来年1月に施行される風俗営業法(風営法)の改正で、全国のラブホテルが存続の危機に晒されている。

 警察庁が把握している全国のラブホテル軒数は約7000軒。ところが実際には、その5倍の3万5000軒が存在するとも言われる。警察の監督下に入ることを嫌がるホテル経営者が、風営法ではなく旅館業法上の「旅館」として申請しているケースが多いのだ。

 ところが今回の風営法の改正によって、ラブホテルの定義範囲が拡大する。これまでなら、回転ベッドやアダルドグッズ自販機などがないうえで、食堂と床面積が一定基準を超えるロビーの2つを備えてさえいれば、事実上のラブホテルであっても旅館としての登録が可能だった。

 だが今後は、外から見える位置に休憩料金を表示していたり、宿泊客が従業員と顔を合わせずに部屋に入れるシステム(自動精算機やカギの自動交付機など)を導入していたりすれば、ラブホテルとしてみなされてしまうのだ。

 こうした条件に当てはまる“偽装ラブホテル”は、改めて風営法上のラブホテルとして申請しなければならない。ところが、この「申請」をするにもいくつか問題がある。

 まず、結構なコストがかかる。というのも、届出には営業所の平面図などを提出する必要があり、1つ1つの部屋について図面を作成したり、面積を計算したりしなければならない。これがだいたい「数百万円はかかる」(都内の行政書士事務所)。

 さらに、都道府県条例により学校や児童福祉施設の周囲200メートル以内で営業してはならないとされるケースが大半。つまりこの範囲内で営業していれば、移動を余儀なくされるわけだ。ある大手ラブホテルチェーン経営者はこれを回避すべく、「すべて実質的な旅館に改装する」と明かす。

 それだけではない。これらのコストをクリアできたとしても、申請期間が来年1月1日から31日までのわずか1ヵ月間に限られている。「正月休みで警察署に担当者がいなければ、申請は受け付けない」(警察関係者)といい、要はこれ、警察が最初から偽装ラブホテルを排除する目的で改正しているといえるのだ。

 例えば東京都の渋谷警察署では、「管轄内の70件くらいが申請してくる見込み。でも、実際にはコストをクリアできないケースもあるだろうし、そもそも申請せずとも逃れられると思っているところも結構ある。徹底して摘発するから、半数は廃業に追い込まれると思いますよ」(同)という。

(「週刊ダイヤモンド」編集部 池田光史)


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