コメ価格高止まりの原因は全農の「前払い金」値上げ?

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みなさんは、どれくらいの頻度で米を食べているのだろうか。筆者は週に3回は自炊をし、その8割で米を炊いている。パスタやうどんも茹でるし、パンも食べる。だが、圧倒的に「おかずと汁と米」という組み合わせの食事が多い。




最近、食生活が多様化したことにより、あまり米を食べなくなった人が多いと聞く。実際に、「国民1人当たりのコメ消費量は50年前の半分まで減った」のだと言う(東京新聞、2012年11月16日付)。




食生活の多様化とともに、米を食べなくなった理由のひとつとしてあげられるのは、その値段の高さである。美味しい米は高い。例えば、1日2合の米を30日ほど食べ続けると、約9kgが必要となる。安いお米なら10kgで3000〜4000円くらいだが、あまり美味しくない。美味しいと思える米は、10kgで5000円くらいになってしまう。米代で月5000円は、確かにちょっときつい。




■豊作なのに、なぜ高いのか?




今年は、米が豊作である。よって、「秋口には値下がりするとみられていた」が、米の値段は高止まりしたまま(産経新聞、2012年11月13日付)。おいしい米が安く買えると期待していたので、残念で仕方がない。豊作なのに高値である原因のひとつは、全農による「前払い金」の上乗せだと言われている。




米の値段は、1942年から食糧管理法によって、同法が廃止される1998年までほとんど政府が決めていた。廃止になってからは、生産者米価で政府が買い上げ、消費者米価で一般に販売されていたのが、コメ価格センター(正確には、全国米穀取引・価格形成センター)という農水省の外郭団体で入札され、コメの値段が決まるようになった。




そのコメ価格センターも今年3月に廃止となり、米の値段は市場の需要と供給のバランスに基づいて算出されるようになる。市場に流通する米のうち、6割を農協の元締めである全農(全国農業協同組合連合会)が取り扱い、4割は生産者が独自のルートで流通させている。そして、全農が扱う米には、米の原価のほかに「いくつもの手数料や金利」が含まれている。




■「前払い金」の値上げは組織の自己保存が目的?




生産者から米を買う際、全農は「前払い金」というお金を払う。消費者が米を買う前に、生産した米の原価を生産者に払うのである。その後、一定の期間が経過し、実際に販売した米の量が分かった時点で、次の「前払い金」から「いくつもの手数料や金利」を差し引いだ額が、全農から生産者に払われる。




全農は今年、生産者に対する「前払い金」を10〜20%ほど上乗せした。この上乗せには、言うまでもなく全農が得る「いくつもの手数料や金利」の分も含まれている。「前払い金」が上がれば、米の値段も上がる。近年、流通を全農に頼らない生産者が増えたことから、全農が自己保存に必要な取り分を「前払い金」に反映させたようにも見える。




米の流通に関して、すでに全農の存在はお荷物になりつつあるのではないか。専業で米を作る生産者の多くは、全農に余計な手数料や金利を払うことなく、独自のルートで米を流通させているのだ。そうやって独自ルートで流通する米が、適正な値段の基準になるべきであろう。組織が自己保存のために徴収する手数料や金を含む6割の米の値段によって、米全体の値段が高止まりしているのではかなわない。




いずれにしても、国内の米の流通がこんな調子では、TPPに参加するのは時期尚早だと思わざるをえない。仮に参加するにしても、まずは国内で無駄に高い米が流通しないようなシステムを整備すべきではないか。それから参加しても、決して遅くはないと思うのだが。




(谷川 茂)