7月12日から試験運用を開始したサイクルポリス。最高時速は約40キロ、小回りの利く機動力を生かし、犯罪に立ち向かう!

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埼玉県警は7月12日から、「ハイパー・サイクル・ポリス」(HCP)の試験運用を始めた。

これは、スポーツタイプの自転車の一種であるクロスバイクで、警察官が街中をパトロールするというもの。HCPには、警察マーク入りのヘルメットと、埼玉県警のロゴがあしらわれたリュックも支給される。クロスバイクで警察官が日常的にパトロールを行なうのは、全国で初の試みだ。

都市部を中心にこのところ広まっている自転車ブームにより、スピードを出せる高性能車による交通違反や事故、あるいは公道での使用が禁じられているピストバイク(ブレーキなしのレース用車両)に乗る者が、全国的に急増している。特に埼玉県は、もともと県民ひとり当たりの保有台数が全国1位という自転車どころであり、人口も多いことから、昨年の県内での自転車事故による死亡者数は全国ワースト3位だった。こうした事態に対応するため、埼玉県警は今回、10台のクロスバイクを導入し、浦和、川越の両署管内から選ばれた交番に配備したのである。

クロスバイクなら、高性能自転車に乗る違反者の追跡や指導・取締りが容易になるし、乗務するHCP自身がヘルメットをかぶっていることから、自転車用ヘルメット着用の普及促進を県民にPRすることもできる。ちなみに浦和、川越の2署が選ばれたのは、県内他地域に比べて事件・事故の取り扱い数が多いことに加え、

「浦和は、繁華街・都市部の代表として。そして、川越は古い街並みが残る観光都市であり、狭い旧道も多いので、機動力を持ちながら交通渋滞の影響を受けにくい移動手段が必要でした」(埼玉県警察本部)

との理由による。今後、埼玉県警は、HCPや一般県民からの声を集め、導入の効果大との反応が多ければ、段階的に台数を増やしていく方針だ。

と、自転車好きならここで気になるのが、HCPで採用されたクロスバイクがなんなのかということ。独自調査の結果、週プレはついに車種を突き止めた!

ブリヂストンの「オルディナ E3」がその答えだ。世界のシマノ製21段変速機が搭載され、フロントフォークには、道の段差からの振動や衝撃を和らげるSRサンツアー製サスペンションを装着。街中での利便性に優れるサイドスタンドもついている。

ただし、これらは市販のE3の標準装備。HCP使用車の白いフレームもオリジナル塗装ではなく、もともとカタログ上にある標準色だ。「埼玉県警」のペイントやステッカーもない。つまり、パトカーや白バイと違い、HCPでは一般人と同じデフォルト状態の自転車を使っているわけだ。メーカー発表の標準小売価格は4万3800円(税込)。意外に庶民的なグレードなのである。もっとも装備やフレーム色については、現場のHCPや県民からの意見を参考に追加、変更していく可能性もあるとのこと。

とはいえ、基本、フツーの自転車であることに変わりはない。ウン十万、ウン百万の高性能車に乗って違反や逃走をする容疑者を取り締まれるのかと不安を覚えるかもしれないが、そこは心配無用。

「各交番に配備されたクロスバイクは、同じ場所で勤務する警察官の誰もが乗れるというわけではありません。体格、体力などを考慮して専任担当者を選び、HCPとしての仕事に当たらせています」(前出・県警本部)

車両性能で劣る分は、自前の“エンジン”の馬力で補ってもらうというわけだ。それに高額・高性能車で交通違反を繰り返す不届き者に限って、技術や体力が伴わないヘタレが多かったりする。

屈強な警察官のなかからさらに選抜されたHCPの手、いや脚にかかれば、悪質なサイクリストや自転車ツーキニストなど、これからは一網打尽かも?