今年のプロ野球オールスターゲームのファン投票は白けるものだった。パ・リーグで日本ハムから最多タイの8人が選ばれ、関係者たちは大慌てするばかり。球界の人気回復がおぼつかない状況だけに、イメージダウンは避けられない。

これでは「セ・リーグVS日ハム」の声も

ファン投票の結果が発表されたのは6月25日のこと。パのメンバーを聞いてびっくり。先発投手の斎藤佑樹をはじめ、抑え投手、捕手、一塁手、外野手3人、指名打者の計8選手が日本ハム所属。「なんでこの成績で・・・」と思われる選手もいた。

真っ青になったのは運営側だ。「組織票といわれるかもしれないな」と声を落とした。報道陣からも、「これではセ・リーグと日本ハムの試合だよ」

残る内野の3ポジション(二、三塁手、遊撃手)でも日本ハムの選手が2位。日本ハムのファンが頑張った結果とはいえ、偏った投票であることは間違いなかった。

このファン投票から3日後の28日に選手間投票が発表された。それによると、選ばれた日本ハムの選手は3人。ファン投票と重なったのは一塁手の稲葉篤紀、外野手の糸井嘉男の2人だけ。もう1人は二塁手のファン投票2位だった田中賢介。

ファン投票と選手間投票の違いを象徴していたのが先発投手。選手間投票で選ばれたのは楽天の田中将大。つまり「高校時代からのライバル」がそれぞれ1位となったのである。人気と実力の内容がはっきり出たといえる。

選手間投票発表の翌日、29日にその斎藤と田中両投手が先発登板した。斎藤は西武に本塁打を浴びるなど中盤でノックアウト。打線が盛り返して敗戦投手こそ免れたものの、開幕直後の勢いは消えていた。一方の田中はソフトバンクを完封。「本来の姿」と星野監督を満足させた。

「ファン投票1位でまた夢がかなった。自覚とプライドを持って投げたい」と斎藤。田中は「(選手間投票1位は)ほんとうにうれしい」と笑顔を見せた。新しいプロ野球のライバル物語は真夏の祭典で最高の見せ場となりそうである。

日ハムは過去にも「ファン投票」で騒ぎを経験

実は1978年にも、日本ハムの選手が8人選ばれている。このとき、日本ハムが何をしたかというと、2選手を出場辞退させてしまった。「組織票だ」と騒ぎが大きくなり、球団はイメージダウンを恐れたための措置といわれたものだ。

「日本ハムは食品会社。消費者の抵抗を気にしていたことは事実。おかしな投票と認めてしまったようなものでした」。当時をよく知る関係者の回顧談だ。

日本ハムはファン投票でこんな経験もしている。1980年、パは3人の外国人選手が1位になった。当時、「外国人枠は2人」と決まっており、得票数の少なかった日本ハムの一塁手トニー・ソレイタの出場が消えた。どこがファン投票だ、と怒りの声が上がった措置だった。

今回の投票で浮き彫りになったのは、日本ハム以外のファンの行動である。野球は見るが、投票は別物ということなのだろうか。やはりプロ野球の人気低迷を表しているのだろう。スター選手がそろう球宴も魅力がなくなったと思うと寂しい限りである。

(敬称略 スポーツジャーナリスト・菅谷 齊)