銀行など金融機関の「休眠預金」を教育や福祉といった公益活動に活用しよう、との機運が再び高まってきた。金融機関は10年間お金の出し入れがなく、預金者と連絡が取れないものを「休眠預金」として扱っている。現在は銀行などの利益に計上され、預金者が気付けば引き出し可能で、その分は銀行の損金になるという運用がされている。

開会中の通常国会に、休眠預金活用のために議員立法で法案が提出される見通しだが、「何に使うか」などがはっきりしておらず、詳細な制度設計が急務になりそうだ。

自民・公明両党議員による議員立法となる見通し

休眠預金の活用はもともと民主党政権時代に浮上した。「東日本大震災の復興や新産業育成などに活用する」などとして、政府の審議会で2012年2月から活用方法などの議論を開始。同年9月には、政府として休眠預金の活用についての調査報告書をまとめ、活用開始から10年目には最大で約8500億円を成長分野の新産業育成などに使える――などとした。ただ、当時の銀行界は、対応する作業の負担が重いことなどから慎重姿勢。民主党政権の支持率も低下しており、宙に浮いた格好になっていた。

ただ、自民党や公明党も休眠口座の活用については批判的なわけではなく、国の財政も厳しい折、「いくらかは足しになる可能性もある」といった判断もあったようだ。政府内では民主党主導かつ銀行業界が慎重というややこしい案件だけに、静観する向きが多い。このため、自民・公明両党議員による議員立法となる見通しだ。言い出しっぺの民主党も賛成すると見られている。

自公の議員立法で法案が出される見通しが立ったのは、慎重だった銀行界が協力に転じたことが大きい。ミソは過去に発生した休眠預金には遡って適用せず、法案成立後に発生したものが対象となるよう、限定運用する点だ。

米英仏のほか韓国、アイルランドなども活用

民主党政権時代には、「銀行が不当に利益を得ているお金を吐き出させて成長分野やインフラ投資にあてる」というニュアンスも見え隠れして銀行界の反発を招いていた。しかしそこは金融界とも長年付き合いのある自民党。うまく銀行界を納得させる落としどころを見つけというわけだ。

休眠預金自体は毎年850億円程度発生しているとされる。このうち350億円程度は預金者が気づくなどして払い戻されているため、500億円程度が活用できる財源となる計算。ただ、休眠預金を活用する制度が始まると、預金者への注意喚起が進むため、実際に活用できるお金が減ることも予想されている。

現在描かれている制度のイメージでは、発生した休眠預金は銀行などに手数料を払われた上で預金保険機構にいったん移される。銀行は引き続き払い戻し請求には応じる。その上で預金保険機構から別の資金配分団体を通じて、必要に応じて融資や補助金の形で教育や福祉関連のNPO法人などに資金を流す――という。ただ、誰にどういう名目で融資し、補助金を出すかなど、今後の検討課題は多い。

とはいえ、米英仏のほか韓国、アイルランドなど海外では休眠預金の活用が進んでおり、フランスのように国家予算に組み込む国もある。日本でも有効活用しようとの流れは止まらないと見られる。