テキスト系妄想メディア「ワラパッパ (WARAPAPPA )」より

今から約30年以上も前、僕は思春期の中にいた。思春期ということは同時に成長期でもある訳で、同級の友達はどんどん成長していった。1年間で15センチくらい背が伸びた。寝ている間に骨がきしむのが分かった。成長痛がつらい。順調に成長期を迎えた友人たちは口々にそんなことを言っていた。

僕にはそういうドラスティックな成長期がなかった。成長痛も一切経験していないし、「骨がきしむ」という感覚を味わったこともない。一番身長が伸びた時期でも、1年間で5、6センチだったように記憶している。それは、当時の僕にとっては結構な悩みで、身長が伸びるためだったら魂だって売る、くらいの気持ちがあった。

そんな当時の僕にグイグイ響いたのが、主にプロレス雑誌に載っていた「背が伸びる広告」である。かなりの割合で「背が伸びる広告」が掲載されていたから、僕のように身長の悩みを抱える若者が沢山いたのかもしれない。それらの広告には系統が2つあって、1つはプロテインを飲んで背を伸ばす方法で、もう1つはストレッチなどの運動によって背を伸ばすというものだった。

プロテイン系だと、例えばこういう広告だ。




背が高く大きいものの象徴として「ガリバー」を商品名に採用している。「アメリカで開発されたこの美味しい秘密のチョコレート味のボール」とある。簡単に言えば、背が伸びるチョコボール、というところだろうか。


脚がのびることに注力したプロテインもある。




1日1粒のむだけ、というお手軽感が嬉しい。「身長増進用100%天然栄養補助食品」と、安全・安心も謳ってくれているので更に嬉しい。


力強いビジュアルで訴求する広告もある。




アメフトの選手がカメラ目線でキックしている。これだけ長い足をこんなに高く上げられたら、もう買わずにはいられないと思う。CALCIUM D-400、という商品名が「最先端なプロテイン」という雰囲気を演出している。これも「脚がのびる」プロテインと同じく、1日1回飲むだけである。


イラストによる訴求のパターンも。



「キミはあと何センチ背が伸びる!!」とビックリマークで閉めている。あと何センチ、を受けるとしたらクエスチョンマークで終わるのが普通だと思うが、ビックリマークである。どういうテンションでこれを読んだらいいのか分からないが、左側にハンサムな男のイラストがあるので大きな効果が期待出来る。

「異性に注目される」と書いてあるのが分かる。

背を伸ばしたいという願望は、同時に異性にもてたいという気持ちでもあり、それは何も男性に限ったことではない、ということが次の広告を見ると分かる。





こちらは特殊強化プロテイン「スーパーキッド」の他に、ストレッチ長身術指導書を同時進呈してくれるという。「いっぺんに3.5cmも伸びて感激」とレオタード姿の女性が笑っている。


プロテイン系ではなく、ストレッチなどによる長身法を謳うのが、次の広告だ。





科学的スピード身長増進法、のびるまでの完全責任通信指導付、とある。科学の力で身長を伸ばす、という自信が垣間見える。





やはり身長の悩みに「遺伝」はつきものである。僕の両親も身長が低い方だったから身長は伸びないもの、と決めつけていたのだが…。メンデルが登場して勇気づけてくれている。

実際、メンデルが「背が低いのは遺伝ではない!」と言ったのかどうか、僕には分からない。ただ、メンデルの左側のグラフがざっくりし過ぎているのが少し気にかかる。





身長の悩みは世界的な広がりを見せていたようだ。アメリカのヤングも、オーストラリアのヤングも、長身法によって夢を勝ち取っている。

長身法のグローバルな広がりは、次の広告を見ても明らかだ。




日本、アメリカ、イギリスの3国で共同研究を行ったらしい。目標15センチという強気な姿勢も、グローバルな研究による自信の表れであろう。


さらに、身長が伸びるだけではなく様々な効果を約束する方法がある。





あしが長く伸び、背が高く、スマートにやせて、腕力で投力・パンチ力、すばやい身のこなし。

背が伸びることで、あらゆるパワーを身につけることが出来るのだ。
このスピードナチュラルボディ法は、これ以外にも次のような効果があるらしい。





整理すると

身長が伸びる

スマートにやせる

パンチ力、走力、ジャンプ力、投力がつく

身のこなしもすばやく

目が良くなる

という、夢のような長身法なのだ。
その結果として、




美女にもてる、という結論に至るのである。




30年以上前、このような長身法の広告が沢山あった。身長に悩みを抱いていた当時の僕は、このような広告を吟味して、最終的にある長身法に手を出した。1万2千円くらいを振り込んで、届いたのは1冊の本だった。そこには「背が伸びる体操」が図解で説明されていて、1日1ページずつ実践する形式だったように記憶している。体操の内容は主にジャンプで、毎日ジャンプばかりしていた。

結果、効果はゼロだった訳だが、それは僕が途中でジャンプに飽きてしまったせいだと反省している。あのテキスト通りにジャンプを続けていたら、2メートル越えもない話ではなかったであろう。




この記事の元ブログ: 本当にあった、背が伸びる広告