【書評】『妻の病気の9割は夫がつくる 医師が教える「夫源病」の治し方』 〜夫婦関係の適度な距離を探っていく手がかりに〜

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妻の病気の9割は夫がつくる 医師が教える「夫源病」の治し方』(石蔵 文信 著/マキノ出版)、何とも衝撃的なタイトルだ。
著者の石蔵氏は、大阪市内の病院で全国でも珍しい「男性更年期外来」を開設し、夫婦同伴の治療を行うなかで、患者本人だけでなく、その妻も同じように深刻な体調不良に苦しむケースが多いことに気づく。

その症状は、頭痛、めまい、耳鳴り、不眠など、これまで「更年期障害」とされてきたものばかりだ。そこで、妻の夫に対する不満を聞くカウンセリングを行ったところ、多くの女性の症状が改善されたという。

夫の何気ない言動や夫の存在に対する不満がストレスとなり、妻の心身に不調をきたす。このように、夫との関係が引き起こすストレス性の症状を、石蔵氏は「夫源病(ふげんびょう)」と名づけ、その対策に力を入れている。

更年期ではなくても、持続的なストレスは自律神経の乱れを起こし、心身に様々な不調をもたらす。つまり、若い世代であっても、夫にストレスを抱える女性ならば夫源病になりうるということだ。

この本では、夫源病の引き金となる場面を「生活習慣」「お金」「家事」「子育て」「両親」に分け、事例に対するアドバイスとともに紹介している。

石蔵氏のアドバイスには度肝を抜かれた。「今日あった出来事を話しても上の空」な夫への対処法は、「壁に向かって話すよりマシと思おう!」だというのだ。最近、ネット上の一部で話題になった書籍、『夫は犬だと思えばいい』(高濱 正伸 著/集英社)の衝撃も記憶に新しいが、さらに斬新な発想の転換法といえよう。

「夫は話を聞いてくれないけど、壁よりはいっかあ〜☆」ってすっごくポジティブ!
……しかし、そういう人はそもそも夫源病とは無縁じゃないのかと問いたい。個人的には。

さらに、「自分は夜遊びするのに妻には許さない」夫についての回答では、「自分は好き勝手したいが妻のことは束縛したがるのが夫の本質」と言い切っている。夫婦とはなんなのか。そんなことを考えていたら余計眠れなくなりそうである。


事例に対するアドバイスは、それぞれの夫婦関係や事情によって様々だから何とも言えないが、解決の方向性としては、「夫が妻を対等な個人として見ること」「日常の会話によるコミュニケーションを復活させること」を軸にしており、これは賛同できる。

それにしても、「対等な個人として見ること」と文字にするとおかしさが際立つ。対等って当たり前すぎて! またこの本には、こんな夫は危ない!という「夫源病チェックリスト」なるものがまとめてある。

「人前では愛想がいいが、家では不機嫌」
「上から目線で話をする」
「家事に手は出さないが口は出す」
「妻や子供を養ってきたという自負が強い」
「『ありがとう』『ごめんなさい』のセリフはほとんどない」
「妻の予定や行動をよくチェックする」など。

一部ではあるが、イラっとくる内容だ。
一方で、妻は「我慢強い」「几帳面」「責任感が強い」などの「良妻賢母」タイプが夫源病になりやすいとしている。このタイプは、「これくらい我慢しなければ」「夫に従うのが妻としてあたりまえ」と不満をため込んでしまうという。


さて、夫が体調不良の原因だとわかったら、夫に対するストレスを取り除かなければ治らない。最終章では、「夫源病の治し方」を紹介している。夫源病への対処法として、ホルモン治療や抗うつ剤より効くのが、「口げんか」だという。

石蔵氏は「口げんか」を「プチげんか」と名づけ、勧めている。

夫に対する不満を口に出せずに我慢し続けていることが、心身の不調を悪化させているのだから、日頃からお互いに本音をぶつけることができれば問題をこじらせることを回避できるという。口げんかを繰り返すことで、本音を言いやすい環境にしていくことが肝心だそうだ。

コツは、「イラッとしたその場で言うこと」だそう。怒りが頂点になるまで不満をためこんで爆発させるのは逆効果なのだとか。けんかをして夫の嫌なところが改まらなくても、その場で怒りを表すことで気持ちがスッキリするという。

さらに、夫源病が進行している場合は、夫から距離を置く「プチ別居」を勧めている。プチ別居で夫から距離を置くことにより、お互い冷静になれて夫婦関係が改善する場合もあるという。

そして最終手段として「離婚」という選択肢を示し、その際の注意点を教えてくれている。「冷静な状態で」「あらゆる解決策を試みて」「経済的にやっていけるか」を視野にいれて判断すべきとしている。

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誰かと暮らすということはストレスが溜まるものなのだ。それは当然のことだ。しかし、誰かと生活を共にすることによって得られる安心感や幸福感というものがあるのも確かであり、そのバランスが崩れた時、夫源病になるのであろう。そしてそれは夫婦関係を見直すきっかけになるともいえる。

この本の最後は、「無理にいい夫婦を演じようとせず、お互い悪口を言い合いながらも、気の置けないルームメイト感覚で付き合うのが、中年以降のベストな夫婦のあり方なのかもしない」という言葉で締めくくられている。

テレビドラマのような理想の夫婦にはなれなくても、自分たちらしい関係を保てることが肝心なのだ。お互いを尊重した上で、ストレスをためないようにこまめに不満を吐き出し、適度な距離を探っていく手がかりになる一冊であるといえる。


山本 佑美山本 佑美
フリーライター。在宅テレビ評論家。インターネットを軸として結婚、出産、子育てにまつわるあらゆる情報を収集、分析、発信している。自宅を中心に精力的に活動中。家族は夫と2歳の娘。江東区在住の愛鳥家。うずらとインコの飼育経験有り。