「○○ちゃん萌え〜」「ネコ耳は萌えですね・・・」もはや一般的に使われるようになった「萌え」。そんな中、去る11月23日に「萌え」のメッカともいえる秋葉原において「萌えてはいけないシンポジウム」というシンポジウムが開催された。

 「萌えというものについてしっかりとした議論がされないまま、萌えが一人歩きしてしまっているのが現状だと思うんです。そこで『萌えてはいけない』と一回冷静になって、萌えを見直す機会が必要なのでは」(シンポジウム主催FortuneCookiesの渡辺さん)

 パネリストにいしかわじゅん氏(漫画家)、大月隆寛氏(民俗学者)、岡田斗司夫氏(大阪芸術大学客員教授)、夏目房之介氏(マンガ・コラムニスト)、富野由悠季氏(アニメーション監督)など豪華なゲストを迎え、日本のマンガ・アニメを愛するがゆえの熱い議論が繰り広げられた。

 例えば「うる星やつらのラムちゃんは萌えか否か」という議題。200名の参加者で投票を行ったところ、その反応は6:4で萌えではない、という結果。年代によって萌えか否かという反応は分かれるようだ。

 しかし「現在の萌え系といわれるようなアニメは、かわいいキャラクターありきというスタンスだ。しかし、うる星やつらは魅力的なストーリーがあってのラムちゃんというキャラクターなのであり、うる星やつらは萌えではい」というパネリストからの意見が参加者を納得させていた。

 以前まで「萌え」はプラスアルファの要素であった。しかし「萌え」が流行してしまった今、「萌え」ありきのかわいいキャラクターをいかに作るかというところに作品制作の重点が置かれてしまっているのである。

 萌え関連株の上昇や、萌え市場の拡大など、ビジネスとしては大きな成功を収めた「萌え」ではあるが、文化的な成功を収めたかどうかは今後の「萌え」のありかた次第。

 「20年前、SFの賛否を問う議論がありましたが、今となってはSF的要素はどんな映画でも見られること。それと同じで萌えも、20年後にはいろんな作品に要素の一つとして自然と組み込まれていくのではないでしょうか」(岡田氏)

 ネコ耳もメイドも、当たり前のこととして作品の中に散りばめられてゆく。萌えという言葉は死んでも、その要素は生き続けるんだそうだ。

 流行語といわれるほど使われるようになった「萌え」であるが、ここまで踏み込んだ議論が公にされたのは初めてといえる。萌えが文化となるのか、ただの流行で終わるのか、このシンポジウムが「萌え」の第二期のスタートと言えよう。(加藤克和/verb)

「萌えてはいけない」特設Blog
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