このキーホルダーは、ドイツでひとつひとつハンドペイントされているそう。各630円。輸入雑貨のオンラインセレクトショップ blah-blahでも購入可能。

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ちょびヒゲをはやし、愛嬌たっぷりの表情がかわいい、おじさんのキーホルダーが気になっていた。ユニークな風貌で、背中に羽根がついたバージョンもあるのだが、とても天使には見えないし……。一体、何のキャラクター!?

そこで、この不思議なキャラクターについて、輸入販売元・パドルビーに問い合わせてみた。すると、このおじさん、ただものではなかった!

彼が生まれたのはドイツのミュンヘンで、本名はアロイス・ヒンゲル。トーマス・ルドヴィクという作家が1911年に書いた『天国のミュンヘン人』(原題:Ein Munchener im Himmel)という本があり、その主人公がこのおじさん=アロイス。のちにアニメーションにもなっているほど、ドイツでは超有名なキャラなのだそう。

ここで彼のストーリーを紹介したい。

アロイスはビールとタバコが大好きな、典型的ミュンヘン人。ミュンヘン中央駅のポーターとして働いていた彼は、ある日突然、仕事中に倒れて死んでしまった。そして、2人の天使に連れられて、天国へ。

天国で神様の使徒・聖ペテロから、『今日からあなたは“天使アロイシウス”となり、毎日朝8時から正午までは聖なる音楽を奏で、正午から夜8時までは聖なる歌を歌って過ごしなさい』と言われたアロイス。

「え、毎日朝8時から夜8時まで? 一体いつビールが飲めるんだ!?」などと思いながらも、聖歌を歌ったり、ハープを弾いたりして、とりあえず過ごし始めた、アロイス改め“天使アロイシウス”。でも、タバコもビールもない世界では、ミュンヘン人はとても生きられない!

案の定、そんな生活を我慢できなくなってきたアロイシウスは、ストレスが溜まって言動が凶暴化。すると、アロイシウスの素行の悪さに聖ペテロも困り果て、神様に相談。すると神様も困ってしまい、とうとう「アロイシウスを生き返らせるように」と命じる。

神様はさっそくバイエルン州政府に「アロイシウスを生き返らせるので、彼が神様からの手紙を持って行ったら、戸籍を再登録してほしい」と、正式な手紙を書いて送った。その言葉にとても喜んで、地上に舞い戻るアロイシウス。

ところが地上に戻った彼は、州政府に向かう途中、ホーフブロイハウス(ミュンヘンの超有名なビアホール)を発見。大好きなビールに誘われ、ふらふらっと店に立ち寄ると、ビールを飲み続け、そのまま出てこなくなってしまった。一方、バイエルン州政府は今か今かと、彼が訪れるのをずーっと待っているのだった……。おしまい。

典型的な南ドイツ人、特にミュンヘン人は大のタバコ&ビール好きと言われているそうで、だからこそ、といえるストーリー。神様も困り果てるほど、ビール&タバコ好きのおじさんが、愛すべきキャラとして親しまれているなんて。いまだに政府が彼を待っているというオチも微笑ましい。

とにかく、おじさんの真実がわかってスッキリ。背景がわかって愛着もわいてきたし……。もし、このキーホルダーを見かけたら、決して単なるおじさんではない、“天使アロイシウス”のストーリーを思い出してください!
(田辺 香)