日本だけでなく、メジャーでも活躍した城島健司[Getty Images]

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◆ 日本の構えは小さな三角形 アメリカは大きな三角形

 9つある野球のポジションで、唯一反対方向を向いているキャッチャーというポジション。グラウンド全体を見渡せることができ、扇の要とも呼ばれる。また、日米間で最も違いがあると思われるポジションでもある。

 まず、構えが違う。日本のキャッチャーは体を小さく構え、投げてほしいコースにミットをピタリと構える。ミットと顔の位置も近い。低く構えるため、ミット、マスク、ひざの3点で三角形ができゆえ、ピッチャーも的が分かりやすい。

 アメリカのキャッチャーは、日本と比べ体が大きいのもあるが、大きく構えてミットをコースに寄せたりすることもあまりない。ミットと顔も離れている。大きく構える理由として、マウンドからの距離をより近く感じるほうがピッチャーも投げやすいという考えがあるようだが、悪く言えば大雑把な構えだ。

 また、日本人と比べ股関節や足首が硬く、低く構えることができない上に、ミットだけを低く構えようとするため、ミット、マスク、ひざの三角形は日本よりも大きくなる。日本人から見れば、目標が分散されてピントが合わせにくい構えだ。

◆ 打者の弱点をつく日本の配球 投手が投げたいボールを投げさせるアメリカ

 配球面でも大きな違いがある。日本は、バッターの弱点をつき、バッターが打てないボールを投げさせることが多い。基本的にはキャッチャー主導の配球だ。キャッチャーは、バッティングよりもまず配球からとも言われる。

 アメリカは、ピッチャーが一番投げたいボールを投げる傾向が強い。基本的にはピッチャー主導の配球で、監督やコーチからそれこそ1球ごとにサインが送られることもある。日本でも、経験の浅いキャッチャーがマスクをかぶっているときはベンチからサインを送ることがあるが、アメリカではある程度経験を積んだキャッチャーに対してもサインを送ることがある。MLB中継を見ていると、1球ごとにベンチに顔を向けるキャッチャーの姿を目にすることが日本よりはるかに多い。

 配球のパターンでも、変化球から入り、外角低めのストレート系を集めることが多い日本に対し、アメリカは早いカウントではストレート系で入り、変化球で打ち取るパターンが多い。日本では3ボール0ストライクで変化球を投げることがあるが、アメリカではまずない。日本にやってきた外国人選手が「日本はいきなり変化球から入ることがあり、3ボールでも変化球を投げるから驚く」と口にすることが多いのもそのためだ。

 日米問わず、追い込まれたバッターの打撃成績は極端に下がる。そのため、どんなバッターでも早めに仕掛けるが、ストレート系で入ることが多いアメリカではバッターも当然ストレート狙いでくる。その狙いをかわすために、アメリカのピッチャーはストレート系でも球があまり動かないフォーシームではなく、ツーシームやカットボールなどバッターの手元で微妙に変化するボールを多投するようになった。

 動くストレート系を多投することは、キャッチャーのキャッチングにも関係する。日本ではミットの芯で捕り、いい音を鳴らすキャッチングが褒められる。どんなコースの球でもいい音を鳴らして捕ることが、いいキャッチャーの条件でもあるからだ。

 一方、アメリカではキャッチャーがいい音を鳴らして捕ると不安に感じるピッチャーもいると聞いたことがある。キャッチャーが芯で捕れるようなボールということは、あまり動いていなくてバッターも打ちやすいのではないか? と不安になるというのだ。

 2006年から4年間メジャーでプレーした城島健司も、さまざまな面で苦労した。今後も日本人捕手がメジャーに渡ったとき、ピッチャーや野手と比べ、野球文化の点で大きな壁が立ちはだかるだろう。日本式のキャッチャーがメジャーを席巻するのを見たい気もするが……。

文=京都純典