長友佑都

長友の存在は、サイドバック王国の先駆けか【加部究】

2011年2月22日 16時49分

■サイドバックをやりたがる子供が増えている現状
小学生の現場に携わる指導者が感嘆交じりに教えてくれた。

「最近はサイドバックをやりたがる子が増えているんですよ」

長友効果だという。やはりインテルでプレーするインパクトは強烈だったらしい。

子供たちは正直だ。憧れの対象が現われれば、同じポジションをやりたがる。昔の話になるが、甘いマスクの川口能括が颯爽と活躍していた頃は、ＧＫ志願者が多かったそうだ。

おそらく日本のタレントがＭＦばかりに固まるのも、中田英寿、中村俊輔ら中盤の選手ばかりが海外で通用した歴史と無関係ではないだろう。

■サイドの人材不足が深刻だった日本サッカー
トルシエ時代に一気に浸透した３バックの名残か、一時日本のサイドバック不足は深刻だった。世界の趨勢が４バックに移行した後も「サイドバックがいない」ことを理由に３バックを続ける監督も少なくなかった。つまり３バック時代が長引いた分だけ、サイドバックの重要性が認識されるのが遅れた。

そして特にレフティーのサイドバック発掘は困難を極めた。もともと日本には左利きが少ない。同化を好む文化の影響もあり、かつては多くの子供たちが左利きを矯正されてしまった。せっかく貴重なレフティーとして生まれながら、無理にみんなと同じように右を使うように指導された。

一方でレフティーには中村俊輔や名波浩に象徴されるように芸術肌が多く、逆にアスリート系が少なかった。そこで歴代の代表を振り返っても、都並敏史、相馬直樹、長友、さらには駒野友一、今野泰幸も含めて、本来右利きの選手が起用されてきた。

■長友の活躍が示す、日本の新たな可能性
その都並氏が東京Ｖのユース監督を務めていた頃の話だが、どうしても若年層の指導者たちが有能なレフティーをＭＦに置きたがり、サイドバックに回すことをためらう傾向があると話していた。そういう意味では、最近までのサイドバック不足は必然だった。

だがサイドバック不足は、必ずしも日本に限らず、世界的な傾向とも言える。だからこそ長友や内田篤人がビッグクラブで重用される。サイドバックの適性と言えば、持久力、戦術理解度、俊敏性、キックの精度…、こうして挙げてみても、本来日本人が備えているものばかりだ。そう考えれば、将来は日本のサイドバックが次々に輸出される日が来るかもしれない。

長友の活躍は、そういう意味でも、日本の新たな可能性を開拓したと言えそうである。

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