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現地20日、テキサス・レンジャーズはデトロイト・タイガースからプリンス・フィルダー+$30Mを、タイガースはレンジャーズからイアン・キンズラー選手を獲得。このトレードが、今オフ最初の大きな動きとなった。



フィルダーは日本でもプレーしたセシル・フィルダーの息子で、父親譲りの豪快なパワーが売りの29歳の1塁手。ミルウォーキー・ブリュワーズ所属時の2007年には史上最年少で50HRを記録するなど、以降も期待を裏切らないパワフルな打撃を毎年安定して示してきており、また5’11”(=180.3cm)、275lb(=124.7kg)と非常に巨漢でありながらも直近5年で欠場したのは1試合のみと優れた耐久性も備えている。もっとも今季は39試合に出場したデビューイヤーを覗いたキャリアのワーストである25HRに止まっており、来季はどのような成績を記録できるのか懸念が残るところでもある。フィルダーの契約は2020年まで、毎年$24M、計$148Mもの巨額な契約が残っている。

レンジャーズがレギュラーの2塁手であるキンズラーを放出した背景には、今季開幕前の様々なプロスペクトランキングにて全体1位の評価を得たまさしくトッププロスペクトであるジュリクソン・プロファーの台頭がある。プロファーは、昨年僅か20歳でメジャーデビューを果たした遊撃手だ。しかしレンジャーズの正遊撃手には2022年まで契約の残るエルビス・アンドラスが居たため、そのアンドラスか、プロファーか、あるいは正二塁手のキンズラーの三者の内誰かがトレードに出されるだろう、という事は長い間言われ続けてきたことである。今まさにそれが実現され、プロファーはキンズラーの抜けた二塁を守るだろうとされている。レンジャーズは飽和気味だったミドル・インフィールダーを放出して、求めていたクリーンナップを打てる強打者の獲得に成功したのだ。



キンズラーは2006年のデビュー時から今年までレンジャーズでプレーした生え抜きであった二塁手。非常にオールラウンドな選手で、アベレージ、パワー、選球眼、走力、守備に於いて優れたものを持っているが、毎年成績が項目によって上昇したり下降したりとムラのある選手でもある。2011年には.255/.355/.477&32HR&77RBI&30SB、守備でもDRS+18&UZR/150=17.3と非の打ちどころのないパフォーマンスを見せてWAR7.3、MVP投票では11位にランクインする素晴らしいシーズンを過ごしている。31歳とまだ老けこむ年齢でなく、レンジャーズの本拠地のレンジャーズ・ボールパーク・イン・アーリントンよりも打者有利であるタイガースの本拠地コメリカ・パークで再び2011年の輝きを取り戻すことが出来るかもしれない。キンズラーの残りの契約は、2014年と2015年の$16Mをピークに徐々に安くなっていく計4年$57Mに2018年のチームオプション$10M(バイアウトは$5M)が付いたもので、フィルダーのものと比べると非常に安価であり、リスクは低い。

タイガースはオマー・インファンテがFAになり空いた2Bをキンズラー獲得によって埋めることに成功。またフィルダーが抜けることによって、怪我で不安を抱えていたミゲル・カブレラを1Bに専念させることができるというメリットがある。傘下トップのヒッティングプロスペクトであるニック・カステラノスが三塁を守ることが出来るため、攻撃面でのマイナスはほとんどなく、むしろ守備面では、カブレラ&フィルダーがコーナーを守る以前の布陣よりも盤石なものにする補強になったと言えそうだ。


こうして総括してみると、どちらもニーズに合った選手を獲得できたwin-winのトレードだと現時点では言えるように見える。しかし、タイガースはフィルダーを放出したことによって生まれた金銭的余裕を以って、今年のサイヤング賞に輝いたマックス・シャーザーとの契約延長の交渉に取り組めるなど他の面においてもメリットを享受することができるということを忘れてはならない。一方のレンジャーズに取っては、フィルダーの大型契約を受け入れた形であり、もちろんリターンも大きいが、怪我によって離脱するようなことがあればかなりの痛手を負う事になるハイリスクな補強となっている。この動きからレンジャーズはかなり強気で勝負に出ていることが窺われ、事実まだ打者の補強を目論んでいるとの話も聞こえる。

インパクトの大きいこのトレードは、両チームに一体何をもたらすことになるのだろうか。答えは来シーズンの戦いの中で明らかになるはずだ。


Text by Kensuke MORIMOTO
写真:http://www.flickr.com/photos/27003603@N00/8930519324/in/photolist-eBafg7-dnDYf7-dnDY1L-cx6x6E-cx66Kj-cwwEHU-cxGDRm-cwwQiQ-cwxqEo-cwxsuu-cwwWSs-cwyK69-cxMqpC-cx9w5h-cwwVwE-cxKGuf-cwyHxh-8xm5C3-cxFRVq-8xi4Me-dnDT9x-ezcaNi-ezcdZ2-ezfkN3-ezVRmL-cxEHE9-cx5orC-cwyUmm-cxLAJo-cwyCmy-ezjpbW-eB6Lhd-cxLXMW-cxM1V9-cxDPX1-cxDKJJ-ezf1HV-afoBWf-8p85Eh-afkNa2-cwA5cm-cxEbwm-cwA3sC-cxDTcG-cwxo6L-a6Q9To-ezfikA-cx6uVf-cxFP7W-cwyDLU-cx6WFm