23日公開）関東第一高等学校（2012年07月04日公開）早稲田大学系属早稲田実業学校高等部（2012年07月01日公開）
[page_break:ベスト16以下でも、夏に躍進を期待できるチームは？]ベスト16以下でも、夏に躍進を期待できるチームは？了海航（国学院久我山）
またベスト16以下のチームをピックアップすると、3回戦で帝京に9回裏にタイブレークを演じた國學院久我山は140キロに迫る速球を投げ込む本格派右腕・植田 雄大（3年）、強肩捕手・了海 航（3年）のバッテリーの成長に期待したい。打線の粘り強さは昨年より増しているだけに、西東京の強打のチームを抑える投球術に磨きをかけていきたい。そして秋から春を通じて3試合連続本塁打を放った中尾 将擁する国士舘は、持ち味の機動力野球を夏に発揮させることができるか。
また柴田 迅、嵯峨 悠希、齊藤 慶の3投手の活躍が光った早大学院も夏へ向けて強力打線を抑え込める投球術に磨きをかけていきたいところ。創価は好投手・谷井 怜央（2年）、強打者・伊藤 駿など能力が高い打者を揃え、躍進を期待したい好チーム。八王子はエース左腕・横森 拓也を一本立ちさせようと、3試合すべて完投。3回戦では東亜学園を破るなど、成果を見せた。また打線全体もレベルアップしており、また控え選手の底上げも著しく、理想的なチーム作りができているだけに夏までどんなチームを育て上げるか楽しみだ。さらに打撃型チームとなると、聖パウロ学園が注目。1回戦でサイクル安打を放ち、また3回戦で2本塁打を放った菅野 岳史など打線のレベルが大きく向上した。
また、1回戦で都立片倉の140キロ右腕・矢ケ崎 光と、2回戦で八王子実践の130キロ後半の速球を投げ込む栗田 海人との投手戦を繰り広げた深澤 周平擁する東海大高輪台も夏へ向けて楽しみな存在だ。また日大豊山の140キロ右腕・吉村 貢司郎を攻略した都立日野は打線の破壊力、対応力の高さは、都内でも上位に位置しており、投手力がレベルアップすると、上位躍進が期待できるだろう。
今年の春季大会は後半以降、打の方が目立った。決して投手のレベルが低いわけではないが、東京都の打者の進化が想像以上のものとなっている。その中で、ロースコアで逃げ切れるチームというのが少なく、夏もこのままでいくと打撃戦が展開されそうだが、最後は要所で逃げきることができる守備力の高さも持ったチームが勝ち上がりそうだ。
（文・河嶋 宗一）
今回のコラムに登場した学校の野球部訪問は以下から！都立日野高等学校（2013年08月28日公開）国士舘高等学校（2011年06月30日公開）
