“ボールは丸い(Der ball ist rund.)”、日本サッカーの父とも言われるドイツ人のデットマール・クラマー氏の数多くの名言のひとつであるが、昨今、この言葉が頭の中をよぎっている。試合は、行ってみないと分からない。クラマー氏が日本代表のコーチとして招聘された時、僕は小学生の低学年であったので、日本サッカーへの貢献度については、その後、知ることになった。そして、その後、僕がサッカー界で仕事をすることになり、お会いする機会を持てたことは幸運であった。

 今般、さいたまダービーに頗る興味を抱いていた。さいたま市、旧浦和市で生まれ育ち、浦和と大宮の文化、歴史、プライド、価値観の差異など、幼少の頃から独自性が二分されていたように今でも感じているからでもある。浦和レッズにも在籍した時代もあって、試合は思いの外、素晴らしいものであったと思う。NACK5スタジアムが超満員で、両チームのサポーターの熱き応援はヨーロッパや南米のダービー、クラシコを彷彿とさせる雰囲気を作り上げていたと感じている。

 結果は、好調同士の対戦でありながら、僕の生まれ育った隣町の大宮アルディージャが勝利して、J1の連続試合無敗記録を樹立した。ポゼション率は浦和レッズが勝っていたと思うが、大宮アルディージャのベデルニック監督の対戦相手の分析に基づいた運動量の多さと至る所でもハードにマンマークを敢行、自チームのストロングポイントである高さも活かし、ズラタンの高い能力をも活用して勝利に導いた。やはり、”ボールは丸い”ことを、証明した素晴らしい試合であったと思う。

 一方、ヨーロッパのチャンピオンズリーグ準決勝ファーストレグ、バイエルン・ミュンヘンがFCバルセロナに4-0の完勝というよりも大勝をテレビ観戦した。ベデルニック監督とおなじことを、ユップ・ハインケス監督もコメントしている。分析と自チームの運動量、ハードマーク、そして、ストロングポイントである高さを活かせた、と。ポゼションはバルサに及ばなくても、勝つ方法を信じていたようである。やはり、”ボールは丸い”ことを立証させた。両監督とも、老練である。

 話は変わってしまうが、昨今、アメリカンフットボールの世界で驚かされるニュースを眼にした。アメリカ合衆国で長い歴史のあるナンバー1の人気スポーツであるプロのNFL、デトロイト・ライオンズに変わった逸材が登場することになったことである。28歳のノルウェー人、ハーバード・ルグラン。190cm、身長はあるものの、アメリカンフットボール経験では素人である。キックの精度が素晴らしくて、動画サイトで自身のキッカーとしての映像を投稿した所、反響が凄く、ふたつのチームからの練習参加を要請された。結果はネガティブなものであったが、ライオンズが目を付け、特訓をして、3年契約1億5千万円で契約したというのである。今年のシーズン開幕の9月に向けてトレーニングに余念がないという。NFLのボールは楕円であるが、”ボールは丸い”、何が起こるか分からない、シンデレラストーリーである。

 昨今、知人が運営する会社で”Players Post、http://www.players-post.com/” という日本初のサッカー専用動画サイトがスタートしている。現時点では、投稿が始まったばかりであるが、これから、”Players Post” が認知されていくに従い、今後、サッカー界でも、国内外の知られていなくてもポテンシャルのある選手の発掘や発見にNFLのルグランのようなことが起こり得ることと期待している。