“2年縛り”とは、ケータイの基本料金を割り引く代わりに、2年間ごとの契約継続を求めるもの。ただし、更新月以外に解約をすると9975円もの解約金がかかってしまう。auの場合、「誰でも割」がそれにあたり、特定の料金プランが50%割り引かれるのだ。

しかし、この「2年縛りは不当である!」とキャリア3社を訴えているのが京都のNPO法人「京都消費者契約ネットワーク」だ。

7月19日、一連の訴訟の第2弾である、対KDDI(au)裁判の判決が京都地裁で言い渡された。第1弾のNTTドコモとの裁判では、原告の請求を棄却した京都地裁だが、今回は一転。なんと、KDDIに対して「契約を締結するに際し、解約金条項を内容とする意思表示を行なってはならない」、つまり、「現行の2年縛りが不当である」という内容の判決を下したのだ。

京都消費者契約ネットワークの長野浩三弁護士が今回の判決の意義を語ってくれた。

「解約金条項について差し止め命令が出たことは大いに意味があると考えています」

しかし、先の対ドコモ裁判とはまったく逆の結果なのはどうして!? ケータイの料金制度に詳しい後藤一泰氏はこう語る。

「今回の裁判では、利用者が解約した際のKDDI側の損害額を月4000円と算出したのです。すると2年縛りの契約期間満了まで残り1ヵ月、2ヵ月の利用者が解約した場合、解約金9975円がその損害額を上回ることになります。2年縛りの解約金は、残りの月数に関係なく一律9975円ですから、それは適切な額ではないと判断されたのです」

となると、KDDIは今後2年縛りを利用者に?押しつける?ことはできなくなる!? また、2年間の契約期間満了まで残り1ヵ月、2ヵ月の利用者は解約金を支払わなくてもOK?

「いえいえ、この判決がそのまま確定するわけではありません。相手は100 %控訴してきますから。こちらも主張の多くが認められていない以上、控訴します」

と語るのは、前出の長野弁護士。「100%控訴する」と指摘されたKDDIにも話を聞いたが……。

「今回の判決では当社の主張が一部認められず、遺憾に思います。判決内容を確認し、控訴するかどうかも含め、検討中です。現時点では、販売政策などへの変化はありません」(KDDI広報部)

と、涼しい答え。態度は留保しているものの、今回の地裁判決を受け入れて「2年縛り撤廃」に動くことはまずなさそうだ。

ケータイ研究家の木暮祐一武蔵野学院大学准教授は、今回の判決を以下のように評価する。

「わが国の通信サービスをめぐる問題で、今回のように消費者側の意見が受け入れられることは非常にまれで、画期的な判決だと思います。KDDIは2年間の長期契約の見返りが『基本使用料の50%オフ』としていますが、今回の裁判で、約8割のユーザーがこの割引施策を選択していることが明らかになりました。それで経営が成り立っているなら、基本使用料の根拠自体が揺らぎます」

そして木暮教授はKDDIの値引き制度の問題点についても言及した。

「また、キャリア各社は、端末代金の24回分割払いを導入する一方、2年間月々の料金を値引きする『月々サポート』『毎月割』『月月割』などの制度を導入しています。ところが2年以内に解約すると、分割で支払っていた端末代金の残額を一括精算しなければならない上、こうした割引制度も消滅し、多額の支出が必要になる。つまり、解約金による2年縛りがなくても、『2年以内に解約しづらい状況』はつくられているわけです。キャリア各社は、2年縛りや解約金を廃止し、サービスや料金で真っ当な競争をすべきです」

次の注目は、秋にも下される予定の、対ソフトバンクモバイル裁判。しかし、ここでまた「2年縛り不当」という判決が出ても、控訴審へ結論が持ち越されることは必至。木暮氏の言う「キャリア同士が真っ当に競争する時代」には、まだまだ時間がかかりそうだ。